第3話 勇者は陰陽師を志す
家に帰るタスチューバ―の事務所であるヒポグリフ・プロダクションからメールが来た。
タスチューバ―のジャンルを決めて欲しいらしい。
俺の所持スキル、カタログスペック100%は能書きのスキルと言っても良い。
嘘から出たまこと、瓢箪から駒だ。
それにぴったりなのが陰陽師だ。
本物もいるんだろうとは思うけどなんちゃっても多い。
俺にもできるんじゃないかと思う。
ちなみに本物は知らない。
テレビに出てくるのはいかにもという感じで胡散臭い。
俺もその胡散臭い輩の仲間入りだけど。
とにかく陰陽師の末裔ってことにする。
主な配信は後で考えよう。
最初は流行らなくても良い。
別に金儲けが目的じゃないからな。
あいつ不思議なことができる本物の陰陽師じゃないかと認められれば、俺は陰陽師の力が使える。
龍を従えたと書いてあればそれができる。
それが目標だ。
細かく配信内容を書いて、メールを送った。
陰陽師の衣装ができ上がってくるはずだ。
手を洗い、口をすすぎ、塩を神棚にお供えして、二拝二拍手一拝する。
悪霊退散の塩の作り方の紙を手に。
「カタログスペック100%」
塩が光に包まれた。
清めの塩ができたようだ。
あらゆる悪霊が退散すると書いてあるから、その通りになるだろう。
とりあえずの小道具はこんなものだ。
『毎日10分で理想の体型にヘラクレス式運動法』の本を開いて、カタログスペック100%。
俺は光に包まれた。
それから一通り運動する。
腹筋は割れて、脂肪は落ち、精悍な体つきになった。
俺の理想とする体型になったようだ。
服のサイズが変わったな。
幸いなことに制服はまだ着られる。
着られなくなった私服は金ができたら買い替えよう。
よし、時間も遅い
寝るとするか。
お休みなさい。
「
校舎の裏で俺は花束を差し出した。
ああ、夢か。
記憶の残滓かも知れない。
「ありがと。でもまだ彼女にはなれないの」
あの女が花を受け取った。
焦らすなよイライラする。
「ははっ、本当に告白しやがった」
告白の場から
「もう許してくれよ」
「あの女が好きなんだろ。オッケーを貰えたら俺達の所に連れて来い」
「絶対にいやだ」
「なあにちょっと仲良くなるだけだ。とにかくあの女に貢げよ。女なんて押しの一手でなんとかなる。じゃあ、恋の指南料1万円な」
「持ってない」
「逆らうのかよ。おい、みんな。痛めつけるぞ」
「おう」
「目立つところに傷はつけずにね」
「そういうこと」
「止めてくれ」
ボコボコにされた。
それから俺は
そして1学年も終わりに近いバレンタインデーにオッケーを貰った。
彼女を連れて来いという彼らの要求は高まった。
そして色々な板挟みになって、2年生に進級してほどなくして、俺は自殺未遂した。
こんなストーリーなのか。
俺はなんとなく冷めた頭で、それを見ていた。
そして夢は続く。
「史郎、何で自殺をしたんだ」
「彼女ができてあんなに喜んでたじゃない」
「うわん」
病院のベッドで俺は泣いた。
いじめにあっていることを両親に告白。
両親の対応は早かった。
刑事と民事とで訴訟を起こした。
雇った弁護士が有能だったのだろう。
将来の夢を断たれ、
そう言えば教室の
そういうストーリーなのか。
異世界でのストーリーは
とにかく神が辻褄を合わせたようだ。
雑な仕事をしやがって。
よりによって自殺未遂にすることはないだろう。
手首の傷痕の説明がめんどくさかったのか。
これは邪神との争いでできた名誉の負傷だぞ。
自殺未遂と一緒にされたら困る。
今後も傷痕は隠すつもりはない。
ストーリーが分かって何となくほっとしたよ。
意味もなく殺人者扱いされても困る。
異世界でもそうだが、この世界でも
誰になんて言われようが、それだけだ。
目が覚めて、起きた。
謎が解けてすっきりした気分だ。
不良達は、俺が何とかしてやるよ。
だから安心しろ、この世界の俺。
さあ学校に行こう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます