第53話 陰陽師はコラボ商品を出す

 自分のではない、この前あったスケルトン事件の動画を見る。

 何かヒントがあるかと思ってだ。

 その中のひとつに小さい子供がスケルトンに襲われそうになった動画があった。

 助けたのは意外な人物だった。


 横瀬よこぜだ。

 なぜ彼女が。

 運動神経が良かったのだな。

 子供を抱きかかえると、スケルトンとダンスを踊るように身をかわした。


 やがてスケルトンは駆けつけた警察官と、被害者の会の人に討ち取られた。

 なぜか悔しそうな横瀬よこぜの顔。

 スケルトンを自分で片付けられたというわけだろうか。


 助けられた子供にお守りを送る。

 住所と名前はこっくりさんで調べた。


 仏子ぶしさんから、電話を貰った。

 神域病院に特別な患者がいるらしい。


 俺は神域病院に足を運んだ。

 仏子ぶしさんに連れられて病室に入る。

 その患者は呪いに侵されていた。


「形代の効果はなかったの?」

「あったが、どうもそれだけじゃないようだ」


 隣の部屋に入ると患者がいた。

 顔は青白く生気がないというのがぴったりくる表現だ。


「この患者はさきほどの患者と同じ症状で運ばれた。形代を使ったがこんな具合で、どうやら精気を吸い取られたようだ」

「なら精気を補充してやれば良いんだ」


 俺は神域病院の隣にある薬局に足を運んだ。

 ある薬を手に取った。

 男性の機能回復の薬だけど、チラシに精気みなぎると書いてある。


「カタログスペック100%。これを飲ませて」

「これはごにょごにょの薬ではないか」

「まあね。でも精気みなぎるって書いてあるから」

「便利な術だな」

「まあね」


 生気がない人に薬を飲ませた。

 顔は赤くなり、体の一部が膨張した。

 効能の通りなんだけど。


「解決したのだから、私は帰る」


 仏子ぶしさんが顔を真っ赤にして病室を出て行った。

 密教系だと立川流とかあるらしいけど、仏子ぶしさんの流派にはそういうのはないらしい。


 出たついでに、製薬会社に立ち寄る。


「お待ちしておりました。ネクターポーションの成分分析はやってますが、なかば諦めました。いまはどうやったら薬として認可が下りるかそれを模索中です」

「認可は降りそう」

「ネクターポーションに害のない植物の成分を混ぜて、それを薬効成分として認可を取ろうかという感じで動いてます」


 力技だな。

 そんなので良いのか。

 書類さえ整っていれば、いけるのか。

 まあ、いいか。

 俺としてはネクターポーションが発売されれば良いんだから。


「嘘は嫌いだけど、まあそれぐらいなら」

「それでお願いがあります。当社の商品でU・O・O・Mウォームというスポーツ飲料がありまして。虫の成分を使ってあり、運動すると痩せるのですが、商品が売れてなくて困ってます。何十億と商品開発に掛けたのにです。祈りの力というのを注入しては貰えませんか」

「できるかやってみたいからチラシと商品を持って来て」

「はい、ただいま」


 商品が100本とチラシが持ってこられた。

 チラシにはグラフが書いてある。

 この数値はたぶんスポーツマンのだな。

 たけど都合が良い。

 カタログスペック100%が使える。


「カタログスペック100%」


 チラシを手に取ってスキルを使うと、スポーツ飲料100本は光に包まれた。


「おい、モニターの方に飲んで貰え」


 スポーツ飲料が運ばれていく。

 それからとりとめのない話をしていたら、研究員が飛び込んで来た。


「奇跡です。U・O・O・Mウォームを飲んで運動してないのに痩せてます」


 そりゃそうだろ。

 チラシには飲むと脂肪を減らすとしか書いてないのだからな。


「素晴らしい。真中さん、この商品を手掛けて貰えませんか」

「いいよ。真中ふびと監修でU・O・O・Mウォーム急急如律令として売り出そう」

「その方向で進めてみます。ところでさっきは100本に術を掛けましたが、何本ぐらいいけるのですか」

「視界に収まればいけると思う」

「それなら、一ヶ月に一回。倉庫にご足労願えればいいですね」

「まあそれくらいなら」


 初のコラボ商品は、U・O・O・Mウォームに決まった。

 収益の半分はスケルトン被害者の会にでも寄付しよう。


「助かりましたよ。これで首が繋がりそうです」

「コラボしたい商品は色々とあるんだ。化粧品なんかもやりたい」

「化粧品でしたら、うちの会社の系列でありますよ。話を持っていきましょうか。おい、電話して商品とチラシを届けさせろ」


 直ぐに化粧品が届いた。

 チラシには、『注目される唇に。鮮色。男達を鮮滅』と書いてある口紅がある。


「カタログスペック100%」


 口紅は光に包まれた。


「おい、付けてみろ」


 女性研究員が口紅を付ける。

 唇にオーラが宿っているようだ。

 こりゃあ販売出来ないかな。


「これなら10万円超えても出す奴がいるな」


 研究員の目はお金のマークになってしまった感じだ。


「じゃあ、これも倉庫に月一ね」


 化粧品は『臨』シリーズとして出すことになった。

 家に帰るとU・O・O・Mウォーム急急如律令の商品サンプルが届いていた。

 仕事、早いな。

 まあ、違うのはパッケージに『急急如律令』と『真中ふびと監修』が書かれているだけだ。

 あとはU・O・O・Mウォームと変わりがない。

 どうやら、U・O・O・Mウォームの在庫をそのまま流用するらしい。

 あの製薬会社は大丈夫か。

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