020:大精霊食育プロジェクト①
「今日皆に集まってもらったのは他でもない」
伐採跡の残る荒れた原っぱの真ん中、麦わら長靴軍手姿でくわに両手を置いて朔弥が
ルキナとヒカルも朔弥と同じく農家スタイルだ。麦わらにシャツ、オーバーオール、長靴姿だがニクスは普段着のままだ。
その日五人は城のそばの原っぱに現地集合していた。だが呼び出したはずの二人のうち一人足りない。
「と本題の前に。ヴァルナはどこいった?」
「来るわけねぇだろ?あいつ労働大っ嫌いだぜ?」
「働かざるもの食うべからず!あいつ今晩メシ抜きだ!」
「明日の朝爆食するだけだぜ?」
「明日の朝も抜きだ!誰のための企画だと思ってんだ?!」
「え?ルキナとヒカルのためだろ?」
「違う!ルキナとヒカルは招待生!今日はお前ら大精霊の食育だ!」
仁王立ちの朔弥に知らねぇとばかりにニクスがそっぽを向いた。
大精霊二人が朔弥の料理を散々食い荒らす。大精霊はとにかくエネルギーがいるらしい。
そもそもは食事という概念が精霊界にはない。だが守護精霊として下界に降り立った大精霊は下界で肉体を得て食事でエネルギーを得る。守護精霊を経験した大精霊は爆食でエネルギーを得るという悪しき習慣が体に染み付いてしまうようだ。
つまり食事を知る大精霊は下界経験者ということになる。
「お前らが!食い物をイナゴのように食い尽くすから!食べ物のありがたさを身に染みさせようとこうして食育の時間をとったのに!」
「いやぁ、そこでありがたみを植え付けられても食うことには変わりねぇし?」
「だとしてら尚更だろ!もっと!食材を提供した生き物に!農家に!シェフに感謝しろよ!どんだけの手が掛かって料理ができてると思ってんだ?あぁ?」
「そんなのサクヤの能力一発だろ?テンチソウゾウ?」
「現実を見ろといってんだよ!下界に降りたらどんだけの人間がお前らのためにメシを作り続けるんだよ?!少しは周りの迷惑を考えろ!」
「つまり?」
「メシを食う時は俺に感謝しろ!ちょっとは遠慮しろ!俺の分くらい残せ!好き嫌いするな!必ずうまい言え!無駄皿するな!」
「結局食い意地の話じゃねぇか。最後意味不明だし」
「そうだ悪いか!というか!そこに罪悪感を覚えろよ!無駄皿は使わないのに取り皿を汚すことだ!洗うの大変なんだよ!」
鬼の形相で朔弥が睨みつけた。今まで何度も繰り広げられた、さあ自分も食べようと思って何も残っていないという無慈悲な展開に流石の朔弥もキレていた。
「と問題提起できたところで本題だ!今日は食育の基本中の基本、野菜を育てるぞ!」
集合場所は先に小精霊たちに依頼し木を切り倒し木の根を退けた原っぱだ。元々畑ではない場所を一から開墾しようという計画だ。
「これ、完全にサクヤの趣味だよな?」
「家庭菜園やってみたかったんだからいいだろ?どうせお前らも食うなら付き合え」
「別にあたしらがやらんでも小精霊にさせ」
「小精霊は禁止!自分で土をいじってこその食育だからな?農家の血と汗と涙を体感しろよ!そして食材のありがたさを痛感しろ!」
「え?ナニソレ?」
「要約すると!メシを食いたいヤツはつべこべ言わずに働けって意味だ!怠けんな!煩悩退散!」
朔弥はくわを一本作り出し嘆息するニクスに投げた。
「まずは開墾からだ。地面を掘り起こす。くわでこうやって———」
「ふんッ」
ニクスがガツッと片手持ちのくわを地面に叩きつけた。衝撃波で地面がぶわりと震える。ニクスの一撃でガツガツと音を立てて地面が割れ跳ね返った。その様子に朔弥が目を瞠る。岩でさえ粉々だ。ニクスがニヤリと牙を剥いて笑った。
「まぁね、こちとら下界生活も長いもんでな。農業のイロハぐらいは知ってるぜ?ココ、耕せばいいんだな?」
「おい!小精霊は禁止だと」
「使ってねぇよ。あたしの力だ、文句ねぇだろ王サマ?」
おいおい!大精霊耕運機?くわ一本なのに破壊力がありすぎるだろ?!すでに兵器のようじゃないか?以前ニクスを最凶だの狂犬だの呼んでいたがこういう意味か!
笑顔のニクスがさらにくわを片手に振りかぶった。大量破壊兵器を振りかざす
「くわで開墾か。久しぶりじゃぁねぇか。昔は未開墾地が多くってなぁ‥‥下界の耕作地はあたしが全部開墾したんだ。腕がなる。最近は王サマのメシで力が有り余ってたところだ。ちょっと暴れるか。ひとまずこの辺り一帯を開墾」
「待て待てぃ!やりすぎだ!自然破壊禁止!ここだけでいい!」
「何いってんだ?あたしらの食い
「家庭菜園って言っただろ?畑広くして誰が世話するんだよ?!ちょっとでいいんだって!」
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