第14話 ミスター•プロペサーナル
列車を無事に引き渡したあと。
私有地から少し離れた森の中の空き地の床の一部が斜めに下がり、秘密通路が明らかになった。
道路を外れたウィス-キスの車が自然にその中に降りていくと、いつの間にか床が再び復旧し、跡をなくした。
「ふぅー!」
一番最初にシャドウがドアを蹴って出てきて、ポニーテールで縛っておいた髪の毛をほぐして覆面を引き出した。
「何かちょっと残念だったけど、いい結果になったからよかった。」
反対側の後部座席のドアが開き、シスター・グレーブが榴弾を撃ち、残った空の弾丸を集めて待っていたキューティクルに渡しながら手を振った。
「残念だなんて、任された仕事を完璧にやり遂げたなら、それでいいんじゃないか。」
助手席のドアが開き、特有の機械音混じりのトーンのない音声でプロフェッサーが一言言うと、
「私は何と言うか、撃ちまくって火の海を作ったりするのが好きなんだ!」
「…無節操な破壊行為は慎め。 俺たちはプロだ。」
「ちぇっ!」
シャドウは内心シスター・グレーブの性格について不思議だと思っていた。
普段は優しくて良い姉だが、戦闘に突入すると完全に火がついてトリガー・ハイ状態になって暴れ回った。
よくもあの性格で、これまで公式戦などで耐えてきたと思った。
「それでは今日はお疲れ様。 解散。」
駐車を終えた直後、ゆっくり飲んだ酒の勢いのおかげで、ついに運転席のシートで眠ってしまったウィス-キスをそのままにして、プロフェッサーが一番先に席を離れた。
そんなプロフェッサーの後を追うシャドウ。
グレイブは2人をしばらく眺めてキューティクルが砲塔を解体するのを助け始めた。
「行って休めばどうですか?」
「いや、せっかくだからこれだけ手伝って行くよ。 私が使ったものだから。」
「あら、ありがとう。」
「プロフェッサー。これから何をするんですか?」
こっそり近づいて質問を投げかけるシャドウを無視し、プロフェッサーはつけていた手袋を脱いでエレベーターに乗った。
「もう、たまには平凡な会話くらいは付き合ってほしいんですか?」
「…もうすぐログアウトする。」
「えっ、久しぶりですね。」
「朝食は必ず現実で食べることに決めているから。 それに今日は先約があって午前中には入れない。」
「先約って?」
「…個人事情だ。」
いつもこのようなやり方だ。
話がよく流れていながらも、必ず重要な部分では刀のように個人事情を取り上げながらガードを打つ。
邸宅の規則上、個人の事情について過度に掘り下げることはタブーだったので、彼女としてもこれ以上掘り出すことができなかった。
プロフェッサーが部屋に上がってしまった後、彼女は黙って胸の奥底から手帳を取り出して広げた。
盗賊や暗殺者ユーザーを長くしてきた彼女だけに、情報収集には常に几帳面で、現在彼女の最大の情報攻略対象はまさにあのプロフェッサーだった。
手帳にはすでにここ数ヶ月の生活期間中に彼について分かった細かい事実が細かい字でよく整理されていた。
- 身長:180cm / 体重:??
- 骨格の大きい丈夫な体型。
-左利き。射撃も左利きでキューティクルが常に調整してくれる。
- 血液型 : B
- 好きな銃器メーカー : UEA
-ヘルメットを攻撃された経験はこれまで3回だけ。 そのうちの一つがミストシャドウがしたもの!
