第13話 列車強奪戦2

列車はついに分岐点を通っていた。

轟龍会側の鉄道につながる分岐に変えたせいで、列車が一度大きく曲がり始めた。


「うわっ?!こ、これは?!」

「おかしいですね。 ここからカーブだなんて…?!」

「まさか…!」


事が尋常ではないことに気づいた機関室前のリージョンユーザーたちの目に血がにじんだ。


「こ、こうなったからには…!」


あるユーザーが歯を食いしばって胸の中から手榴弾を取り出した。

列車の中で爆発物を使っていたらどんな大惨事が起きるか誰も分からないが、今はそのようなことを問い詰める状況ではなかった。


「みんな伏せろー!」

「?!」


ユーザーが手榴弾を持った手を上げた瞬間、


タアン!


「くあっ!」


狙撃銃の横に拳銃を抜いたプロフェッサーが直ちにピンを抜こうとする手を撃って阻止したが、これを目撃した他のユーザーが駆けつけてピンを抜くのを助けた。


「今だ!投げてー!」

「あいつが…!」


歯を食いしばったままリージョンユーザーが投げた手榴弾を見たプロフェッサーは歯ぎしりをした。

いくら対人用手榴弾だとしても、大きな衝撃が加わると列車が脱線する可能性があった。

それなら…!


「ふぅ!」


スキル、『弾道迎撃』をありのままにつけたプロフェッサーの手が拳銃の銃身を繊細に動かした。

手榴弾の放物線が最も高い地点に上がった瞬間、


強烈な爆音とともに機関車の天井に大きな穴が開いた。

大きな衝撃で列車が左右にガタガタと音を立て、空中で爆発した手榴弾の破片にそのまま当たってしまったリージョンのユーザーたちが相次いで粒子化された。


「くぅ…!」


プロフェッサーも無事ではなかった。

射撃と同時に防弾板の後ろにかがんだにもかかわらず、爆圧によって体が機関士の座席とぶつかりなければならなかった。


「くそ…腰が痛いな…!」


座席を支える鉄柱に背腰をまともにぶつけたのか、背腰を触りながらもできるだけ慌てて両脚台に置いた狙撃銃の状態を調べた。


爆発の衝撃で機関室の隅に転がっていた狙撃銃をつかんで再び据置した。


「ふぅ…大変だな。」


一方。

ウィス‐キスとグレイブのコンビは3つ目の牽引砲陣地を決めていた。

幸い自走砲のような本格的な装備はなかったが、リージョンのユーザーたちは自分たちの区域境界付近に牽引砲をぎっしりと配置しておいたようだった。


「よし!ここも終わり! この程度なら線路周辺は整理されたんだよね?」

「はい!ミニマップ通りなら、もう砲陣地になりそうなところももうありません!」


ウィス‐キスの答えにグレイブは空の弾倉を機関砲から分離させ、爽やかな笑みを浮かべた。


「じゃ、合流地点に行こうか?」

「そうしましょうか?」


どっしりとしたエンジン音とともに、2人の女性が乗った車が合流地点に向かって動いた。


*


「ふぅ!」

「うわぁ!」


シャドウの流麗な蹴りにあごを殴られたリージョンユーザーの頭が列車の窓にひびが入るほど激しく広がった。


「こ、この女が!?」


反対側にいたリージョンユーザーが緊張した態度で拳銃を取り出して反撃しようとした瞬間、彼女は敏捷な動きで腰の後ろにつけていた自分の機関短銃を持って掻くように左から右に射撃した。


「ああっ?」

「ふん!」


防弾チョッキを着ていて体には大きな怪我はなかったが、拳銃を持った腕に当たることは防げず躊躇した瞬間、走ってきた彼女の膝蹴りに力なく座席の床に散らばった。


「ふぅ…」


貨物室の前を守っていたリージョンのユーザーは計6人。

そして、彼女はそのすべてを一人でやってしまった。

しかし….


「ほら、そろそろ交代を…何?!」

「くぅ!」


やはり貨物室を守る役割は交代式だったのか、新しいユーザーたちが車のドアを開けて入ってくる途中、彼女を発見したのだ。


「お前!確かに轟龍会からの…! 他のユーザーたちはどこだ?!”

