第30話 続く死
補給運送依頼を終えて帰ってきてから3日が過ぎた。
プロフェッサーのチームは、またいつあるか分からないレーザーラインの依頼を待ちながら、それぞれの時間を持っていた。
幸い、天空炸裂弾の導入でユーザーたちのイベント・クエストは再び順調に進んでいるようだった。
他のチーム員たちが部屋で休んでいるのを確認したプロフェッサーは、依頼がないように見えたにもかかわらず、荷物をまとめて出かける準備をしていた。
「プロフェッサー?また散歩?」
「しーっ。」
無駄に上の階の女性陣に知られると、必ずくっついて面倒になるはずだったので、プロフェッサーはキューティクルに声を低くしろというジェスチャーを取りながら首を横に振った。
「…分かった、いってらっしゃい。」
「……」
何も言わずにうなずいたプロフェッサーが素早く道を出た。
普段と違って大きなギターケースを背負った彼が向かったところはレーザー・ラインに向かう路線がある宇宙空港だった。
「……」
周りをちらっと見てから移動した。
幸いなのか不幸なのか到着しても特別なイベントは発生しなかった。
プロフェッサーはユーザーたちが集まっている集結地の方をしばらく眺めてから、都市外郭に建てられたビルに向かって歩き始めた。
すでに民間人も逃げ出し、がらんとしたビルの中に入った彼は、いきなりエレベーターの前でボタンを押した。
「作動しないと困るんだが。」
心配そうに押した彼はエレベーターに火がつくのを見てくすくす笑った。
「運がいいのか、悪いのか…」
エレベーターに身を乗せたプロフェッサーは、直ちに最上階に向かうボタンを押したまま待っていた。
通知音とともにドアが開くと、ゆっくり歩いて周辺を見回した。
窓はすべて割れていて、高い高度でよく吹く風を感じていた。
風が割れた窓枠をかすめて通り過ぎ、うめき声を上げていた。
プロフェッサーは発見した屋上に向かう階段で屋上に上がった。
スカイ・ガーデンが造成されていたはずの屋上。
風に流されて転がるクマのぬいぐるみの残骸を見つけたプロフェッサーが無意識のうちにそれを見つめていた。
「……」
ついに風の勢いに引かれてビルの下に墜落する残骸を見ていた彼は、すぐにユーザーたちの集結地である公演場がある方向に向かって歩き、端の近くでギター・ケースを下ろした。
「…仕事を始めようか。」
足でざっと割れたガラスと庭木の残骸をさっと押して席を作った後、ケースを開けて中に分解されていた対物狙撃小銃を取り出した。
上手に銃を組み立てた後、両脚を広げて端のすぐ近くに立てておき、ケースの隅にあった弾倉まで取り出して装着した。
「ふぅ…」
そのまま銃の横に伏せたプロフェッサーはデバイスを取り出してタッチスクリーンを操作した。
あらかじめ補給品の行列に混ざっていた装甲車両に設置しておいた盗聴器の周波数を把握していたのだ。
まもなくノイズが起きていたデバイスからかすかだが音声が聞こえ始め、プロフェッサーはくすくす笑って胃腸砲を取り出し、銃と一緒に覆って時を待ち始めた。
ゲームの時間で二日。
プロフェッサーは戦闘食糧を吸い込み,待ち続けた。
ついに盗聴器から望んでいた音が聞こえ始めた。
クエストを受けてユーザーたちが動き出した。
「よし…」
すぐにデバイスを減敵手モードに変え、風向きや距離、気圧などの弾道データをチェックし始めた。
瞬く間に計算を終えたデバイスのデータ通りスコープを調整して零点を当てた後、狙撃小銃の取っ手をスムーズに握った。
「アセンション・プロトコル6-6-6-6、デルタ、エスコート、アルファ、デルタ…システム起動。」
[始動キーを指定してください。]
弾倉をしばらく取り出し、最初の弾に指をのせた。
「始動キー、指定!」
弾頭が赤色に点滅し始めた。
それを確認した後、弾倉を取り付け直してボルトを引いて弾を装填した。
「未来のための犠牲に歓喜を…」
彼のスコープにもう一人の生贄の顔が映っていた。
標的と彼の距離、約4キロ。
高さの差約400メートル。
普通ならほとんど不可能な狙撃だったが、プロフェッサーにそんなことは通用しなかった。
56口径専用弾を使用する特製狙撃小銃とプロフェッサーのスキルなら、そのすべての障害を乗り越えることができた。
パオンー!
ものすごい爆音とともに一般的な対物狙撃小銃より大きい、まるで短槍のようなサイズの弾丸が不吉な赤い光を流しながらあの下に飛んでいった。
「何?とこか変な音しながった?」
「どこかで自走砲でも撃つんじゃないか?」
「自走砲だって?コスモ・スーポンの自走砲は全部壊したじゃん。」
出発したばかりのユーザーたちがしばらくためらっている頃、君臨者側のあるユーザーは自分に向かって飛んでくる赤い点のようなものを発見し、ぼんやりとそれを眺めていた。
「あれ…何だ?」
「どうしたの?」
そばにいた仲間が肩に手をのせた瞬間、
プシャアッ!
