第56話 陰陽師は4神の結界を張る

 時間になった。

 黒い渦から、真っ黒なスケルトンが出る。

 夜だから姿が分かりづらい。

 スケルトンには怨念の顔をした瘴気が纏わりついているのが、警察のライトに照らされて見えた。

 怨念をバフに使ったな。


 警察官がふびとオンラインショップで売っている祓詞の音声を流す。

 スケルトンは呪縛を振り払うかのように吠えた。


 そして、銀の弾丸がこもった銃を構える警察官群れに突っ込んで蹴散らした。

 だめだ、全然相手になってない。


 警察官はパニックになっている。

 強化スケルトンには精神に影響を及ぼす何かがあるのかも知れない。

 このままだと全ての現場で警察官が負けるだろう。


 仕方ない。

 切り札を切るか。


 俺は前もって仕込みをしていた。

 それは、この街の東に青龍、南に朱雀、西に白虎、北に玄武、中央に麒麟の像を置いたのだ。

 これで街が治まるはず。

 風水の本を持って。


「カタログスペック100%。臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」


 空がうっすらと輝いて、スケルトンの動きが鈍った。

 これでバフを無効化できたか。


『凄い。空に光のドームができている。私の家からだと見えるんだ』

『映像アップして』

『私の家からも見えた』


 アップされた映像を見た。

 確かにドームができている。

 どうやら、俺の出番はもうないみたいだ。

 警察につかまるのもちょっとな。


 ピンチなら助けに入ろうと思う。

 この現場は何とか落ち着きを取り戻した警察官の射撃によって、スケルトンは倒された。


「カメラさん、次の現場に行くよ」


 俺はスクーターにカメラさん達はバンに乗って移動を開始した。


 次の現場はスケルトンが勝ったようだ。

 呪いに侵された警察官が倒れて呻いている。

 スケルトンはどこだ。


 近所から悲鳴が上がった。

 その方向に行くと、マンションの1階部分のガラスを割ってスケルトンが侵入していた。

 中には呪いに侵された人達が倒れている。


 俺は祓詞の音声を流すと、サッシ越しに護摩の灰を投げつけた。


「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」


 スケルトンは溶けていった。

 俺は救急車を呼んでその場を後にした。


『やっぱり、ふびと様、最強』

『安定の強さ』

『SOS、○○番地。スケルトンが下の階を荒らしています』


 俺はその番地を目指した。

 現場に着くと1階は軒並みやられている。

 スケルトンはどこだ。


 ガンガンと叩く音がするので行くと、スケルトンが防火扉を叩いていた。


「今助ける」


 祓詞は既に流れていた。

 俺はスケルトンに護摩の灰を掛ける。


「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」


 スケルトンは溶けていった。

 防火扉が開き、女性が現れた。


「絶対に来てくれると思った。SOSで呼んだ者です。サイン下さい」

「サインは後で送るよ。まだスケルトンはいると思うので、安全な場所に隠れてて」

「うん♡」


 次の現場へ行くと、やはり警察官は倒されていて、助けを呼ぶ声が聞こえる。

 行くと小学生ぐらいの女の子が今にもスケルトンに呪われそうだった。


 俺はスケルトンに近寄った。

 おかしい。

 なんでスケルトンは女の子に手を触れないんだ。

 その時スケルトンが10体ぐらい現れて、俺を包囲。


「カメラマンさんも、隠形法だ。カタログスペック100%。ノウマク・サマンダ・ボダナン・オン・マリシエイ・ソワカ」


 俺達は隠形法して隠れた。

 そしてゆっくり包囲から脱出。


 スケルトンの背後から護摩の灰を掛けまくった。


「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」


 スケルトンが気づいた時には勝敗は決していた。

 護摩の灰を投げまくると一帯は霧みたいになるから、スケルトンは逃れられない。


 カメラマンさんがカメラを拾う。


「ちょっと強敵だった」

『地面しか映ってなかったから心配した』

『ふびと様は無敵』

『何があったの?』


「罠を張られスケルトンに包囲された。君、どこかに隠れてなさい」

「腰が抜けちゃった」


 俺が女の子に話し掛けると立てないようだ。


「安全な場所まで連れってあげる。おぶってあげるから」

「うん♡」


『羨まし過ぎる』

『おんぶ券がほしい』

『グッズをいくら買ったらしてくれますか?』


「ごめんプライスレスだから」


 女の子をバンに乗せた。

 女の子は最寄りの交番に預けよう。


 さて、さっきので一気に14体をやっつけたから、かなり戦況は良くなったはずだ。

 警察の応援も続々と到着しているだろう。

 俺の携帯に御花畑おはなばたけからのメールが着信した。

 文面はSOS。

 そして、数秒も置かずにこんどは小前田おまえだから、同じ文面がきた。

 どっちに先に行く。

 俺は一瞬悩んだ。

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