第55話 陰陽師は備える

 スケルトンが出現する日がやってきた。

 今回の出現は深夜午前2時13分。


 街は厳戒態勢になった。

 夜間外出禁止令が出たのだが、俺は構わず陰陽師の恰好をして出ている。

 もちろんライブ配信してだ。


 今回もスケルトン被害者の会はたくさんスケルトン対策グッズを買い込んでくれた。

 ありがとうと言いたい。


 スケルトン被害者の子供は今回はいないようだ。

 見かける人は大人ばかり。


「俺の配信を見てくれてありがとう。眠いだろうけど、しばらく付き合って」

『ふびと様の美声で眠気は飛んだ』

『いつもこれぐらいまで起きているから平気』

『ふびと様パワーで元気満タン』


「今は深夜12時、スケルトン被害者の会とお巡りさんしかいない」

『何か出てきそう。ふびと様守って♡』

『ふびと様がいれば大丈夫』

『一家に一人ふびと様がほしい』


「厄除けなら俺のプロマイドを買ってね。厄除けの模様が描いてあって、それに術が掛かっているよ」

『もう持ってる』

『私も』

『急いで買わなきゃ』


「真中ふびとオンラインショップで売ってるからよろしく」


 お巡りさんがスケルトン被害者の会の人と揉めている場所に遭遇した。


「外出禁止令が出てます。家に戻って下さい」

「スケルトンが憎いんだよ。1体でも多く滅ぼしたい」

「駄目です」


 今回は外出禁止令が出たので、警察の対応は家に帰れというものらしい。

 俺も見つかるとやばいかもな。

 スケルトンが出るまで、どこかで暇を潰そう。

 コンビニを探したが、シャッターが閉まってた。

 コンビニのシャッターが閉まっているのを見るのは何時ぶりだろうか。


「暇をつぶしたいのだけど、どこか良い所がある?」

『今日は駄目みたい。さっき夜食を買いに行ったけど全滅だった』

『開いているのは交番だけ』

『コインランドリーはやってたよ』


 よし、行ってみるか。

 確かにコインランドリーは開いてた。

 コインシャワーもあるな。

 眠気覚ましにシャワーを浴びていくか。


「カメラさん、映像だけ止めて」

『何が始まるのかな』

『わかっちった』

『あれかな』


 俺は硬貨を投入してシャワーを浴びた。


『鼻血でた』

『映像がほしいとこの時ほど』

『何で真っ暗なの』


「カメラさん、もういいよ。ふぃーさっぱり」

『湯上りも素敵』

『お宝映像ゲット』

『永久保存版にする』


 女の子のサービスシーンでなくて悪かったな。

 御花畑おはなばたけ達4人に湯上りショットの写真をメールで送る。


 そしたら、しばらく経って彼女達からも湯上りショットが返ってきた。

 これ、裸にバスタオルだぞ。


 みんな5割増しで色っぽい。

 バスタオルがずり落ちそうなのも、さらに色気を増している。

 というかバストの先は見えないが、そこまでのギリギリのラインは見えている。


 これ、不味いんじゃないか。

 御花畑おはなばたけ小前田おまえだのファンが見たら、幻滅するぞ。

 清純派で売っているらしいからな。

 それに俺に送ったとばれたらスキャンダルの素だ。


 俺は速攻で消した。

 そして、道祖神の石碑みたいな物があるので、そこに行って祈った。

 データの通信経路にハッカーが入らないようにと、そしてカタログスペック100%。

 石碑が光ったのでスキルは掛かったはずだ。

 道の神様なんだから、効果はあると思いたい。


 そろそろ時間だ。

 近場の出現場所に急ぐ。

 スケルトン被害者の会の人達は全員が捕まったらしい。

 何人かがSNSにそれを報告していた。


 嵐の前の静けさって奴なのかな。

 物音が一切しない。

 車も走ってないし、虫の声すら聞こえない。


 何だか嫌な予感がする。

 俺はカメラマンにスケッチブックを貰った。

 そこにはこっくりさん用の文字が書いてあった。


 十円玉を置き。


「こっくりさん、今回は強敵ですか?」


 はいの場所に10円玉が移動する。

 どういうふうに強敵なんだろう。


「スケルトンの上位種ですか?」


 いいえの場所に10円玉が移動する。

 上位種ではないらしい。


『闇のパワーを注がれたとかじゃないの』

『科学の力を使ってくるかも』

『きっとバフが掛かっているのよ』


 バフはありそうだな。


「スケルトンにバフは掛かってますか?」


 はいの場所に10円玉が移動する。

 バフはピンキリだから、判断が難しい。

 10倍とかだったら、俺はともかく警察官は完全にお手上げだろう。


 強敵なんだよな。

 少なくとも3倍ぐらいは見込んでいた方が良さそうだ。

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