第23話 レーザー•ライン5

君臨者ユーザーたちの叫びにコスモ・スポーンの兵士たちを指揮していた通信兵は、何か気づいたかのように目が光った。


「自走砲…! そうだ!自走砲があったんだ!」


すぐに口元についていたマイクを捕まえる通信兵。


「ごら!自走砲の射手たち! すぐに直射砲撃モードに変えて、ここに押し入ってくるやつらを爆発させろ! 今すぐにだ!」

[都市への砲撃はどうしますか?]

「今それが急なことではない! この傭兵たち、汚く粘り強いんだよ!」

[わ、分かりました!]


ギイングー


すぐに多足歩行自走砲の砲身が動き始めた。

ゆっくりと動いて君臨者ユーザー側に向かう瞬間、プロフェッサーの耳元に約束された勝のささやきが聞こえてきた。


[設置完了。]

「…離脱は?」

[もちろん完了した、いつ始めてもいいよ。]

「すばらしい。」


カシャッ。


直ちに起爆装置を押すと自走砲の胴体下部に付着した爆発物が一斉に爆発し自走砲が流爆して火柱を噴き出した。


「何、何だと!?」

「よし!砲が全部壊れた! もっと押し付けろ!」


君臨者のユーザーたちは、撃つところがなくなったバズーカ砲を基地内で抵抗する兵士たちに撃ち始めた。

あちこちで爆発と共に兵士たちが大きな負傷を負って転落すると、指揮をしていた通信兵も当惑し始めた。


「ち、ちくしょ!支援軍! 援軍がどうして来ないんだ! ここは私たちの本陣だぞ?!」


せっかく呼び寄せた空中講習部隊は、対空砲とリージョンユーザーたちの大口径突撃小銃の射撃に力なく落ちていた。


本来なら、このタイミングで重歩兵部隊が支援に来なければならないのに、来ていなかった。


「後退しろ! 各人員バンカーに後退ー!」


通信兵は基地の内側に建設しておいた大型バンカーに後退を指示した。

しかし、彼らの前には飢えた狼の群れのような軍林者の大部隊があったからだ。


「何?逃げる? このやろどもが!」

「追撃しろ!掃討戦だー!」

「奴らが持っているものを全部剥がそうぜー!」


勢いに乗った君臨者ユーザーたちが盾を利用して右往左往する兵士たちを殴り倒して踏みながら押して入り始めた。


驚いた通信兵は自分の近くにいた兵士20人ほどを何とか収拾しバンカーの中に逃げることは成功したが、外にいた兵士たちは君臨者に押されて踏まれた後、銃剣に刺され装備品を剥がされていた。


「くそ…野蛮な奴らどもめ! おい!志願兵はいつ来るんだ?! ここは合併軍の兵站基地だ! 陥落寸前だぞ!」


恨めしいように通信機を叩きながら糾弾すると、嘘のように基地上空に再び武装輸送船4台が登場した。


[貴官の救援要請を確認した。 直ちに重歩兵隊を降下させる。]

「おお!遅いって! 遅すぎる!早くあの野蛮な用兵たちに撤退を!」


ついに軍林者がバンカーを包囲し、基地内部にユーザー部隊がすべて入ってきた状況。


突然登場した新しい輸送船を見て、大したことなくさっきのように対処しようとした瞬間、最初とは違ってジェット・パックをはめた一般兵ではなく宇宙服を厚くしたような分厚い服を着た兵士たちが地面に着地した。


「暴れるのもここまでだ。 用兵ども。」

「ここで今すぐ退け。 じゃないと地獄を見せてやろ。」


一番前に立っていた2人の重歩兵が警告性コメントを飛ばしたが、ユーザーたちは笑うだけだった。


「はぁ!あの発泡スチロールみたいなものを巻いて怖がらせるのか?!」

「おい!打ちまくれ!蜂の巣を作ってやれ!」


直ちに銃撃を始めたユーザーたちだったが、異変はすぐに起きた。


ティンティン!


