第22話 イケメンは和銅さんにばれる
「聞いた?」
「なになに」
「この学校に真中ふびとという芸能人のファンクラブがあるんだけど、そこのファンクラブの女の子が1日でみんな彼氏持ちになったんだって」
「嘘でしょ」
「本当、今も続々と彼氏持ちが増えているみたい。今朝、告白されたって子もいたわ」
「きゃ、イケメン」
「ふびと様のプロフィールを見たのね。あなたもファンになったの」
「うん、これだけイケメンだと。それに声もセクシー」
「あっ、プロフィールに声が追加されている。失神するぐらい素敵な声」
「ええ、ずっと聞いていたいわ」
休み時間、俺の噂を前の席の女子がしている。
自意識過剰かも知れないが、クラスの女子の大半が俺の噂をしているように思えてならない。
チャンネル登録者数をチェックする。
421人まで増えていた。
バズったわけではないらしい。
ホッっとしたような、残念なような。
クラスメイトの
「君、君ぃ。君はクラスで話題沸騰のふびと氏なる人物を知っているかね」
眼鏡っ娘の
「知ってるよ。それが何か」
「ふむ、それでだね。クラスの生徒が彼を整形イケメンだと言うのだ。で私に分析依頼が舞い込んだというわけである」
「ふーん」
「結果を知りたくないのかね」
「まあね。興味ないから」
「結果は白だよ。整形はしてなかった。だがしかーし。彼の写真を元にAIに絵を描かせると、なんと凡人なのだよ。おかしいではないか。他のイケメンは絵にしてもイケメンだというに。まるで催眠術でも掛けられているようではないかと思わないかね」
「思わないな」
「体も何か秘密があるのか。映像から骨格を割り出したのだよ。で戯れにクラス全員のデータと比べてみた」
くっ、まずい。
俺はナップザックを肩に掛けると、
「むがっむがっ、何をするのだね」
「クラスの生徒の中に、骨格の一致する生徒がいたんだろ」
「そうそれだよ。
「ここじゃなんだ。人のいない所で話せるか」
「では一緒にきたまえ」
科学部の部室に入った。
「秘密にしておいてくれると助かる」
「ふむ、その前髪を持ち上げてくれるかな」
「こうか」
俺は髪の毛を束ねた。
「そうそれだよ。AIが描いたふびとの顔。AIは間違っていないのだね。間違っているのはふびと氏の写真だったのだね。どういうメカニズムか証明したい」
「研究に協力すれば黙っててくれるか」
「よろしい。約束しよう」
「霊能力者には俺のは霊能力ではないと言われた」
「ふむ。霊能力にも興味はあるが、それはおいておこう」
「じゃあ、ふびとに変身してみせるよ。カタログスペック100%」
俺はナップザックの中からメイクの本を出して、スキルを掛けた。
そしてメイクを始める。
「はふぅ、傾国のイケメンがいるとすれば君のような人物を示すのだね」
「これが俺の力だ」
「推測で良いのなら聞くかね」
「聞こう」
「霊能力に関して、前に推測したことがあるのだよ。どういうプロセスで霊能力が発現されるのかと」
「それは聞きたいな」
「流派によって霊能力の発現方法は様々だ。踊ったり、呪文を唱えたり、裸になる必要になるものさえある。統一性など微塵もない」
「規則がないってこと?」
「それで考えたのだよ。霊能力を発現させる物全てはプログラムのような物ではないかと」
「それだと規則性があるんじゃないか」
「違うのだよ。プログラム言語は多種多様。別のプログラム言語に、別のプログラムを持って来ても走らない。これはまさに聖書の文句で悪魔退治する霊能力者が、お経を唱えても霊能力を発現させられないのと同じことなのではないかと。まるで言語が違うというような」
「そう言えば、力は全部同じだと言っていたな」
「となると全ての魔法などの儀式は、合っているとも言えるし、間違っているとも言える。知っているかね。プログラム言語の大半はコンパイラという翻訳する物が必要だ。霊能力も同じではないか。このコンパイラとも言える力を身につければ行使可能なのだろう」
「俺は全てを翻訳できる物をもっているということ?」
「霊能力者にはどう言われたかね?」
「霊能力の欠片もないと」
「ふむ、ならば君はプログラムではなくOSの機能を変化させているのだろう。世界法則を変化させているとも言える」
「世界が変化するのか。俺の都合に合わせて」
「間違っているかは分からんがね。そんなに見つめないでくれまいか。赤面してしまう」
俺は前髪を下ろした。
「約束は守ってくれるよな」
「もちろん。すべての事象は科学で説明できるのだ。時代が追い付いていないだけだ。これからも、研究に協力してくれるとありがたい。二人で全ての霊能力を解き明かそうではないか。会う時はふびと氏の顔で頼む。いやふびと氏だと、頭がクラクラして物が考えられなくなりそうだ」
まいったな。
厄介な人に正体を知られたか。
しかし、骨から分かるとは。
骨格まで変えるのは勘弁してほしいな。
できないとは言わない。
骨の付き方を矯正するような本はあるからな。
そこまでやりたくない。
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