第12話 列車強奪戦1

ガイア·リージョンの駅

次の公式戦に量産して投入する新型装甲車両3基が最後方のプラットホーム車両にしっかり固定されていた。


その前方の貨物室3つには公式戦用に準備した武器と弾薬などの備蓄物資が積まれていた。


駅のプラットホームには早い時間にもかかわらず、多くのユーザーたちが警戒に立ったり貨物リストをチェックしたりして慌ただしく動いていた。


一方、その反対側に位置する森の中の空き地。

プロフェッサー・チームの車が停車していた。


後部座席側の天井のリムには堅固な簡易砲塔が設置され、砲塔には40mm榴弾機関砲がどっしりとした姿を誇っていた。


「本当に大丈夫?」


シスターの心配そうな質問にプロフェッサーはくすくす笑った。


「俺はプロだ。グレイブ。」

「…それは知っている。」

「それなら答えは決まっているな。」


狙撃銃が入ったカバンを腰の後方の接合部に装着して固定し、キューティクルからもらった折りたたみ式強化防弾板を背中にしっかりと結んだ。


「シャドー、先に行け。」

「うん。」


プロフェッサーの指示に直ちに覆面を載せてゴーグルを下ろした彼女が素早く列車の方に駆けつけた。


プロフェッサーは手に新しく装備した手袋をあちこち触りながら確認した後、落ち着いているが敏捷な歩き方で動いた。


シャドウはすでに適当な影に溶け込んで隠れているのか見えなかったが、プロフェッサーは気にせず自分の位置を訪ねた。


真っ先の機関車の方にこっそりと接近したプロフェッサーは、もし誰がいるのかちらっと調べた後、直ちに線路と車両の間の空間に体を転がして入った。


すでに車両下部に設けられた非常用トラップ・ドアの位置まで把握しているため、プロフェッサーはこっそり背中で這い、トラップ・ドアを足の近くに置いた位置に合わせた後、車両下部に設けられた整備用安全棒に手足をしっかりかけてぶら下がった。