「なんだ?シールド中華弾だったのに?」

「ふん。その程度の弾丸で我がの重歩兵隊の強化シールドは壊せない!」


ユーザーたちが使用していたシールド中華弾が効かなかった。

その時になってようやく、今までの敵とは違うことに気づいたユーザーたちが乾いた唾を飲み込み、対戦車砲を撃ち始めた。


「死ね!死んで倒れろ! このぬいぐるみやろー!」


いくら彼らでも対戦車砲には脅威を感じたのか、反撃を始めた。


「全員、攻撃開始!」

「地獄を味わせてやる!」


奴らの両腕部分の甲冑が展開されて現れた彼らの武装の一つは、他でもないナパーム放射器だった。

赤い火の幹が噴霧器のように降り注ぐと、盾を持って陣取っていた君臨者ユーザーたちがシールドが色あせるほど燃え尽き始めた。


「うわぁー!?」

「ち、ちくしょ! 火炎放射器だなんて!」

「撃て!撃ち続けろ! いくらシールドが硬くても、破れたらこちらが優勢だ! 割れるまで叩き込め!」

「バズーカ砲!バズーカ砲で撃て! 普通の弾で開けるには時間がかかるんだって!」


重歩兵のうち2人がバズーカ砲を3発撃たれて保護膜が破られたが、相次ぐ射撃にも保護服はゴムみたいに一般弾は軽く流したり跳ね返したりしていた。


重歩兵隊はそのような防御力を武器にナパーム放射器を撒き散らし、ゆっくりと推し進めた。


「ああああっ!! 火が!火が!」

「なんで弾丸が通じないんだ?!」

「あの服は何んだ?!」


逆転しようとした戦況を覆したのは、プロフェッサーのチームだった。

ナパーム放射器を前面に押し出していた重歩兵隊のうち、一番後ろにいた兵士の後方に影がフックと通り過ぎると、背中からスパークが飛び出し、大爆発を起こした。


「クアアアアー?!」

「何?!ど、どうやって?!」

「驚くことはない! 戦列を乱すな!」


大将格の人物が手を挙げて安心させる渦中、ふと冷たい視線が感じられ頭を上げて遠いところを眺めた。


「何だろう…?」


ヘルメットに付いたズーム機能で商店街の建物の屋上にテカリする何かを拡大した瞬間…


プアン!


