第30話 陰陽師はテレビに出る

 いやっほう。

 テレビの出演依頼がきた。

 それもスケルトン事件のだ。

 仕事の依頼は数日前からあったのだが、本決まりしたのが今日。

 何でも出るはずのタレントがドタキャンしたらしい。

 買って術を掛けておいたラピスラズリが粉々になっていたので、そういうことなのかなと。

 ラピスラズリは幸運を引き寄せると書いてあったのだ。


 今日は日曜日だったので、学校を休むことなく、テレビ局に行った。


「頑張りました。褒めて下さい」


 芦ヶ久保あしがくぼさんと局の前で合流。


「よくやった。こういう仕事は大歓迎だ」


 楽屋陰で陽師姿になってスタンバイ。

 呼ばれたのでスタジオの席に着いた。


 アナウンサーによるコメンテーター3人の紹介が終わり、討論になった。


「最初にみなさんに骸骨の正体をお聞きします。では最初に民俗学、妖怪研究の保谷教授どう思います」

「昔から骸骨の妖怪は多い。有名どころで言うとがしゃ髑髏ですな」

「ちょっと、妖怪だと決めつけないで下さいよ。これはロボットです。黒い霧は生物化学兵器ですよ」


 この人は科学者の大泉さんだ。

 ロボットという視点は斬新だ。


「異世界からの侵略者だと思われる」


 俺は偉そうにそう言ってみた。


「真中さんは、どういう根拠でですか」


「ふむ、魔石を残す骸骨の妖怪は聞いたことがない。いるとすれば異世界だ」

「ナンセンスだ。あれは科学の結晶なんですよ。魔石はエネルギー結晶だ。その証拠に発電に使っているじゃありませんか」

「妖怪が不思議な物を持っていたらおかしいかね。天狗などは不思議な物をもたらせたと、数多くの伝承に残っている」


 まずい、口論で負けている。


「私は、あの骸骨、スケルトンと呼んでいるが、退治経験がある。あれは異世界の者だ」

「では、真中さんの退治映像を見てみましょう」


 俺がスケルトンを退治した映像が再生される。


「溶けましたね」

「ああ、護摩の灰を掛けて退治した」


「見てみなさい。ロボットが護摩の灰で溶けますかな」

「真中氏の、護摩の灰、すなわちアルカリに弱かった。そういう物質で出来ている」


 なんとかスケルトンの脅威を伝えて、なおかつ陰陽師アピールできないものか。

 異世界説はとりあえず、引っ込めた方がいいのかな。


「黒い霧に触れた人は呪いに侵される。警察からそう聞いている」

「呪いではない。未知の病原菌か。毒物だ」

「どちらにしろ危険でしょう。違いますか」


 俺は語気を荒らげた。


「呪いだとすると、妖怪の仕業ですな」

「いや生物化学兵器です」

「危険だという認識はとうぜんではない? 危険を強くこの場で訴えたい」


「話を戻しますと、正体がはっきりしないとなります」


 俺も100%異世界からの侵略者だと決まっているとは思わないが。

 その可能性は50%を超えると思っている。


 機動隊との戦闘の様子が映し出された。

 銃弾を食らっても動き続けるスケルトン。


「妖怪に銃弾が効くわけない」

「ロボットにもです」


「異世界に行って見てきたんだよ。異世界にはこういう化け物がうじゃうじゃいる」


「真中さんは見てきたとおっしゃられるわけですね。その世界はどういう世界です」


 アナウンサーが食いついた。


「2足歩行の豚とか鬼とかがいる世界だ。竜も当然いる」

「お二人はどう思います」

「別世界の伝承もないことはないですな」

「ナンセンスですが。遺伝子が違う生物がいる世界があっても不思議はありません。真中氏はどうやってそこに行ったのですか?」

「神に呼ばれて、そこで邪神を退治して帰ってきたんだ。その世界にはスケルトンがたくさんいたし、倒すと溶けて魔石を残した」

「荒唐無稽ですな」


「別世界に行った話はたくさんある。歴史を否定するのかね」

「考えるのにそれは外国にでも漂着したのでは。そして苦労して帰って来る。その証拠に近年ではそういう話は聞かない」


「とにかくスケルトンは危険だ。」

「確かに妖は危険ですな」

「超科学のロボットも危険です」


「危険ということで意見の一致はみましたが、依然として正体は不明です。みなさんも歩く骸骨を見かけたらもよりの警察に連絡してください」


 番組が終わった。

 危険性のアピールは出来たが、陰陽師のアピールはできなかった。

 考えるに異世界を映し出す鏡なんかがあると良いだろう。

 検索を掛けたら、異世界に行く方法が載っていた。


 それは合わせ鏡を使うやり方だ。

 ただし、午前0時にしないといけない。


 早速やってみる。

 目覚まし時計の針を午前0時に、鏡を合わせて、異世界に行く方法の説明書きを持って。


「カタログスペック100%」


 スケルトンを思い浮かべたので、スケルトンが闊歩する映像が鏡に映った。

 オークやゴブリン、ドラゴンも可能だ。

 少し懐かしい気がする。

 鏡に触れると行けるらしいが、あそこに置いてきた未練はない。


 次の収録ではこれを実演してみたい。

 陰陽師の本質は占いなんだよな。

 スケルトンが次に現れる場所を占ってみようか。

 ぜい竹を使うのがいいらしいけど、本を読んで勉強しないといけない。


 簡単にダウジングで良いだろう。

 これなら針金が2本あればこと足りる。


 番組に出演したことをSNSで報告すると、祝福のメッセージが溢れかえった。


 チャンネル登録者数は2,812人で大幅に増えている。

 この調子だ。

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