「…死んだ。」

「くぅ…!よくも!」


腰の踊りから銃を抜こうとしたのを彼女が太ももの概算から取り出した手裏剣によって手首を殴られ制止されるリージョンのユーザー。


「ああっ!こ、これは何?!」

「ここは通れない、 諦めろ!」

「ふん!おい!ここ侵入者だ!」

「えっ!?」


シャドウの額に一筋の冷や汗が流れた。

出入り口の向こうから見える顔たちは、一見しても12人にはなっているように見えた。

いくら彼女の格闘戦の実力が抜群だとしても、あんなに多くては無理があった。


「ふん!そんなに蜂の巣になりたいなら、望み通りにしてやる!」

「轟龍会のやつら、猛々しいのは分かってくれなければならないからな、覚悟!」


出入り口に入ろうとするユーザーの顔を蹴飛ばしたシャドウ。

あの頭数が押して入ってくれば彼女としても方法がないので、最初から狭い出入り口を死守して持ちこたえるつもりだった。


「くぅ!?よくも俺様の顔を?!」

「あまりハンサムじゃないからもったいないんじゃない?」

「何だって?!」


それとなくやってみた挑発に泣きそうになったユーザーが直ちに機関短銃を取り出した。

待っていたかのように、他のユーザーたちも拳銃や機関短銃を取り出して出入り口に向かって突きつける状況。


「くぅ…!」

「さあ!手をあげて降伏しろ!」


眉をひそめた彼女は、ゆっくりと機関銃を床に置くようなジェスチャーをした。

それを見たリージョンユーザーたちが一瞬安心した瞬間、

何かがごろごろと地面を転がってきた。


「あ…?」

「忍法…マラ霧舞の技!」

「何だと?!」


微弱な爆音とともに転がってきた物体から一瞬にして薄緑色の煙幕のようなものが繰り広げられた。

驚いたリージョンのユーザーたちが煙幕をはがして手を振り回し、思わずそれを吸い込むと、


「クッ!!」

「コ、ゴホゴホ! くぁぁぁ!目、目が辛いー!」

「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」


彼女が投げたのはわさびと催涙ガス粉末を配合した特製催涙煙幕弾だった。


恐ろしい煙幕はあっという間にマス全体を埋め、中にいたユーザーたちは土を汚しながら床に散らばり始めた。


「ああっ!窓! 窓を開けろ!」

「ぐええっ!えっ!」


涙と鼻水を流しながら必死に列車の窓を探して壁をたどるユーザーたち。

シャドウはすでにドアを閉めておいて貨物室の前に戻った後だった。

いくら窓を開けても煙幕が消えるまでには5分はかかるだろう。

少なくとも5分の時間は稼いだ。


線路が再び直線コースに入った。

残り時間は約8分。

シャドウは腕時計をちらっと見た後、悩みに陥った。


目標はあくまでも列車の奪取。

あの先にいる12人ほどのユーザーをあえて相手にする必要はないはずだった。

すでに煙幕に浸かって戦う状態に戻るには、数時間は経たないといけないからだ。


同時刻、

プロフェッサーは機関室の時計を見ながらブレーキのタイミングを測っていた。

天井にできた穴のせいで機関車がガタガタと音を立て続け、不安ではあったが、今のところ特に問題なく動いていた。


「ふむ…あと2分30秒…」


ヘルメットのバイザーから眼光が輝き、プロフェッサーの手がブレーキ・レバーをスムーズに下げた。


ガタガタという音とともにゆっくり減速を始める列車。

プロフェッサーは黙って耳についた通信機に指を当てて3回軽く叩くことでブレーキが問題なく行われたことを知らせた。


あとは…

狙撃銃を分解してカバンに戻し、装甲板も足で思いっきり踏んで折って片方に片付けておいた。

拳銃の予備弾倉を確認した後、機関室のドアを力で押し出した。


「掃討作戦に入ってみようか。」


最悪の場合、さっきのように手榴弾で発悪するかもしれないリージョンのユーザーたちを一掃するつもりだった。


通信機を通じてプロフェッサーの信号を聞いたシャドウも動いていた。

覆面の上に防毒マスクを付けた彼女は、出入り口を開けて辛うじて窓が開き、煙幕が半分ほど抜けた前のマスに向かった。


「うぅ…ごほごほ!」

「うううう…」


死亡処理までではなかったが、いやむしろ死亡処理された方がよさそうな恐ろしい姿で床に散らばっているユーザーたちを見た彼女が首を横に振った。