-朝食は必ず現実で食べる。
事実、書いておいた情報の大部分はプロフェッサー本人から聞いたのではなく、キューティクルを通じて間接的に得たものだった。
プロフェッサー本人について質問すると、彼はいつも個人事情とか沈黙で一貫していたので。
その他にもウェブで歩き回るプロフェッサーに対する断片的な情報も集めていた。
好奇心も好奇心だったが、ゲーム内で数年間平気でフリーランサー請負業者としてこれほど強固な地位を築いている請負業者である彼に対する情報は明らかにどこか使い道があるはずだった。
*
カプセルが開き、現実のプロフェッサーが頭を掻きながら歩いてきた。
「ふぅ…今朝のメニューは何で…」
ギイッ。
「……!」
ちょうど手を伸ばそうとする右腕の動きに違和感があった。
そろそろ時間になったと感じていたところだったが、案の定。
プロフェッサーはゆっくりと部屋の片側の引き出しから棒状のバッテリーを取り出して机に置いた。
義手のバッテリーがそろそろ限界に達した模様。
がっくり。
左手で義手のカバーの片方を押すとスライドして内側に装着されていたバッテリーが抜けてきた。
それを取り除いた後、机の反対側に置いて新しいバッテリーをはめた。
「足は…」
試しに義手をあちこち動作してみた後、足の方も異常がないか足を踏みながら確認した後になってようやく食事の準備に入ることができた。
ご飯の上に野菜とハム、チーズとクリームソースまでかけたグラタンを作って食べながらスクリーンを浮かべた。
「…予想通りだな。」
プロフェッサーが凝視しているのは株式市場、それもここ数年下り坂をたどっている会社の株式だった。
ガーディアン・セキュリティ。
第3次世界大戦直前に創設され、戦闘用ドローン製作産業として世界的な企業となったロボット製作会社。
そのような会社も戦争が消えた現在は先日まで赤い盾理事会に治安維持用ドローンを納品していたが、それさえも斜陽産業になっていくと次第に会社が崩れているところだった。
「ふむ…」
ゆらゆらと上がってくるチーズの香りを嗅ぎながら、プロフェッサー…いや、プラチナ·キムは濃い笑みを浮かべた。
プロフェッサーは、ゲームで稼いだお金の一部を、これらのいくつかの企業の株式を少しずつ買い入れるのに主に使っていた。
今回もガーディアン・セキュリティの株式を多くでもなく5パーセント買い取った。
これまで集めてきたガーディアン・セキュリティの持分がこれでいつのまにか43%。
これからもう少し買い集めれば経営権をもたらすことができた。
もちろんプロフェッサーが望んでいるのは経営権のようなものではなく、会社そのものでしたが。
「…新しい戦争のために…生という名の戦争のために…続く我々の戦争のために…!」
意味深長な言葉を口にした彼は、歯ぎしりして残った食事をあたふたと食べてしまった。
今日は現実で立ち寄らなければならない場所があったからだ。
彼の外出の準備はややこしかった。
平凡な市民なら出生と同時にDNAをはじめとするバイオ・データが政府機関に提出され保管されていた。
プロフェッサーのように手足が切断されたりする場合、普通は医療機関でこのデータに含まれた細胞組織を培養して切られた部位を作り、再生縫合手術を通じて完璧な状態で治療してくれた。
しかし、彼はすでにかなり前に亡くなったことになっている上、バイオ・データ・システムが確立される以前の人。
そのようなデータがない限り、再生治療の恩恵は受けることも、受けるべきではなかった。
データに彼の情報が入ってくる瞬間、彼の敵とも言える赤い盾理事会の役員たちも彼の存在を知ることになるだろうから。
「ウシャ。」
幸い現在の季節は初冬。
長いコートと長いズボンをはいて手袋をはめると、彼の義手の義足は自然に隠れていた。
問題は…。
しばらく鏡に向き合って、自分の右側の義眼を義手で触った。
「ちぇっ。」
仕方なくいつものようにサングラスをかけたまま道に出た。
自分が過ごしていた古いキャンピングカーを大々的に改造した彼だけの巣から出てきた彼は、ゴミ埋立地周辺に位置したことを後悔し、鼻を塞いで裏通りに向かった。
彼の住んでいるところは一言で言ってスラム街だった。
何らかの理由で取締役会の目の外に出てシステムから追放されたり, 最初から青い窓に加わったとかして浮浪者になってしまった彼ら…
そんな者たちが集まる所だった。
「おい!そこのあんちゃん!お金あるかな?」
一人の浮浪者が前歯が抜けた口でへへと笑いながら近づいてきた。
笑ってはいるが、彼の手には全く親しみのない、どこから誰を刺したのか分からない血のついた包丁まで握られていた。
「……」
プロフェッサーは黙って財布を取り出して開けた.
