第33話 陰陽師はホラーゲームを配信する

 今日はホラーゲームの配信。

 舌怪ぜっかい孤童こどうというタイトル。


 舞台は孤島の廃病院。

 狂った病院長がいて患者を実験台にしては楽しんでいた。

 その実験のお気に入りが、舌を切り取るというもの。


 とにかく出てくる幽霊の舌がなくて、うめき声しか聞こえないのが多い。

 ミスをすると主人公の仲間も幽霊に襲われ舌を切り取られる。

 その廃病院から脱出するのが目的のゲームだ。


 仲間4人で廃病院探検の肝試しだ。

 ロビーに入ったところで、土砂崩れが起きて入口を塞がれる。


 そして、受付カウンターにぼんやり灯るライト。


「さあ、ゲーム配信が始まったよ。受付に行くと何かありそうだ」


 主人公を操作して、受付に進む。

 仲間達がゲームの情報を伝えてくる。


 突然、受付に人影が。

 みてみると看護婦の衣装を着た老婆だ。

 ひゃひゃひゃ、と笑う老婆。

 続けて4番診察室にお入りくださいと、しわがれ声で言われる。


「最初の敵出現かな」

『うんうん、ここで失敗すると仲間の舌が切り取られて、ヒントが少なくなる』

『老婆も怖いんだよね』


 主人公を4番診察室に進める。

 ウーと声がする。

 ふーり返る主人公達。

 そこには血まみれの舌を切り取られた老看護婦が立っていた。

 そして、絶叫。

 いつの間にかロビーの椅子には患者や付き添いがいて、舌を切り取られ、目をえぐられた姿で座っていた。

 そして、それらが一斉に動き出す。


「武器は」

『懐中電灯だよ』

「サンクス」


 懐中電灯を点けて、幽霊を照らす、照らされた幽霊はうめき声をあげて消えていった。

 遅いと声がして、振り返ると、白衣を着た医師が立っている。

 顔の皮をはがされて、見るも無残だ。

 このゲームの傾向が分かった。

 ホラーというよりスプラッタだ。


 懐中電灯で医師を照らすも医師は消えない。


『武器は4番診察室の中』

『かいくぐるのがむずいんだよな』

『そうそう最初の難関』


 医師に捕まらないようにさけて、4番診察室に入る。

 メスと注射器とゴム管がある。

 全部、取る。


 ええと、この武器のどれを使うんだ。

 絶叫がする。

 4番診察室から出ると仲間の一人が口から血を流してアウアウ言っている。

 おい、もうやられたのか。

 くっ、決断が遅いって言うんだな。


 武器としてメスを選択。

 白衣の医師に斬りかかった。

 医師の体は物理攻撃は受け付けないようで、ダメージはない。


 また一人仲間が犠牲になった。

 残る仲間はあと一人だ。


 武器として注射器を選択。

 中に液体を医師に掛ける。

 医師はドロドロに溶けた。


 ふぅ、難しいよ。

 安心してたら、ドロドロになった医師が立ち上がり仲間が犠牲になった。

 もう仲間がいないじゃないか。


 ええと、ゴム管を武器として選択。

 医師の首を絞めた。

 医師は消えていった。


 こんなの分かるかよ。

 糞ゲーにも程がある。


『仲間の情報を聞かないから』


「もうやめた」

『ぷっ逆切れ』

『難しいゲームだからな』


「仕方ない。質問に答えるコーナーにする」

『彼女はいますか?』

「いないな。次」


『骸骨はどうやって倒したんだ』

「護摩の灰を掛けた。陰陽師の敵ではないな」


『通販で売っている100万円の水どんな効果があるの?』

「あれはただの天然水だぞ。効果がないことになっている」


『効果がないことになっているは草』

『ただの天然水を百万で売るなよ』


「いやなら買わなければ良い。でももう何千と売れたぞ」

『嘘だ』

『さすがにはったりだろう』

『1本も売れてないと思う』


「売れているよ。これを見ろよ」


 俺は父さんから預かっている預金通帳を開いて見せた。

 この口座はネットオークション専用だ。

 父さんの名義だが、印鑑と通帳とカードは俺が預かっている。

 何かあれば使えと言われている。


 金額は既に億を超えている。

 10日ほど前に落札されたネクターポーション10本のお金が先日振り込まれたばかりだ。


『くそっ、勝てる要素が一つもない』

『ふびと様、結婚して』

『ふびと様パワーを見たか』


「ぶっちゃけタスチュウバーはどうでも良い。陰陽師としての知名度が上がるのが目的だから」

『人生勝ち組の奴はいいな』

『運勢を占って下さい』


 俺は硬貨6枚を出して、占いを始めた。

 もちろんカタログスペック100%を使う。


「あー、足に気をつけて、けがをするかも」

『出た、いい加減な占い』

『ふびと様の術は最強』

『そうそう、彼氏だって出来たんだから』


「別に信じなくてもいいぞ。金取ってやっているわけでもないしな。次のライブ配信は悪霊退治。場所はホームページに載せておくよ」


 次の配信は決めてある。

 お寺のお墓だ。

 許可はとってある。


 テレビに出たことで知名度が上がったようだ。

 快くオッケーが貰えたと芦ヶ久保あしがくぼさんが言っていた。

 使うのはお経だけ、一応帰りには掃除する約束だ。


 スタッフが何人か来て手伝ってくれることになっている。

 これもオンラインショップが多大な儲けを出しているからだ。

 ネクターポーションは海外の商社も買っている。

 研究材料か、病人の治療に使うのか分からないが。

 とにかくすぐに売れ切れる。

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