第2話 忍者·リアリティ·ショック1

ゲームの時間で一日が過ぎた。

プロフェッサーはバイザー付きズーム機能を使いながら襲撃場所である鉱山の下見をしていた。


「辺境の鉱山にしては警備がかなり厚いね…」

情報通りなら、重要な先端機甲装備に入る燃料の材料として入る鉱物がたびたび発掘される鉱山なので、轟龍会側でも重要視している模様。


特に公式戦シーズンが差し迫った時点であるだけに、NPC鉱夫たちを大挙補充して毎日のように多くの鉱物資源を掘り出していた。

「なるほど、倉庫はあちらで…」


内部施設襲撃および物資奪取には黒虎連盟の襲撃隊が出る予定だった。

プロフェッサーはすぐに内部施設を見学するのをやめ、ズーム機能を停止させた。


「ところで…陰気な森だな。」

自分が立っている鉱山の周辺を取り囲んでいる森を見回していたプロフェッサーが止まった。

かすかだったが締め付けられるような鋭い殺気が感じられていた。


それなりに隠れ狙撃のプロフェッショナルだと自負する自分の視野から身を隠したまま監視するほどの実力者とは…

プロフェッサーはできるだけ目立たない動きで腰の後ろのピストルホルスターに手を運んだ。


「このサーバーで最も有名になっているフリーランサー請負業者が なぜこんな所でうろついている?」


女性の声。

それも木の上ということ以外には正確な方向さえ計り知れないように四方からこだまする奇妙な発声法を使っていた。


「ほお、これは驚きだ。 轟龍会にこんな変わったスキルを使うユーザーがいたのか。”

「質問しているのはこちらだ。 答え次第では、見逃せないから覚悟してもらう!」


殺気が濃くなった。

まだ作戦開始もしていないのに、このようなところで戦闘を繰り広げるのは明らかにプロフェッサーのやり方ではなかった。

彼は素直に両手を上げて戦闘意思がないことを明らかにし、頭を上げた。


「私のことを知っていれば分かるのに。 私がこんな所を何事もなくただ歩き回る人ではないということは。」

「やっぱりそうだったか。 それなら申し訳ないが死んでもらう。’


冷たく死を宣告し、本格的にプロフェッサーの皮膚にまで殺気が蚕食されてきた。


「おい、俺は別に暗殺任務とかそんな過激なことで来たわけじゃないんだ。見ろ、 拳銃以外の武装もないじゃないか。」


声の気配が少しでも感じられた。

彼の周りの木の枝を飛び越えながら、彼の体をぐるりと見回すのがぼんやりと感じられた。


「…じゃあ、どういう用事で来た? 正直に答えろ。」

「…事業上秘密だ。」

「依頼をした奴は?」

「以下同門だ。 すまないね。」


しばらく女性の声が止まった。

おそらく鉱山の中の指揮官ユーザーと話をしているのだろう。

すぐに彼女の声が再び聞こえてきた。


「本当に暗殺や爆破工作のようなことじゃないよね?」


疑わしいように再度確認する声に、プロフェッサーは特有の機械音混じりの無味乾燥な音声で答えた。


「もちろんだ。それだけは確実に答えられる。」

「…それならいい。 今度だけは見逃してあげよう。」

「それはありがたい。」

「ただし!今すぐ帰れ。 これ以上この辺で覗いていたら許さない!」

「…わかった。」


すぐに振り向いて鉱山から遠ざかるプロフェッサー。

そんな彼を凝視していた疑問の人影は、彼が視野から消えると、こっそり木の枝の上から飛び降りた。


現在はファンタジー世界観のゲームなどで登場するという日本の女忍者を連想させる服装をした女性は、信じられないようにしばらくプロフェッサーが消えた方向を凝視していた。


「チッ。」


指揮官の呼び出しに仕方ないように軽く地面を蹴って再び木の枝の上に飛び上がり、敏捷に木の上を燃え越えて鉱山に戻った。


*


「襲撃組の状況は?」

[編成は終わった。ユニオンの友達との話も改めて確認しておいたし。 問題ないよ。]