そこにはたった1枚の1万クレジット紙幣ががらんと位置しているだけだった。
「ふ、ふざけてるのか?! どこに隠した!?」
「……」
黙って首を横に振った彼が財布から取り出した紙幣を浮浪者のナイフに貫通させた。
「き、貴様、 どこに隠したんだと聞いている!」
「…それだけだ。」
「これが冗談に聞こえるのか!ああん?!」
一度包丁を脅かすようにかき回して見せた浮浪者の姿にプロフェッサーが首を横に振った。
「カードなら置いてきた。 すまないね。」
「くそが!」
浮浪者は歯ぎしりをしたが、何か思い出したように目つきが変わった。
「よし…!それならその見た目にも高級なコートだ! コートを脱いでこっちに渡して!」
「……!」
彼の要求に今度も首を横に振った。
コートは困る。
服を脱がされて彼の義手が目撃されれば、頭の痛いことになるはずだった。
すぐに目撃者たちを皆殺さなければならないから。
「貴様!脱いで!さもないと、お前のお腹に包丁を…!」
盛んに彼を脅かすために目をそらしていた浮浪者の朗心を力強く蹴り上げるプロフェッサー。
当然のことながら、彼の足は義足だったので、普通の人が蹴飛ばす時とは衝撃の強さが全く違っていた。
「クアアッ!?」
不運なことに、床に投げ込まれた浮浪者は、自分の包丁が空中に跳ね返り、自分のお尻に刺さって苦痛に身を痛めなければならない境遇になった。
もちろん、彼もやはり再生治療のような贅沢はできない体だろう。
平凡な医薬品のようなものは珍しい現在の世界で、あんな傷は死ぬのにぴったりだった。
破傷風の予防注射とかは、ずいぶん前から消えてるから。
「あああっー!ナイフが! お尻、お尻に!助けて!」
「……」
プロフェッサーは黙って彼を無視し、自分の道を歩み始めた.
敗者は当然死んで血を流さなければならないというのが彼の持論だったから。
持っているお金を与えながら機会を与えたにもかかわらず欲望を追求して死闘を行ったのだから、その結果取り返しのつかない悲惨な死を迎えたとしてもあの浮浪者は満足するだろう。
いや、満足しなければならないはずだった。
それが、プロフェッサー…プラチナ·キムの哲学であり持論だった。
このスラム街に唯一の医師が診療所を開いているところに着いたプロフェッサーは左手で軽くノックした。
「誰だ、今日は営業しないから消えて。」
神経質な老人の声が聞こえたが、プロフェッサーはにやりと笑ったままこっそりとドアを開けて入った。
「ちうしょう!今日は営業してない…」
真昼から洋酒病を抱いていた、頭頂部と前髪が剥がれた老年の医師は、ドアが開く音に診療室から飛び出してくる途中、彼と出会った。
「くそたれが…!」
「久しぶりかな。 クォン博士。」
「くそがきめ! 元気に生きていたんか!」
クォン博士。
彼はプラチナ·キムの父親と親交があった。
たとえ『青い槍』には加担しなかったが、今プロフェッサーが歩ける足と腕、目を与えたのがまさに彼だった。
「見えるままに、 とても元気に生きているよ。」
「…それは…よかったというか。」
「ふふっ、どうしてそんなにへこむ?」
クォン博士は彼を治療してくれたことを半分は後悔していた。
プラチナ·キム。
明らかに不世出の天才だったが、彼の思想は『青い槍』の一部団員の間でも顔を飽かせる極度に過激なものだった。
なんとか生き返った今も彼は戦争を少しも止めようとしなかった。
ただ戦い方を大きく変えただけで、彼は今も血を渇望し続けているのだ。
『青い槍』内で彼を批判した人々が彼を呼ぶ蔑称がまさに現世に降臨した『ブラッド·チェペシュ(ドラキュラ)』だった。
それだけの条件が整えば、この狂った天才戦争狂は必ず軍隊を率いて理事会役員たちをバラバラに破り、その首を棒に刺して振りながら行進しようとするはずだった。
いや、むしろ理事会だけを対象に戦うなら、それはむしろ幸いだった。
もしかしたら…
「どうした。 お前のやつが用件なしに来るやつじゃないことは知っている。」
酒の勢いがすっかり消えた彼が洋酒瓶を棚に回して姿勢を正した。
「点検。」
プロフェッサーは何も言わず、たった2文字だけを口にし、義手を挙げた。
ギイッ…
「あら、故障したの? まさか人をぶん殴りしたりしてないだろう?」
半分冗談で聞くと、プロフェッサーは堂々と肩をすくめた。
幼い頃はあんなにずうずうしいながらもユーモアもある、魅力的な青年だった。
成長した今は世界を相手に戦争をしようとする典型的な悪党になってしまいましたが。
「ふぅ~分かった。 待て…ちょっと水を飲んでくる。」
「ああ。」
博士が自分の個室のシャッターを開けて入ってしまうと、プロフェッサーはゆったりと診療室中央のシートに横になって待っていた。
間もなく赤面した博士が戻ってくると、本格的に点検が始まった。
-つつく-
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