第2話 街で噂のイケメン
途中本屋とデパートで買い物をしてから、スクーターで家に帰る。
異世界には2年近くいたから、2年ぶりの自宅だ。
全てが懐かしい。
「ただいま」
「早退したの。何で泣いているのよ。また虐められたんじゃないでしょうね」
母さんの懐かしい声と顔。
泣いているのは懐かしかったからだ。
「いろいろと馴染めなくってさ。記憶もあやふやなんだ」
「あんなことがあったんじゃ仕方ないわね。いいわ。今日は休みなさい。学校には連絡しておくわ」
さて2冊の本。
1冊は『これで今日からあなたも達人』という古武術の本だ。
もう一冊は『誰でもイケメンになれるメイク術』。
「カタログスペック100%」
本を持ってスキルを使った。
俺の体が光に包まれる。
まずは古武術からだ。
本の動きをなぞる。
スキルのおかげで滑らかにできた。
動きを習得できて、達人になれたということだ。
奥義は書いてないが、基本的な動きは全て可能だ。
よし、メイク術だ。
「カタログスペック100%」
本を持ってスキルを使った。
俺の顔が光に包まれる。
髪の毛を後ろに束ね、本と鏡を見てメイクをする。
驚くほどのイケメンになったのが分かった。
久しぶりに街に出てみよう。
「行って来る」
「髪の毛を束ねたのね。男前になったわ。こんなに良い男だったの。アイドルのオーディションに
「アイドルもいいな。でも考えていることがあるんだ」
「好きにしなさい。生きているだけで母さんは嬉しいの。もう絶対に自殺なんかしないでね」
「分かってるよ」
家を出て、街をぶらつく。
ハンバーガーを買おうと列に並んだ。
「ちょっと、誰あれ。モデル?」
「写真、撮っちゃおう」
並んでいる客が騒がしい。
「ご注文をどうぞ」
「Aセットを」
「はうん」
店員の女の子が気絶した。
「ええと、サイン下さい」
別の店員はサインをねだって来た。
「男の店員にお願いします」
男の店員が出てきた。
「Aセットお願いします」
速攻ででき上がった。
誰が持っていくか店員の女の子が揉めている。
「金を出せ!」
「きゃあ」
包丁を持って覆面をした強盗が現れた。
ちょうど良い。
達人の技を試してみよう。
「何だ、やるのか?」
俺は強盗の包丁を持っている手に、手刀を打ち込んだ。
包丁を落とす強盗。
強盗は殴りかかってきた。
腕をとり一本背負い。
床に叩きつけた。
強盗は痛みに呻いている。
俺はAセットを受け取ると、急いで人混みに紛れた。
めんどくさかったからだ。
しばらくして、通報で駆け付けた警察官が強盗を連れて行く。
「素敵。アクション俳優かしら」
「エージェントかもよ」
「動画をSNSに上げちゃおうっと」
歩きながら食う2年ぶりのハンバーガーはうまかった。
また泣きそうになる。
ポテトとコーラも天上の味だ。
「すいません」
俺に声を掛けてくる人がいる。
振り返るとキャリアウーマン風の美女がいた。
「何です?」
「私こういう者です」
差し出された名刺には、『グリフォン・プロダクション、芦ヶ
「ええとタレントのスカウトかな」
「ええ。うちに所属してみませんか」
「悪い。タスチューバ―をやる予定なんだ」
「tastubeだけで活動されるなんて、冒涜です」
名声を得るのにタレント活動は確かにプラスになるだろう。
でも、そっちで有名になり過ぎると俺はタレントとして認識されてしまう。
それは困る。
タレントだと俺のスキルは活きないような気がする。
「スキャンダルを抱えているんだよ。自殺未遂をやらかしたところでね。クラスメイトは人殺しだと思っている。フリーでやりたい」
「あなたなら、多少のスキャンダルは問題になりません。かえって人気が出るかも知れませんよ」
「駄目だ。タスチューバ―でいく」
「分かりました。系列にタスチューバ―をやっている所があります。そこに所属して下さい。お願いします」
「tastube以外の活動はNGだからな」
「そこは、せめてモデルだけでも。服着て立っているだけでいいから」
どうしようか。
タスチューバ―と言っても個人で機材をそろえるのは大変だ。
スキルを使えば問題ないが、めんどくさい感もある。
動画編集なんかはプロにやってもらえば、さらに都合がいいだろう。
この話を受けてもいいかもな
「分かりました。お世話になります」
写真を何枚か撮られ、連絡先を交換して別れた。
モデルをやってもばれないはず。
メイクを落とせば一般人だ。
モデルやるなら、体を鍛えないと。
『毎日10分で理想の体型にヘラクレス式運動法』という本を買った。
どういうキャラのタスチューバ―で行くかな。
ゆっくり考えたい。
その前に、芸名を考えないとな。
芸名は『
史郎の『史』は『ふびと』と読むらしい。
そこからとった。
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