この列車が目的地に到達するまで約36分。

出発から10分後に作戦を開始する予定だった。

10分はここにぶら下がって耐えなければならないのだ。


ぶら下がって周辺の状況を探る瞬間、プロフェッサーが歩いてきた方向から足音が聞こえてきた。

「……」


注意深く首をかしげてみると、ガイア·リージョンの制服ズボンと戦闘靴を履いた足がゆったりとした口調で歩いているのが見えた。

運良くあのユーザーがこちらを警戒に来る前に潜入を完了していた模様。


「おい!そっちに何もないだろ?」

「えっと…はい!大したことないんですけど?」

「それならいい!1分で発車だ! 早く戻って来い!」

「今日のランチメニューは何ですか?」

「またここで昼食を食べようとしてるのかよ?」

「先輩もここで食べるじゃないですか!」


列車を挟んで騒いでいた歩哨ユーザーが、すぐに早足で駅プラットホームの方に向かって歩いていくのが見えた。


彼らが言った通り、1分が経つと、ウンウンという機動音とともに車両の車輪が内側に折れて隠し、列車は完全な電磁負傷列車に変形した。


レールの横と上を囲む形の送電フレームから磁場を受けて高速で運行する構造だったのだ。


「発車します! 発車ー!」


機関士NPCの力強い放送とともに列車が出発した。


その音を空き地で聞いていた2人の女性もすぐに準備を始めた。

ウィス‐キスはまた、ウイスキーの瓶を取り出して2口ほど飲み込み、グレーブは後部座席にいっぱい積んでおいたボックス弾倉のうち1つを持ち上げて機関砲に装着した。


「行こう!キス!」

「はい!お姉さん!」


列車の後を追うように、彼女の車は森の木の間を力強く駆け抜けた。


*


発車から10分後

プロフェッサーは予定通りトラップ・ドアを足でそっと開けた。

スライド・ドア形態のトラップドアが静かに開くと、握っていた安全棒をはしごのように使って降りるように足から車の中に押し込んだ。


無防備な状態だったが、すでに車体の下板にバイザーを当ててバイザーの振動感知を通じて車両で警戒しているユーザーたちの位置は把握したので躊躇はなかった。


慎重に体全体を車の中に入れてからは、何事もなかったかのようにトラップ・ドアを閉めておいて、補助武器の拳銃を取り出した。


「…あの新型装甲車がそんなにすごいの?」

「私もよく分からない。 ところで、大将の言葉では、何か新素材をついに適用して対戦車砲弾のほとんどを問題なく防ぐほどだというか。」

「それはすごいことだ。」


談笑の真っ最中の機関車を守るユーザー2人を後ろから拳銃で撃って死亡処理させた。


これからは時間の争い。

あと約6分後にこの列車はジャンクションを通るが、ジャンクションに乗らなければ列車は本来の目的地に向かうことになるはずだった。


直ちに機関室出入り口のロック装置を持っていた電気衝撃器で消し壊し、故障した後、ドアを力で開けて進入した。


「誰だ!?」

「…傭兵、とだけ言っておこう。 この列車を奪取させてもらう。」

「な、何!?」


NPCは慌てたように腰に隠しておいた拳銃を取り出そうとしたが、プロフェッサーは皆知っているかのように彼の額に拳銃を突きつけた。


「くぅ…!」

「あまり止めろとか、ブレーキを外してくれという話ではない。」

「じゃあ、欲しいものは一体何だ!」

「線路の次の分岐点のレバーを回せ。」

「……!!」


話が終わると直ぐに返事も聞かず銃声が鳴り、機関士のNPCが倒れた。

プロフェッサーは冷静にNPCの遺体を機関室のドアを開けて前に投げた後、機関室のドアを閉めた。


「シャドー。作戦を開始する。」


バイザーの無線機能で連絡すると、耳元にトントンという音が聞こえてきた。

聞き取れたという合図。


すでに機関士が無意識のうちに眺めたのがジャンクションレバーであることに気づいたプロフェッサーはためらうことなくそれを引いた。


機関室のスクリーンに線路前ジャンクションの向きが変わることが表示されるのを確認した後、背中に背負っていた折りたたみ式装甲板を取り出した。


「これからが勝負だな。」


ドアに向かって装甲板を打ち込んで広げ、ドアが開いても装甲板で詰まるようにしておいた。

銃撃戦中に列車の計器盤が当たればどんな状況が繰り広げられるか分からないので準備した物だった。


機関室の出入り口のガラスを拳銃の取っ手で殴り、割ってしまった後、腰掛けのかばんを取り出して広げた。


「どうか遅く気付いてくれなければならないのに…」


狙撃銃を組み立てて開いた装甲板の上に両脚台を置き、割れた窓に向けて置いた。

列車の車両車両ごとに出入り口の位置は真ん中で同じなので、車両を越えて機関室に向かって来ようとすれば簡単に狙撃できるはずだ。


まもなく死亡処理されたユーザーから連絡を受けたのか、後ろのマスが騒がしくなり始めた。

「シャドー、念のため貨物室の方で待機するように。 最悪の場合、奴らが貨物室を分離して別途回収しようとするかもしれない。」


とんとんとん。


最後の不安要素までシャドウを通じて防いでおいた後、落ち着いてスコープを見ながら待ち始めた。


すぐ遠くの車両間を移動する出入り口越しに丸い影が見えたら、


タン!


プロフェッサーが今日持ってきた狙撃銃は、本来車両に乗った人物を狙撃する時よく使用する50口径高速徹甲弾を撃つ対物狙撃銃だった。

列車の車両の向こうまで確実に突き抜けて射撃をするには、この銃がぴったりだったからだ。


一気に出入り口の窓ガラスを2枚も突き抜けた銃弾が目標の影に刺さり、窓際に血がにじんで丸い影が下に消えるように消えた。


「とりあえず一人。」


すると、これに呼応するかのようにガイア・リジョンのユーザーたちは割れた窓に向かって銃だけを差し出し、できるだけ殴り始めた。


「くそ狙撃手め! 死んじゃえ!」

「撃ち続けろ!あいつが狙撃できないようにしろ!」


プロフェッサーは彼らの老練な抵抗にもかかわらず,くすくす笑ってスコープのボタンを押すだけだった.