「…例の情報に対する対策は?」


先日、下見で彼を脅かした奇妙なスキルを使う女性ユーザーに関する情報を黒虎連盟に伝えておいた。


準備性の良い彼らなら、必ず対策を講じておいたはずだ。

成功率100%のためにはどんな小さな変数でも必ず統制する手段を用意しておくのが彼の方式だった。


[残念ながら情報が不足しており、別に対策は講じなかった。 その部分は君に一任するよ。]

「くぅ…相変わらず人使いが荒い奴らだな。」


プロフェッサーは基本的に黒虎連盟の仕事は好む方だった。

プロフェッサー自身の性向をよく把握しており、合う仕事だけをもたらすうえに、お金に関して問題を起こすこともなかった。

しかし、ただ一つ気に入らない部分を選ぶとすれば、まさにこのような部分だった。

混快にお金を払って最大限配慮する代わりに、それだけプロフェッサー自身をこき使った。


[お前の実力を信じるから任せるんだよ。 よろしく。]

「知っている。」


通信を終えて横を眺めると、すでにプロフェッサーのかばんを持って立っている男性。


「今日はまだ何のコスチュームだ?」

「プリエンジェラの最新シーズンの主人公だよ! どう?かわいいでしょ?」


太い声に2メートルに迫る筋肉質の男性は、なんと女の子たちが熱狂する魔法少女アニメの服装をしていた。


ミセスキューティクル。

プロフェッサーの唯一の固定パートナーであり、装備製作と整備を担当するユーザーだった。


実力だけは製作ユーザーの間でも5本の指に入る超一流だったが、その奇怪な趣向のおかげで探す人がいなかった彼をひたすら実力だけで人を判断するプロフェッサーが収めたのだった。


「どうでもいい。 話したどりにセットしているか?”

「もちろん!でもどうしたの? 天下のプロフェッサーが片手斧とは?”


プロフェッサーは黙って考え込んでいた。

例の声の人物は、少なくとも銃を主に使うユーザーではなかった。

それならあえて殺すという曖昧な威嚇をするのではなく、足元に銃を撃つのが先だったはずだ。

それなら、相手がどのようなやり方で襲いかかるか予測が難しくなる。


「…保険だ。」

「保険?せいぜい辺境鉱山なのに?」

「知っているだろが。 私のフランチャイズ」。

「あ、それはそうだけど…」


依頼達成率100%。

高い上に仕事を選り分ける気難しい作者だが、任された仕事は本当に手段を選ばずに成功させる。

それがまさにプロフェッサー。


「そろそろ出発する。」

席を蹴って立ち上がって邸宅を出るプロフェッサーを見て、キューティクルは深刻な表情を浮かべた。

プロフェッサーが保険を口にすることは本当に並大抵のことではなかったので。


まもなくプロフェッサーはユニオンと轟龍会の国境線で黒虎連盟の襲撃チームと遭遇した。

「やあ、久しぶりだね。」

「ちょいっす。お兄さんがあの有名なプロフェッサーですか?」


特に軽そうな話し方をする若いユーザーが彼のバイザーに不思議そうに目を通し、すぐに衝動的に手を伸ばすと、プロフェッサーは慣れているように軽く手を叩いた。


「えっ?そうじゃなくて 顔くらい見せてくださいつ。 一緒に仕事をする間柄なのに。」

「…君、名前は?」

「ウィキッド・ジェミつ。 プロフェッサーじゃなくて本名は何ですか?”