その厚いシールドがあっけなく貫通し、それでも勢いが衰えていない弾丸。

重歩兵隊の隊長は直感的にそれが自分たちが防御できない数少ない弾丸である50口径天空炸裂弾であることに気づいた。


「バカな…! 初交戦に我々の弱点を…!」


何かを悟った時は、すでにその恐ろしい弾丸が彼のバイザーを突き抜けて頭を割った後だった。


そのまま力なく地面に崩れる隊長を見た重歩兵たちが停滞した。


「バカな! どうした!? 隊長が倒れたぞ!」

「お、怖がることはない! 今のは狙撃だ! 狙撃手に気をつければいい!」

「どこから撃った!? 見つけだして!」


重歩兵たちは突撃を止め、各自が躊躇なく厳廃物を探し出し始めた。

君臨者のユーザーたちはその隙を狙って戦列を再整備し距離を置いた。


「ちくしょ!プロフェッサーめ、借りができてしまったか…!」

「医務兵!負傷者の中で生きられそうなやつは治療して救え! 一刻を争う!」

「あの熊きちども、なみの火力ではだめだ! リージョンのやろどもに言って任せなければならない!」


君臨者の要請で駆けつけたリージョンユーザーたちの表情が固まった。

思ったより君臨者の被害が大きかった。

密集大型に押し入ったため、火炎放射器に大きな被害を受けた模様。


「まったく…おい! 榴弾発射機持ってこい! 熊狩りはやはり我らの独壇場ではないか!」

「持ってきました! いつでもおっしゃってください!」


リージョンユーザーたちが榴弾発射機まで持って現れると、重歩兵隊も緊張し始めた。 あの榴弾発射機ならいくら彼らの強化シールドといっても壊れることになっていた。


もちろん彼らの高弾力防護服の前で榴弾の爆発被害には抵抗できるだが、シールドが消えればまたいつ隊長を殺したあの狙撃手の弾丸が飛んでくるか分からないことだった。


「くそ、主武装を準備せよ!」

「わかりました!狙撃手はどうしましょうか?」

「輸送船は…」


すでに対空砲に当たって墜落している輸送船をしばらく見た重歩兵隊の幹部は歯を食いしばった。

ここにはもう他に来る支援もなかった。

他の区画にも用兵どもが押し入ってきて、そちらにも支援兵力が分散したため、こちらに来られる兵力は自分たちが最後だったのだ。


「狙撃手は一応無視する! できるだけ敏捷に動けば、急所は当たらずに終わることだろ。」

「し、しかし…!」


その瞬間、後ろにいた新人の背中から見知らぬ人の気配が感じられた。


「…!? 新参!後だ!」

「え?」


思わず後ろを振り返ってみると、彼の影からすっと上がってきた女忍者が脇差で彼のバック・パックの急所に当たる部分を正確に刺してきた。


「何っ?!この女?!」

「油断は禁物だよ。」


すぐに先ほどの重歩兵のように流爆が起きて爆発する新参を見た重歩兵たちは焦った。


「何、何だあの女?! どこから出てきた?」

「どちくしょ!突撃!突撃ー!このままぐずぐずしていたら、何だかわからないあの女にやられる! そのまま走れ!どうせ他のジャコどもは俺たちに手先一つもつけられん!」

「ウアアアアー!」


発悪するように突撃し、重歩兵たちは自分たちの右腕の甲冑に隠された主武装を取り出した。


「発射ー!」


まるで咆哮するような爆音と共に、どっしりとした空気砲の圧力が君臨者とリージョンのユーザーたちを急襲した。

あっという間にユーザー数十人が落ち葉のように飛び上がり、墜落して陣形が崩壊した。


「うわあっー!?」

「何、何だと?! 空気砲?!」

「くそたれ、面白い物をつけてんじゃん!」

「気をつけ!あれ範囲が思ったより広いぞ!」


君臨者ユーザーたちは悲壮な表情で自分たちの小銃に着剣を始め、リージョンユーザーたちは榴弾発射機を取り出して対抗し始めた。


「撃て!どんなに厚くてもせいぜいシールドだ! 榴弾の雨を浴びると壊れるんだ!」

「当たるかよ!走れ!もっと早く! 止まったら狙撃される!」


空気包でユーザーたちの陣形を崩壊させ、突破を試みる重歩兵たちだったが、容易ではなかった。

両翼で待機していた黒虎連盟のユーザーたちまで加勢してきたのだ。


「準備して-撃ってください!」

「やった!」


なんと手榴弾を一斉に投擲して重歩兵を驚愕させたのだ。


「何っ?!みんな停止! す、手榴弾だー!」

「バカな! 何の手榴弾を…!」


激しい爆発音が数十回鳴り響いてから現れた光景は、まさに凄絶だった。


手榴弾の爆発と金属破片によってシールドはもちろん、自慢の防護服まであちこち破れ、かろうじて立っていた。


「だ、だめだ…このままでは…!」

「全員、奴らにすべての火力を…!」


それでも反撃をしようとした彼らが目撃したのは、着剣をしたまま目が開いて突進してくる君臨者のユーザーたちだった。


「同胞の復讐だー!」

「よくも君臨者に触れた罪の償いを血で払え!」


四方から破れた部分に銃剣を刺された重歩兵たちが一人二人倒れ、残って抵抗していた彼らもシャドウとプロフェッサーの攻撃で次々と崩れた。


重歩兵たちが倒れたのを見たコスモ・スポーンの兵士たちはびっくりして逃げてしまい、ユーザーたちは勝利の歓声を上げて初勝利を勝ち取ったことに喜んだ。


「よじゃー!勝利だ!」

「ウラアアアー!」


盛んに喜ぶユーザーたちを後にしたまま、プロフェッサーは黙って奴らのコンテナを歩き回りながら何か持って行けそうなものがあるのか調べていた。


「ここでもないし…」


しばらく見回していたプロフェッサーは、すぐに欲しかったものを見つけたのか、細長い箱を持って席を離れた。

他のユーザーたちに見えないように注意しながら。


-つつく-

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