「すまないが、これも仕事だ。」

「ぐうう……!こ、この事のつけは必ず…!」

「……」


必死に彼女のストッキングの裾を掴もうとするユーザーの首をきれいに脇差で切って死亡処理させた。


順に一人ずつ首を引いて死亡処理させた彼女は、ちょうど向こうから飛び出している4人のユーザーたちを見ながら片手に機関短銃、片手に脇差を持ったまま戦闘態勢を整えた。


「あそこだ!あいつ一人か?!」

「どうでもいい! 貨物室だけは死守する! 突撃!」

「ウラアアー!」


真ん中のマスで休んでいたユーザーたちは歯を食いしばって銃を撃って突進した。

すでに列車は轟龍会の領土内に入っている状況。

彼らに残された手段は本当にほとんどなかった。


「くぅ!」


その勢いに押されたのかシャドウが体を傾けて出入り口の横の壁の後ろに隠れると、彼らはその隙を狙って出入り口の前まで到達した。

出入り口を巡って対峙した状況。

慌ててドアを開けようとするリージョンのユーザーを他のユーザーが制止する。


「ちょっと待ってろ!」

「どうした?貨物室をなんとか切り離さないと!」

「さっきの女、ナイフを持っていたんだ!」

「…!!」

「このまま押し込めば、少なくとも一人は死ぬ。」

「くぅ…!」


状況を把握したユーザーが出入り口の輪から手を離すと、シャドウは内心舌打ちした。

ドアが開いて初めてのユーザーが入ってくると直ぐに首を引いてしまうつもりで脇差をしっかり握っていたが、無駄になった。


「おい!みんな閃光弾とか何か持ってない?」

「ない!手榴弾だけだ。」

「くそ!私もない!」


彼らの会話をぼんやりと聞いたシャドウの目つきが輝いた。


「あ、あった!俺が持っていた! 閃光弾だ!」

「よくやった!渡せ!」


直ちに銃撃の余波で割れた出入り口の窓ガラスから閃光弾を軽く投げるリージョンのユーザー。

すぐにポンといううるさい爆音とともに閃光が輝き、ほぼ同時にドアを開けて濡れたリージョンのユーザーたちが入ってきた。


「降伏しろ!轟龍会の女!」

「うりゃああっ!」

「降伏しなければボロボロになるまで撃ってやるからな!」


慌てて入ってきた彼らだったが、どこを見ても彼女の姿は見えなかった。

しばらくきょろきょろと調べた彼らはすぐに一つの考えにたどり着く。


「まさか、貨物室を分離して別に持っていくつもりなのは…?!」

「くぅ!おい!お前! 私について来い!貨物室を捜索するぞ!」

「くそが!分かった!」


慌てて人員を2つに分けた彼らが貨物室の方に向かう瞬間、列車の片方の窓が音もなく開かれていた。


「気をつけろ!その女の刀裁きは本物見たいから!」

「知ってるよ!」


緊張したまま貨物室に向かっていく前兆に向かって注意を払うその瞬間、

窓からさっと入ってきた黒い形が注意を払っていたユーザーの声をかすめて通り過ぎた。


「え…?」


あっという間にスムーズに首を切ったユーザーが消滅し、自分たちが全方向の出入り口を警戒していた同じ組のユーザーが思わず後ろを振り返ってみると、


「ああ?!」

「フッ!」


光のように殺到してきた彼女と彼女の脇差が驚いて口を開いた彼の口の中に入り込み、彼を死亡処理させてしまった。


何か気配を感じた貨物室に向かっていたユーザーの一人がその光景を目撃し、歯を食いしばった。


「こ、この…くそアマが!」

「何?!なんであそこにいるんだ?!」

「撃て!撃てしまえ!」


銃を取り出して彼女に向ける瞬間、シャドウの耳元に機械音が混じった無味乾燥な音声が低く聞こえてきた。


[下げろ、シャドウ。]

「…!」


すぐに彼女が体を丸めるとプアンという豪快な銃声と共に、50口径の弾丸がやや重なって立っていた2人のユーザーの胸を一度に突き破って通り過ぎた。


「……?!」

「きゃあ…?」


崩れる2人が最後に目撃したのは、うずくまったシャドウの裏側で出入り口が開き、真っ黒な服装に紫色のグローラインが特徴的な服装をした、同じ色配合のバイザーをかぶった有名なユーザーの姿だった。


「プ、プロ…ペ…!」


- つつく-

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