カチッとスコープの視野が熱感知カメラモードに変わり、車越しのユーザーのシルエットが赤く浮かび上がった。


「相手が悪かったと思え。」


再び豪快な射撃音とともに車両の壁を突き破った銃弾が目標に突き刺さった。


熱感知視野越しに赤いシルエットが消えるように崩れるのが見え、反対側から銃を撃っていたシルエットが慌てて姿勢を低くするのが見えた。


「どちくしょ!まさか透視鏡系のスコープまで使っているのか!? 完全にお金自慢じゃないか!」

「まさかあいつ、プロフェッサーじゃないのか?」


自分たちが相手にするのが誰なのか見当がつき始めたガイア・リジョンのユーザーたちの額に冷や汗が流れ始めた。


成功率100%。

プロフェッサーのフランチャイズは決して虚言ではなかった。

そんな彼がどんな依頼なのかは分からないが、この列車を強奪してどこかへ持って行こうとしていた。


「くそたれ! あの高いやつをいったいどこの誰が雇ったんだ!」

「…轟龍会じゃないでしょうか。 あいつらお金は多いから…!」

「まさか、あいつら外注人材をあまり使わないようにしてるじゃん!?」


しばらく相手について討論していたユーザーたちは、すぐに歯を食いしばった。

何がどうであれ、相手は万全の準備をして列車を強奪した状況。


「こうなったらしょうがない…! 全員!抱腹前進だ! 防弾帽をしっかりかぶって、一列に抱腹して接近する!」

「で、でもそうすると前にいる人は…!」


相手は列車の壁もぱたぱたと突き破る大口径の徹甲弾を撃っていた。

そんな相手にいくら高性能防弾帽をかぶっていても這って接近するなんて。


「…私が最善を尽くす。」

「小隊長?!」

「うるさい!早く準備して!」


覚悟を固めたガイア・リジョンのユーザーたちは歯を食いしばって抱腹したまま列車のドアを開けた。


「専属前進!絶対に止まるな! 前の人が殴られて死んでも止まるな! この車両さえ越えれば機関車だ!」

「はい!」


決然とした覚悟で機関車の出入り口を開けようとした瞬間、


再び銃声が聞こえると同時に出入り口にすっきりと穴が開き、当然のように先頭を自任した小隊長が粒子化されて消えていく。


「ち、ちくしょ! 小隊長…!くぅ…!」


後ろでこれを目撃したユーザーは歯を食いしばって、より速く肘を使って這い込んだ。


「止まるなー! 奴があの前にいるぞ!」

「うおおおお!」


ついにあの前に機関室の出入り口が見えた。

案の定だろうか。

機関室の窓が割れていて、そこには重い銃身が飛び出ていた。


「くぅ…!」


ちょうど自分の突撃小銃を取り出して割れた窓に向かって撃とうとした瞬間、彼の耳元にガツンとする不気味な音が聞こえてきた。


「…! 全員!座席の間に散開!」


悪に支えた指示を下し、体を転がそうとした小隊長の副官が小隊長に続いて粒子化され消えた。

これを目撃した他のユーザーたちは、粉楼を飲み込み、各自の銃器を持って機関室の窓に向かって無差別乱射を始めた。


「死んじゃえ!くそ狙撃手め!」

「ウアアアアアアアアアアアア!」

「死ね!死ね!死ね-!」


視野が銃口の煙で隠れるほど撃った末、彼らの弾が底をついたようにチクチクと音が聞こえてきた。


いくら機関室のドアが丈夫だとはいえ、ガイア・リジョンユーザーたちが愛用するZK社の銃器は小銃弾のサイズが他社より大きく強力だった。


この程度で撃てば、いくらなんでもドアと共に機関室内の狙撃手と機関室全体が蜂の巣になるべきだったはずだ。


しかし…


プアン!


「クアアアアアアッ!?」

「うそ?!」

「そ、そんな馬鹿な!」


狙撃手は生きているかのように煙が少し晴れると銃身をつけてユーザー2人を徹甲弾を誇るように貫通して死亡処理させてしまった。


「何がどうした!?」

「まさか…!ドアの後ろに防弾鉄板を立てたんじゃないのか?」

「何の準備をそこまでするのかよ!?」


驚愕したユーザーたちが歯を食いしばって対策を考える瞬間にも、プロフェッサーの狙撃銃からはガタンという声が聞こえてきた。


「く、くそっ! あの銃口を避けて!」

「ウアアアアアアアアアアアアアアアア!?」


銃口の方向が自分たちの方を向くたびに驚いて左右に体を転がすユーザーたち。

すると、機関室でこれを見守っていたプロフェッサーは歯ぎしりをした。

列車という狭い空間でおとなしく殴られて死んでくれれば良いことを。


「やっかいな奴らだな…!」


ーつつくー

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