いくら公式戦の方に人力を追い込んでいるとしても、まさかこんな新米を襲撃チームに入れておくとは。

さらに、このサーバーではそれなりに有名なプロフェッサーについても知らないのではないか。


「君、このサーバーの経歴は?」

「あ?ゲームの時間で2ヶ月くらいですつ。」


心から今回の仕事が終わればベアード·チェの顔面にパンチを打ってしまおうかと少し悩んだ。


プロフェッサーが活動しているサーバーは一般サーバーではなかった。

公式戦が開かれるサーバーとはまた違う、勢力間で公式戦のための資源をめぐって争うように作られたPKが中心の紛争地域惑星の一つなのだ。


ここの環境や生活方式は各勢力ユーザーが比較的平和に過ごしている一般サーバーとは大きく異なるため、少なくともゲーム時間として6ヶ月程度は過ごしてみなければならなかった。


「ジェミ君。」

「はい?」

「…死ぬ気でなければ、この仕事から手を引くことをお勧めする。」

「何つか?!私が何かすごく悪いことをしたんすか?!」


慌てて黒虎連盟ユーザーを眺めると、古参ユーザーが情けないように首を横に振っている。

まもなく最年長のユーザーが近づき、プロフェッサーに握手を求めてきた。

「すまないことになったね。 人が足りなくて仕方がなく。」

「…理解した。」

「ええ?!アニキ、ひどい!?」


結局、古株に一発突き刺さったジェミが愚痴をこぼしながら自分の位置に向かい、プロフェッサーは狙撃位置を取るために近くに適当な古木をスパイクがついた靴を利用して上手に乗って上がった。


襲撃チームは彼が位置するのを見て,素早く木の間を通り抜けながら鉱山に近づいた.

まもなく鉱山の監視塔にいたユーザーが彼らを発見したのかスポットライトを当てて警報を鳴らし、戦闘が始まった。


「走れ!いったん中に入ればこちらの勝手にできる! 絶対に止まるな!」

「シールドモジュールつ発動!」


ダークゲーマーたちが主流の黒虎連盟らしく、PK状況にも上手に対処する姿。


反面、轟龍会のユーザーたちは非常に困惑していた。

数日前、プロフェッサーがうろうろしたことで警戒態勢を一層強化したが、予想より敵の実力が良かった。


「くそ!制圧射撃! 制圧射撃をしろって!」

「機関銃射者は何をしているんだ! 撃て!撃て!」


ユーザーの催促に後方で待機していた轟龍会の機関銃射者が慌てて据置された機関銃をつかんで撃ち始めた。

待っていたかのように散開する黒虎連盟のユーザーたちの姿を見ながら、轟龍会のユーザーたちは乾いた唾を飲み込んだ。


「絶対に施設の中に入らせんな! 奴らは乱戦を狙っている!」

「うわあああああ!」

「スポットライトをもっとよく照らせ! よく見えない!」


前方で騒がしくなったことを確認したプロフェッサーの手も忙しくなった。

カバンから銃の部品を取り出し、狙撃銃を組み立てた彼は厚い枝の上にうつ伏せになった。

彼が真っ先に狙うのは、


ガシャン!


「ああっ!スポットライトが!」

「何?!どんなやつなの?!”

「狙撃みたい…くあっ!」


監視塔の上でスポットライトを操作していたユーザーがヘッドショットを受けて監視塔の下に落ち、死亡判定で粒子に分解されて消えた。


その姿を目撃した轟龍会のユーザーたちは緊張した。

この真夜中に狙撃手だなんて。


「みんな頭を下げろ! あのくそどもめ、狙撃手まで連れてきた!」

「夜光棒!夜光棒投げて! 何も見えないと撃てないぞ!”

「あほか!今火を灯したら狙撃されるぞ!」


右往左往する間、黒虎連盟襲撃チームが一つ二つ鉱山を取り囲んでいる鉄条網と防壁を手榴弾で崩し、ついに内部に侵入した。


「だめ!奴らが入ってきた!」

「止めろ!止めるんだ! 絶対に押されるな!」


基地内はあっという間にめちゃくちゃになった。

二つの勢力のユーザーが互いに銃を撃って銃剣を振り回して絡み合い、随所でシールドを失ったユーザーが粒子に分解されて消えた。


プロフェッサーは狙撃銃でちらほら見える轟龍会のユーザーたちを倒し、戦況をゆっくり黒虎連盟の方に導いていた。


「ほぼまとまりつつある…うん?」


最初は見間違えたのだと思った。

轟龍会のユーザーたちの影の間で何か素早く隠密に動いていた。


「何だろう?機甲装備かな?」


- つつく-

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