第50話 陰陽師は浄化する
「記者会見を見た」
尋ねてきた
「わざわざ、感想を言いにきたの。暇人だね」
「我々霊能力者は裏稼業。表に出るべきではない。それに反社との付き合いもしない。分かるか、裏稼業ではあるが悪ではない。それを破るからあんなことになるんだ」
「俺は自分の行いを悪だとは思っていない」
「まあいい。色々と借りがあったから返したい。悪評のもとを突き止めてやったぞ。凄腕のハッカーだと思われる。ネットオークションの会社にハッキングしたり、短時間に大量の書き込みをしているが、BOTを使ったようだ」
「BOTってゲームで経験値稼ぎに使うあれ」
「その理解であっている。ただその目的がハッキングだ。ちなみにIPアドレスは存在しないものだった」
「たぶん邪神の眷属だよ。邪神の力を使えるみたい。どの程度の規模で使えるか分からないけど、スケルトンの襲撃の規模を見ると大したことはないだろう」
「今日はお願いがあって来た」
「何?」
「資料課の資料室を浄化してほしい。邪神の影響なのか呪物が騒いでる」
「資料課ねぇ」
「別名こう書く」
スマホで文字を打って見せられた。
そこには死霊課と書かれている。
表向きは資料課で裏は死霊課か。
何となく興味が湧いた。
「分かった、今からでいいか」
「ああ、問題ない」
覆面パトカーに乗って資料課へ行く。
資料課は外壁塗装がしてない一見廃ビルと思われる建物だった。
入口は鉄扉でしめ縄が張られている。
鉄の扉が悲鳴みたいな音を上げて開いて行く。
中から冷気と生臭い腐臭が漂ってきた。
「カタログスペック100%。
祓詞を唱えた。
臭気と冷気がさっぱりとなくなった。
「凄い威力だな」
「まあね。異世界の神の力だから、怨霊なんかには負けない」
棚や机に並べられた多種多様な物がカタカタとなる。
ええと貝がらに形代、宝石もあるな。
掛け軸もあるし、刀もたくさんある。
「カタログスペック100%。
祓詞を唱えた。
周りの一角から音が消えて、清浄な気が立ち込める。
「今回の謝礼は現金でいいか」
「構わないが、予算がたりないんじゃないのか」
「この呪物を抑え込むのにどれだけ金を使っているか聞いたら驚くぞ。術に使う道具だけでも何億にもなる」
「どんな道具を使うんだ?」
「聖者の骨。霊木のお香。宝石。金と銀も使うな。これらはみな消耗品だ」
「俺の行為が国の節約になるなら良いさ。余った予算は恵まれない人にでも使ってくれ」
「分かった。怨霊になりそうな哀れな人物を救うとしよう」
1時間ほどで建物の隅から隅までの浄化を終えた。
「謝礼の3千万だ」
アタッシュケースを渡された。
この金を何に使おう。
正当な報酬ではある。
派手に使ってみようか。
俺は製薬会社を訪ねた。
「これはこれは。ネクターポーションは実にいい薬です。あなたしか作れないのは困りものですが」
「3千万円ある。これで大規模にネクターポーションの治験をやってほしい」
「治験の許可は薬の認可に比べれば容易くおります。よろしい、実施しましょう」
「特に重病人を頼む」
これでいいだろう。
「分かっております。ところでネクターポーションのヒントを貰えませんか。研究が行き詰って困っているのです。いくら調べてもミネラルしか検出されない」
「俺もネクターポーションの仕組みが解明されれば嬉しい。そうだ、作って見せましょうか」
「是非」
研究室にいき、富士山の天然水を用意させた。
「じゃあ始めます。カタログスペック100%。ノウモ・バギャバテイ……ソワカ」
天然水は光に包まれた。
「へっ、たったこれだけ」
「祈りの力だから」
「つまり思念粒子というべき物が混入されたというわけですね」
「そうなるかな」
「というと、我々もその粒子を出している」
「出していると思うよ」
「それは分からないはずだ。思念を検出する道具などない」
「頑張って」
俺は研究員の肩を叩いた。
案外、思念を検出する機械が作られたりして。
それならそれで嬉しい気もする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます