第9話 イケメンはプロデュースする

「おはよう」


 教室で御花畑おはなばたけ小前田おまえだに朝の挨拶をする。

 御花畑おはなばたけの手が動いて、俺の前髪が払いのけられた。

 一瞬の早業だったが、悪意がなさそうだったので、そのままにさせた。。


「ふーん、素顔は大したことがないのね」

未依子みいこちゃん、大したことはあるよ。結構、恰好良いと思う」

「でも、芸能人できるほどじゃないわ」

「それは仕方ないよ」


「素顔はそれなりだ。凡人だからな」

「術を使っているのよね。私達にも掛けて」

「やってみたい」


「じゃあ、放課後な」


 そして、放課後、俺達3人はカラオケボックスに集まった。


「この『大変身! 誰でも美人になれるメーキャップ』に術を掛ける。カタログスペック100%」


 御花畑おはなばたけ小前田おまえだの顔、それと本が光に包まれた。


「それでどうするの」

「本の通りになれるんだったら期待大」


「さあ、本の通りにメイクしろよ」

「それだけなの」

「とにかくやろうよ」


 二人がメイクする段々と美人になっていく。

 最終的にはアイドルや女優に負けないぐらいになった。

 二人はまじまじと鏡をみてうっとりとした表情を浮かべた。


「これならスカウトされそうね」

「まだ懲りてなかったのか」

「えっ、何のこと? 二人だけの秘密だなんてずるい」


「よし、いい考えがある。はい、チーズ」


 俺は二人の写真を撮って、芦ヶ久保あしがくぼさんに送った。

 速攻で会ってみたいとメールが届いた。


「二人とも、俺の所属している事務所の話を聞くつもりはあるか」

「どこの事務所?」


「グリフォンだ」

「グリプロね。大手だわ」

「私アイドルに興味があるの」


 二人とも乗り気なようだ。

 ただ、メイクの問題がある。

 現場のメイクさんに上書きされると、スキルが解ける。

 俺がメイクさんとして一緒に行かないといけないようだ。

 あとで何か対策を考えたい。


小前田おまえだはアイドルだったな。御花畑おはなばたけは何になりたい」

「女優になりたいわ」


 ええと、小前田おまえだはダンスと、歌と、ボイストレーニングの本でカタログスペック100%だな。

 御花畑おはなばたけは演技の本でカタログスペック100%だな。

 それと、『毎日10分で理想の体型にヘラクレス式運動法』で肉体改造だな。

 これは俺もやったから、仕上がりは期待できる。


 スキルの欠点として、本に書いてない事項はできないんだよな。

 幅を広げるには色んな本でスキルを掛けないといけない。


 二人にスキルを掛け、改造してやった。

 本を必死になって読む二人。

 勉強もこれぐらい必死にやれば、優等生になれるかもなと考えた。


「私のことはもう愛してくれないのね」

「きゃはははっ、未依子みいこちゃんが恋する乙女に見える。涙まで流して凄い」

「良美だって、声が凄く良くなっているわ」


 俺は御花畑おはなばたけの演技の様子をスマホで撮影。

 小前田おまえだの踊りながらの歌もスマホで撮影。


 それを芦ヶ久保あしがくぼさんに、せっせと送った。

 段々と返答のメールが熱を帯び。

 最後は契約書をもって伺いますとなった。


 俺が真中ふびとに変身し終わった頃、カラオケボックスに芦ヶ久保あしがくぼさんがやってきた。


「おはようございます。真中さん、どこでこんな逸材を見つけてきたんですか?」

「二人ともクラスメイトだ」

「さあ、契約してくれるわよね」

「印鑑もってない」

「私も」


「ご両親の印鑑も必要ですから、明日の朝、回収に伺います」


 さすが芦ヶ久保あしがくぼさん仕事が早い。


「これで憧れの芸能人なのね」

「信じられない。一番、信じられないのは波久礼はぐれ君なのだけど」


「そうね。謎ばっかりだわ」


「廃屋の動画、見ましたよ。あの方向性で行くんですよね。霊感を売りにしている芸能人は多いですから、良いと思います。できたらバラエティにも出て欲しいですね」

「幽霊関連なら出る」

「やりました。では、ホラー系の映画やドラマなんかもいかがですか」

「まあ出てもいいか」


「期待してて下さい。頑張って仕事とってきます」


 異世界では二人に世話になったし。

 このぐらいしてやっても、ばちは当たらない。

 日も良い具合に落ちた。

 あの廃屋で、幽霊退治と行こう。


 御花畑おはなばたけは付き合ってくれそうだが、小前田おまえだは幽霊が怖いので嫌がるだろうな。

 カメラマンは1人いれば良いから、問題はない。

 あとで専属のカメラマンを用意しないと。

 事務所に掛け合ってみよう。

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