第18話 略奪者を略奪する2

すぐにプロフェッサーはピストルを取り出し、隠れていた角で体をひねった。

どうせステルス・フィールドで自分の姿がばれる心配はなかった。


ピストルにも消音器をつけてあるので、大体の位置はわかっても正確には掴めにくいはずだ。


だが、プロフェッサーが向かい合ったボスの姿は彼が知っていたこととは少し違った。


「くんくん…血に漬けた香りが漂っているね…!」


顔には厚い特殊金属であることが明らかなヘルメットをしっかり被り、体のあちこちにも同じ材質の防弾板が重ねられた甲冑をまたぐ2メートルを越えるお腹の肉がゆら揺れる巨漢だった。


きっとここのボスは本体の戦闘能力は弱い方で体力だけ高いまあまあのモブだったはずだ。

どうしてこんな奴が出現したのだろうか。


「…そこだな、いるんだろ?」


甚だしくはこいつは鼻がいいのかくんくんとするだけで頭を正確にプロフェッサーが立っている方に回していた。


「……!」

「捕まえたぞこら!」


奴が取り出したのは、とげの生えた針金をぐるぐる巻いて殺傷力を増大させたスレッジ・ハンマーだった。


どっしりとした音とともに厚いセメント製建物の壁にハンマーが刺さり、すぐに壁と天井に亀裂が生じ始めた。


「くぬぬ、ねずみ小僧!避けやかったな!」


わずかな差で攻撃をかわして一歩退いたプロフェッサーは直感した。

こいつ、確かに隠れボスだ。

なぜフラグが立ったのかは分からないが、とにかく本来のボスとは格が違って見えた。


「……」


ハンマーが壁に刺さってきしむ隙を狙ってすぐに頭に拳銃を向け撃発した!


ティーイン!


「え!?」

「うっ!こらー!」


力なくヘルメットに当たって跳ね返る銃弾を見たプロフェッサーは歯ぎしりをした。

あのヘルメットが何なのかは分からないが、防弾性能は十分に見えた。

そんな金属を体にも巻いているということは…


「…….」


プロフェッサーはさっき入ってきた窓から後退しようとした。

辛うじてハンマーを抜き、再びくんくんと鳴らしたやつは、すぐに相手が逃げていることに気づいたのか、表情が険悪に変わった。


「よくも!我を挑発して逃げられると思うのか!」

「ふん!」


もうすぐなので、ピストルを頭に当てたまま窓枠に足を挟もうとした瞬間、


「ハンマー…インパクト!」


ボスがハンマーで力強く建物の床を叩きつけると、建物全体に亀裂が生じ、あっという間に崩壊が起きた!


「何!?」


落ちる建物の破片がステルス状態のプロフェッサーの体に落ち始め、それを目撃したボスの目に赤い光が起こった。


「そこだ! 死ねー!」

「ふん!」


ハンマーを振り回して飛びつくのを避けて窓枠を越えて転がった。

ドーンという殺伐とした音と共に窓がハンマーに引っかかれるように押されて撲殺され、広がった穴から隠れボスが飛び出してきた。


「フフフ…ねずみ小僧! 逃げるのもそこまでだ!」

「チッ。」


半分崩壊し始めた倉庫の屋根の上に危険にさらされている2人の存在。

プロフェッサーはステルスを解いて姿を現した。


「おお?まさかお前、世間に有名なあの請負業者…プロフェッサーなんじゃないの?」

「…そうだ、そんなお前は名声がないようだね。 俺が知らないくらいだから。」

「何?!まさか我を知らないというのか?!」


自分のことを知らないという言葉に怒ったのか、獣の鳴き声を上げた彼が建物の内側に向かって手招きすると、バンディット4人がきしむように大きな円形の金属盾を持ってきて力強く投げた。

