第27話 勇者は祝福してもらう

 とうとう少しバズった。

 配信始めて8日目での快挙だから、そうとう誇れると思う。


 いい気分で学校に行くと、親鼻おやはなが待っていた。

 ついて来いと顎をしゃくられたので、後をついていく。

 お決まりの体育館裏に着いたところ、そこには俺を虐めていた奴らが集まっている。


 親鼻おやはなを筆頭に、樋口ひぐち寄居よりい祖塩そしお浦山口うらやまぐち行田ぎょうだ荒木あらき大麻生おおあそうの計8人。


「8人か。随分集めたな」

「今日は道具を用意した」


 親鼻おやはながそういうと、奴らは金属バット、スタンガン、鉄パイプ、チェーン、メリケンサック、警棒などを取り出した。

 刃物がないのは殺してしまうからと考えたのか。


「掛かって来い。今日は気分が良いから、けがをさせないように手加減してやる」


 古武術にもだいぶ慣れたからな。

 凶器の雨をかいくぐり、投げ飛ばして、全員叩きのめした。


 髪の毛を採取してビニールでできたカードフォルダーに入れる。

 そして、藁人形。


「目を覚ませ」


 そう言って、ネクターポーションを掛けて回る。


「くそう。なんで勝てない」

「まだやる気があるな。じゃあこれはどうかな」


 俺は藁人形に釘を差し込んだ。


「ぐぎゃあ」

「あがが」

「ぐあっ」

「くそが」

「いたい」

「許して」

「ぐあああ」

「がはぁ」


 8人がのたうち回る。


「これに懲りたらおかしな気は出さないことだ」


 そう言ってから、俺は教室に戻った。


「おめ」

「おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとうなのだ」


 登校してきた御花畑おはなばたけと、小前田おまえだと、武川たけかわさんと、和銅わどうさんに祝福された。


「ありがとう。バズったのを見てくれたんだな」

「まあね」


 なぜかドヤ顔の御花畑おはなばたけ


「あっ、動画がアップされている」


 小前田おまえだのスマホから見えたのはスケルトン退治の公式動画。

 俺の顔のアイコンも表示されている。


「不思議なのである。骸骨に何を投げたのかね」


 和銅わどうさんに聞かれた。


「護摩の灰を投げたんだよ」

「それにしても凄い度胸だな。感心するよ」


 武川たけかわさんに褒められた。


「ふむ、護摩の灰を。それは今も持っているのかね」

「サンプルに欲しいって言うんだろ。1瓶持って行けよ」


 5センチぐらいのガラス瓶に入ったのを渡した。


 教室の扉がガラガラと音を立てて開く。

 親鼻おやはな達が教室に入ってきて、何も言わず乱暴に、自分の席へ座った。

 椅子の座り方からするに、そうとう怒っているな。

 しかし、手も足も出ないから、どうにもできないと、いうところだろう。


 また歯向かってきたら、藁人形の刑だ。


「さすが、ふびと様ね」


 武川たけかわさんが、動画を見せる。

 それはさっき俺が親鼻おやはな達をやっつけた動画だった。


「それは表に出すなよ」

「分かってるって」


「ねぇねぇ、お昼休みに学校を抜け出して、ファミレスいかない?」


 御花畑おはなばたけがそう提案してきた。

 悪い奴だな。

 学校を抜け出すなんて。


「行く行く。お祝いするんでしょ」

「私ももちろん行くわ」

「参加するのである」

「仕方ないな」


 5人で学校近くのファミレスで食事をとる。


「じゃあ、真中ふびとの収益化を祝して乾杯」

「「「「乾杯」」」」


 御花畑おはなばたけの掛け声で、乾杯した。

 飲み物はもちろんドリンクバーのジュースだ。


「石を配っておく。災難除けの天眼石だ」

「あざーっす」


 大げさに御花畑おはなばたけが受け取る。


「相談なのだが、科学部に投資してくれないかね」

「何で俺」

「謎の天然水が買いたいのだ」


 どれどれ。

 ホームページを見るとネクターポーションだった。


「それ俺が出した奴」

「ほう、サンプルを貰えないかね」


 俺はナップザックから500ミリペットボトルのネクターポーションを出した。


「数滴でも効果があるらしいぞ」


「ちょっと、それ1千万するやつじゃ!」

御花畑おはなばたけ、声が大きい」


「うへぇ」


 小前田おまえだがネットオークションの過去の実績を見て、魂が抜けたようになった。


波久礼はぐれ君てお金持ちなのね。色仕掛けでなんとかならないかな」

武川たけかわさん本気?」

「ええ、もちろん」


 みんなも頷いている。

 スケルトンの事件が偶然だとは思えないし、俺のスキルと関係がありそうな気がしてならない。

 色恋にうつつを抜かしていると、大変なことになるように思う。


「みんな聞いてくれ。スケルトンの事件はこれからも続くと思う。たぶん世界規模になるんじゃないかな。だから恋は出来ない。問題解決のために力を貸してくれ」

「分かった。それまで抜け駆けは禁止」

「アプローチはありよね」

「それぐらいは」

「ふむ、では。事件解決の時に、誰と付き合うか決めてもらうとしよう」


「もうそれでいいよ」


 事件を解決したら、この中の誰かと付き合わないといけないことになった。

 そんなことをしている場合じゃないんだけどな。

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