第38話 元カノは策動する

Side:横瀬

 朝、目覚めるとふびと様がやった悪行の全てが書かれた紙束が置いてあった。

 神様がこれを使えと置いていったのに違いない。

 真中ふびとを社会的に抹殺する計画のようね。


 私は、週刊誌の編集部に特ダネがあると電話した。

 ふびと様の特ダネは簡単に買いとって貰えた。

 あっけないのね。

 これでふびと様は目を覚ましてくれるはず。


 私はそれから神の先兵を配置する作業に取り掛かった。

 空間を捻じ曲げて、先兵の通り道を作る。

 42箇所も設置するのは骨が折れた。


 ふびと様のチャンネルを見るとスケルトン出現予測という動画がアップされていた。

 やられた。

 場所が全部ばれている。

 場所を変えてもきっとまた予測されてしまうのね。

 イタチごっこはつまらないわ。

 このままにしておきましょう。


 SNSに骸骨の弱点は炎だと載せる。

 こうしておけば混乱させられるに違いない。


 今回の襲撃は失敗するような気がする。


 ふびと様の力は民衆の支持。

 週刊誌の記事は痛手になるに違いない。

 しばらく経ち、今日は襲撃の日。

 私は何気ないふりをして、学校に登校した。


「おはよう」

「おはよう」


 私が挨拶すると友達も挨拶を返してくれた。


「今日、ふびとオンラインショップで買った石が粉々に砕けたの。それで親戚の法事は取りやめたわ」

「そうなの。石ってどんな?」

「災難除けらしいよ。もう今日は授業をさぼれると思ったのに。こっちの方が不幸よ」

「どっちが幸運なのか、後にならないと分からないと思うよ」


 授業が始まって、しばらくして煙が上がった。

 始まったようね。


「先生、気分が悪くなりました。早退させて下さい」

「横瀬さん、本当に顔色が悪いわね。風邪かも知れないわ。ゆっくり休んでね」


 おおごとになる前に急いで校門から出る。

 火事は広がっていた。

 ええと、火事の犠牲者が可哀想。

 ううん、死んだりするのは邪神の信奉者よ。

 私を導いている神がそうするに違いない。


 神の先兵の戦いを見に行く。


 先兵は警官と揉み合いになっていたが、神の力は阻害されているみたい。

 それに拳銃の弾が当たると一撃で先兵がやられてしまった。


「くそっ、きっと邪神の仕業ね。警察といつの間にか手を組んだみたい」


 次の襲撃はその対策を考えないといけないようね。


 やがて戦車が出てきた。

 神の先兵はなんて弱いのかしら。

 戦車ぐらい跳ね返せないのかな。


 警官にもやられるし、雨は降って来るし、踏んだり蹴ったり。

 まあいい。

 今日は週刊誌の発売日。

 ふびと様が正気に戻っている頃よ。


 家に帰ってテレビを点ける。

 ニュースは神の先兵の話ばかり。

 ワイドショーを見ると、ふびと様のニュースを取り扱っていた。


『なんでこんな奴が野放しなんでしょうね』


 テレビのコメンテーターがそう言っている。


『このネクターポーションは有害物質が検出されない。おそらく微量しか入っていないものと思われる。国の怠慢ですな』

『いま、真中ふびとオンラインショップは閉鎖されていますが。誰でも簡単に入手できるところに麻薬があるとは恐ろしいことです』

『まったくだよ。国はどうかしてる』


 こいつら、馬鹿よ。

 ネクターポーションは邪神の力で作っているのだから、違法を証明できないわ。

 やるなら、邪神を信奉している人を罪に問う様な法律を作るようにしないと。


 ふびと様へのダメージは30%がいいところね。

 私はSNSでふびと様の悪行を書き込んだ。

 何万件も書き込んで一休み。


 これだけやればいいかな。

 この体凄いわね。

 何万件も書き込んでも僅か10分ほどしか掛からない。


 ギネスブックに載りそう。

 でもこの力はふびと様の目を覚ますために使わないと。


 友達からメールがきた。

 ふびと様の石で災難を逃れたと書いてある。

 邪神もなかなかやるわね。


 こうやって信奉者を増やしているに違いない。

 私も何か考えないといけないかな。


 秘密結社でも作ってみようかな。

 SNSに女子高生ですとプロフィールを載せて、メッセージを寄せた相手に会いたいなと返した。


 私は手から黒い霧を発生させて微笑んだ。

 神がついているから、どんな人が来ても平気。

 神の素晴らしさを理解してない相手だったら、先兵の餌になってもらいましょう

 さあ、お出かけしましょう。

 ふふふ。

 私は素晴らしい出会いを求めて、待ち合わせ場所に急いだ。

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