それを一気にキャッチしたボスは、片手にそれを装着してスレッジ・ハンマーを片手でぶんぶん回して戦闘態勢をとった。


「この身は!この一帯を掌握したバンディット組織である鉄鬼略奪団のボス!ブグボルグ様だ!」


やっぱり聞いたことのない名前。 確かに隠れボスだった。

いや、正確には今までこいつが出現するトリガーに触れたユーザーがいなかったのかも。


どちらにしても黒虎連盟に売る情報が一つできたのだから良いことだった。

もちろん、ここで生きて帰った時の話だけど。


「本当に初めて見るんだけど、あなたは今までどこで何をしていたのか確認してもいいかな?」

「ふん!バカなやつらは我の倉庫番ウトロを苦しめ、低級な略奪物でも掃くことで満足していたんだ!」


やはり、隠れボスというよりは、ある種のトリガーに触れなかったため、発見されなかった真のボスであることが明らかだった。


「なるほど…それなら君を撃ち殺すのは俺が初めてか。」

「何?撃って殺すだと? フフハハハハ!」


プロフェッサーの発言に大笑いしたブグボルグが突然ハンマーで自分のヘルメットをカンカン叩き始めた。


「見ろ!この馬鹿め! このヘルメットの強さが見えるか。 これまで集めた略奪物の中でも丈夫な金属を選んで作った、三重素材の超防弾甲冑だ!」

「……!」


自慢するように自分の耐久度を精一杯確認させた後、ゆっくり盾を前面に出したまま突進する姿勢を取るブグボルグ。


「それで、どこをどう撃って殺すというのか、 プロフェッサー。」

「…少なくとも、その目玉の穴はあいているんじゃないか。」

「……!」


ブグボルグの目つきが険悪になった。


「できるとおもったら…やってみなさい!」


ものすごいスピードで打ち下ろすハンマーを再度横転して避けたプロフェッサーがハンマーを持った腕の方にピストルを撃ってみるが、みんな知っているかのように老練に大型盾をひねってはじき出してしまった。


「フハハハ!可笑しいね! それくらいの拳銃で我をどうにかしてみるつもりなら、すぐやめた方がいいよ!」

「確かに…拳銃ではだめだな。」


再び距離を広げたプロフェッサーは拳銃を入れた。

相手はシールドを使わない代わりに堅固な装甲で持ちこたえて圧倒的な近接戦能力で押し付ける形のボスだった。


あんなスタイルの敵を攻略するためには、鉄塔を使える銃器を持ってくるか、手榴弾など爆発物を動員する方法が有効だった。

プロフェッサーはゆっくりと腰の後ろにつけていたバッグを取り出して見せた。


「これならどうだろうか。」

「ほう…そのかばんに入ったのが本当の武器だと言うつもりか。」

「そうだ。」


プロフェッサーは挑発するように彼の前でカバンを広げて組み立てを始め、ブグボルグはまるでやってみるならやってみろというように盾を立てたまま待機した。


「待ってくれるなんて、親切だね。」

「別に、貴様がバズーカ砲でも持ってこない限り、我の鎧を突き破ることは不可能だということをよく知っているからだ!」


圧倒的な自信を表す彼に、プロフェッサーはヘルメットを通して笑顔の絵文字を出力して見せた。


「……!」

「せっかく君のように固い甲冑を誇る敵と向き合ったのだから…」


組み立てを終えた狙撃小銃に弾倉を装着させた瞬間、ブグボルグは直感した。

あの銃なら自分の鎧が破れるだろうと。

それなら、彼が取るべき行動は一つだった。


「男対男として、これ以上は大目に見てくれないー!」


大急ぎで出てきて、ハンマーの頭の部分を突き飛ばしてプロフェッサーの腹部を狙った。

狭いうえ、亀裂まで生じている建物の屋根の上で狙撃銃を持って距離を置いて戦うのは容易ではないはずだ。


「くぅ…!」


プロフェッサーは歯ぎしりしながら体をできるだけ横に傾けてハンマーを流し、犬の頭板に隠されたレバーに指で触れた。

パシャッという音とともに犬の頭板に隠されていたナイフが飛び出した。


「何!?」

「言ったろ?!」


ハンマーを押すのに近づきすぎてしまった彼のヘルメットの目の穴に正確にナイフを突っ込むプロフェッサー。


「クアアアッ!?」

「目の穴、狙われると…!」


暴れるように盾でプロフェッサーを殴り飛ばしたブグボルグは泣き叫びながらハンマーを持って暴れ始めた。


「許さない! 貴様…!必ずひき肉にしてやるー!」

「そういえば、まだ刺していない穴がもっとあったんだ…!」


さっと振り向いて距離を少し広げたプロフェッサーが一瞬で射撃姿勢を取った。

狙うのは当然のことながら残った目一つ。

ぎょっとしたボスが盾で顔を隠すと、


タアン!


