第54話 陰陽師は霊石を試す

波久礼はぐれ君、私は魔石の新しい使い方を発明したのだ」


 朝、学校で和銅わどうさんがそう言って声を掛けてきた。


「おはよう。魔石が良く手に入ったな」

「それは、スケルトンの出現地点を念入りに調べたのだ。そうしたら欠片が落ちているではないか」

「でどんな発明なんだ?」

「魔石に遠当ての術をしてみたのだ。すると、なんと術の力を吸収したではないか。それで限界を試したらこれが出来たのだ」


 出された魔石の欠片は光輝いている。


「それで、どんな効果を持っているんだ?」

「分からないのだ」

「じゃあ専門家に聞こう」


 俺は仏子ぶしさんに連絡を取った。


「放課後、会ってくれるって」

「わくわくなのだ」


 俺は授業中にこっくりさんをして、スケルトンの出現場所の住所と時間を導き出した。

 今回は89箇所だ。

 時刻は3日後の夕方だ。

 今回は数が多いな。


 放課後になって仏子ぶしさんが車でやって来た。


「忙しいところご苦労様です」

「ご苦労様なのだ」


「次の出現場所を占うと聞いたが」


 俺はメールを使いデータを仏子ぶしさんのスマホに送った。


「ふむ、今回は多いな」

「それと、和銅わどうさん、あれを」

「これなのだ」


「魔石に霊気を込めたのだな」

「どんな性質があるのだ?」

「病魔退散から、怪異退治まで幅広く使えるぞ。ただ霊能力者でなければ使えないが」

「私がやってもびくともしなかったのだ」


和銅わどうさんは即席栽培だからな。使い方の説明書は貰えないのかな。もらえればスキルを掛けてやる」

「新しい技だから、秘伝でもないし、使い方は方々に告知している。スケルトン、出現場所のお礼に教えよう」


 仏子ぶしさんが帰り、メールに霊石の資料が送られて来た。

 国ではあれを霊石と呼んでいるらしい。


 ええと、霊石を握って力を感じるのが第一歩らしい。

 難関だが、こんなのは屁理屈でどうにでもなる。


 俺は霊石をお湯に入れて温めた。

 それを和銅わどうさんに握らせ。


「どうだ、霊石の力を感じるだろ」

「暖かいのだ」

「それだって霊石の力だ。カタログスペック100%」


「おお、霊石の力が分かるのだ」

「どうだ、説明書の使い方はできるはずだ」

「ふむ、こうなのであるかね」


 和銅わどうさんから光が発せられた。


「上手くいったようだな」

「でも、込められた力が少ないのだ。もっと大きな魔石が欲しいのだ」


「言っておくがスケルトン退治はするなよ」

「しっ、しないのだ。私もそこまで馬鹿じゃないのだ」


 やるつもりだったな。

 今回は出現の時刻が分かっているから、パトロールしよう。

 和銅わどうさんがうろついてないか監視にもなるからな。


 さて、虐め退治の手紙が来ていたので、裏を取ることにする。

 ライブ配信でこっくりさんを始めた。


「Y・TさんによるS・Sさんへの虐めの事実は本当ですか?」


 10円玉がハイと書かれた場所に動く。


『動いてる』

『さっき指が離れていた気がするんだけど』

『ふびと様だからね。エセとは違うのよ』


「髪の毛はいじめっ子の物ですか?」


 10円玉がハイと書かれた場所に動く。


「その虐めは藁人形の刑に値するほどですか?」


 10円玉がハイと書かれた場所に動く。


『有罪確定』

『虐め滅ぶべし』

『上に同じ』


「成敗、カタログスペック100%」


 髪の毛を入れ、藁人形に釘を刺した。


『すっとした』

『いじめっ子死すべし』

『ふびと様、素敵』

『ありがとうございます。手紙の本人です。劇的な効果ですね。いじめっ子が急にのたうち回ったので、もしやと思い配信を見ました』

『ざまぁ』

『悪は滅びる』

『一件落着』


 俺は藁人形をお稲荷さんに奉納した。


「虐め相談、随時受付中」

『パワハラを退治してくれると嬉しいかも』

『セクハラも赦すまじ』

『呪いたい奴はいますね』


「ソフトな呪いを考えておくよ。ちょっとした不運が重なるような」

『待ってる』

『ふびと様、マジ神』


 ライブ配信を終えた。

 ソフトな呪いはどうしよう。

 都市伝説をひとつ見つけた。

 櫛に呪う相手の髪の毛を結んで、名前を書き、櫛の歯を折ると良いそうだ。

 悪いことが起こるらしい。


 藁人形使うほどでない虐めっ子にも使ってみよう。

 櫛なら100均で手に入るし。

 術を掛け終わったら、埋めておけば良い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る