「あ…?!」
「お、おい?!」
短槍のような弾丸が標的になったユーザーの頭をあごの上を跡形もなく爆散させ、地面にうずくまった。
「何?!何が起こった?!」
「砲、砲撃だ! 砲撃に撃たれた!」
「フィガンがやられたー!」
「ちくしょう!コスモ・スポーンたちの新武器か!?」
ユーザーたちがざわめき周囲を見始めたが、見つけられるはずがなかった。
狙撃をしたプロフェッサーは10ブロック余りの外にある80階余りのビルの屋上にいたため。
だからといって安心するつもりはなかった。
「片付けようか。」
すぐにステルス・フィールドを展開し、狙撃銃を分解してケースに押し戻した。
ポンとケースを閉めた途端、ケースの片方に付いているバックルをベルトに装着して体に固定させた後…
「ふぅ!」
そのまま狙撃した位置の反対側に向かって飛び降りた。
腕と足の間で幕が開き、ウィングスーツに変形した彼の服装のおかげで、速いスピードで宇宙空港に向かって滑空することができた。
飛んでいった彼は、宇宙空港近くの商店ビルの屋上にゆっくりと着地した。
「ふむ…」
万が一でも誰かに見つかるのではないか、慌ててギターケースをベルトから外してウィングスーツ・モードを解除した。
しばらく商店街の屋上に身を下げてヘルメットの機能で周辺の音をチェックした後、軽く商店街を降りてきた。
滑空で少し乱れた身なりを軽く正した後、宇宙空港ゲートに向かって戻った。
*
今回、プロフェッサーが殺したのは旧中国大陸地域の公安庁長の一人息子だった。
ニュースでは大書特筆され、毎日のようにワーストフィールドの運営陣を糾弾していた。
久しぶりに朝食を食べるためにログアウトしてハンバーガーをもぐもぐしていたプロフェッサーは、ニュース記事を見ながら淡い笑みを浮かべた。
少しずつ、少しずつだが確実に近づいていた。
赤い盾理事会という巨大な獲物の首輪に向けて。
同時刻。
ワースト・フィールドをサービスする開発会社としてよく知られた「コアフィールド」のビルに公安要員が押し寄せた。
「今すぐ説明しろ!」
「そ、それが…」
「なぜ説明できないか!? このくそたれなゲームは君たちが開発したものだと言ったじゃないか! なぜ俺の息子がゲームをする中急死したのか話して!」
一人息子の死亡ニュースに目がくらんだ中国公安庁長が、自分の指揮下に隊員たちを率いて訪ねてきたのだ。
「すみません、その問題は開発当時からあった慢性的な問題で…本当にごくまれに現れるので、デバッグのためのデータが…」
「ええい…!5年だよ! 5年!なんと5年間で数百人が死んでいた! なのに、データ?」
憤慨して警棒まで持って振り回す庁長の勢いに部下たちが彼の腕をつかんで引き裂くのに冷や汗をかいた。
今回の出動は厳然と彼の独断行動。
待ち換えたらさせもしないことをして社会不安を助長したと理事会側で重懲戒を下すこともできた。
「が、我慢してください! 庁長!」
「うるさい!お前らが俺の気持ちをわかっているのか?ひけー!俺は今日このろくでなしのコンピューターの廃人どもを叩き潰すからー!」
「だ、だめですよ! 庁長ー!」
しばらくもみ合いをした末、体力が少し消耗したのか沈んだ庁長は結局、他の方法を考え出した。
「おい!」
「あ、はい、何ですか?」
「…あのばかげたゲームのコア・ユニットはどこにある?」
「あ…?!」
「言って、早く、俺が直接アクセスして調べる。」
庁長の爆弾発言に社長の顔に冷や汗が滝のように流れ始めた。
理事会の方々だけが知っている、ワースト・フィールドのコア・ユニットの秘密を彼が知っていたら、どんな波紋が広がるか予測できなかった。
「そ、それだけは…! それだけはだめです! 本当にごめんなさい!」
「きっさま?! 本当に死にたいのか? あーん?」
ちょうど警棒で曲がった社長の後頭部を叩こうとした瞬間、うるさいホイッスルの音が皆をしばらく止めた。
「何だ?!どんなくそやろが…!?」
吠えながら警棒を振りかざそうとした庁長は、出入り口に立っている者の服装を見て凍りついた。
黒の洋服に赤のネクタイ。
そして左胸に刺繍された赤い盾。
理事会直属の特殊公安部隊の隊員を象徴する服装をしたサングラスの男性が、胸から特殊公安部隊のエンブレムを取り出して見せていた。
「…特殊公安部隊第6チーム長です。」
「あ…!」
すぐに社長から中国公安庁長、そして彼の部下まで一瞬にして正姿勢で立ち、彼に頭を下げた。
彼の目の外に出るということは、すなわち理事会の目の外に出るということ。
それは、社会の不穏分子として処分されることを意味した。
「…まず、中国公安庁長のヒョクさん。」
「は、はい!」
「貴官の気持ちは理事会の方々もお察しです…が、ここでこのように越権行為をされたら…」
「す、すみません!是正します!」
「……」
黒いサングラスの内側から感じられる、まるで刃のような冷たい殺気が公安庁長の心臓を切り取るようにかすめた。
「分かったらいいです、中国公安の方々は現時間付で直ちに本来の任務に復帰してください。」
「はっ!直ちに施行します!」
急いで走ってエレベーターのボタンを叩きながら帰る彼らをしばらく横目で見た特殊公安隊員は、今度はコア・フィールドの社長に視線を移した。
「それで、この状況をどう説明するつもりですか…?」
「う、うぅ…」
「…きっと私たちが厳選したハッカーチームが開発チームに合流したはずですが…」
「め、面目ありません!」
「…貴方の卑屈な姿を求めているのではありません。」
「ひいっ!?」
「…経過を、報告、しなさい。」
「……!」
この瞬間、社長は心から辞表を書いて山の中にでも入ろうかと真剣に悩んだ。
-つつく-
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