「あああっ!こ、この稚拙な奴が?!」


盾で隠していなかった、甚だしくは平凡な戦闘靴を履いていたブグボルグの足に銃を撃ってしまったのだ。


「稚拙?これも戦術だ。 勝つために手段を選ぶのは、脳がロマンに溶けてしまったバカたちのやり方だ。」

「くぬぬ…!」


ブグボルグはしばらく萎縮しているように見えたが、すぐに盾を持ち上げて突進し始めた。


「うりゃああああああああ!」

「まさか…!」


彼が狙うのがプロフェッサーを押しのけ、一緒に墜落することであることに気づいたプロフェッサーが避ける場所を探して首を向けた。


しかし、先ほど射撃位置を決める過程で、いつの間にか屋上の端に立つようになった状況。

今立っているのは倉庫の建物の4階。

落ちると、少なくとも足の片方は大きな怪我をするはずだった。


「チッ!」

「ハハ!死ね!ネズミめ!」


とうとうその雄大な肩でプロフェッサーの体を押して一緒に墜落することには成功したが、ブーグボルグも代価を払わなければならなかった。


どすっ。


「くぅっ?」

「俺が優しくやられるやつに見えたのか。」


その瞬間もナイフで自然に走ってきたブグボルグの腹部を刺してしまったのだ。


「フフフ!でも貴様は死ぬぞ!」

「果たしてそうだろうか。」

「そう!なぜなら…!」


腹部を刺されて血を流しながらも、歯を食いしばったブグボルグが太い腕でプロフェッサーをぎゅっと抱きしめた。

このままでは二人とも頭から落ちるはずだ。


強力な甲冑を身に着けているブグボルグ自身は助かる見込みがあったが、せいぜいきれいなヘルメット一つが全てのやつは、必ず首を折ることは明らかだった。


「貴様の首の骨が折れる音を鑑賞してやるぞ!」

「そんなことは起こらないと断言するよ。」

「フハハハ!ここまで来ても見栄を張るのか?」

「…俺は一人じゃないんだ。」


その瞬間、ブグボルグは見た。

建物の3階の窓を割って飛んでくる黒い服の女忍者を。

彼女の両手に握られた脇差が閃光のように光るのも。


「あああああっ!」


両腕から甲冑が見分けられなかった関節部位を正確に切断し、プロフェッサーの後襟をつかんだシャドウ。


「これ、借金としてつけておいてもいいですよね?」「…もちろんだ。」

「ヘヘッ。」


彼を捕まえて墜落していたシャドウは、上手にすでに倉庫の中の倉庫番を片付けて出てきたグレイブが手を振っているのを発見した。


「おい!内部は全部整理したぞ!」

「…お世話になりますか。」


スーッと特有の影の移動術で着地を省略し、グレイブの裏側から登場する2人。


地面に着くやいなや両腕を失って墜落していたブグボルグの体が重い音を立てて打ち込まれた。


「う、腕が…! この我の腕が! うおおおお!」

「何だあれ、まだ生きているね?」

「ウラボスだ。」

「本当ですか?」


プロフェッサーは冷静な態度で狙撃銃を正確に眉間に向けた.


「さようなら、ブグボルグ。」

「くぅ…!プロフェッサー…!」


*


隠しボスを倒したのは重機関銃の部品と、隠しボス区域の保管庫に接近できるカード・キーだった。


一行は倉庫の番人が守っていた倉庫と上の階に隠されたボスの保管庫まできれいに掻いて装甲車にいっぱい積んだ。

その量が相当なため、結局車両の天井に物資が入った箱をロープで固定しなければならないほどだった。


「うわぁ…こんなに多いとは…」

「確かに。隠れボスの保管庫が相当だったので。」

「次はいつまた来ますか?」

「そうだね。これなかなか面白いね。 稼ぎもいいし。」


プロフェッサーは首を横に振った。

今回はこのダンジョンの物資が糊で満たされた酒器だったので、この程度で払うことができた。

今回このように振ると、しばらくは空き家になるはずだった。


「俺たちの本業はPVPだ。」

「そりゃそうだけど…」


残念がる一行を眺めながら、プロフェッサーは首を横に振った。

彼女たちに近い将来のアップデートに関する内容は口にしてはいけないと固く誓いながら。


-つつく-

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