第29話 デュアル·キング2
「ちくしょう!変な奴ばかり飛び出してくるかよう! 全員!あの怪しい服を着た男を集中射撃しろ! くそたれのマグナム弾をもう撃てないように…!」
一見しても実力者であることを見抜いた分隊長級兵士がウェストウッドを指差しながら集中攻撃するよう指示している瞬間、それを見ていたプロフェッサーが引き金を引いた。
タアンー!
「うっ?!」
「ブ、分隊長?!」
「くそー!あの真っ黒なやろ! 確かにこの前重歩兵を倒したやろだ!」
「何?!こんなくそ! 散開!絶対に止まるな! 止まったら狙撃されるぞ!」
すぐに必死に散らばった兵士たちがそれぞれ標的を決め、急降下しながら銃を撃ち始めた。
主な目標は当然のことながらデュアル・キングとプロフェッサー。
「死ね!この真っ黒な奴!」
「老けた武器を持ってきてさ…!」
きっと相手は地上でバタバタする虫みたいなやつら。
しかし、その2人の男は、めったに降り注ぐ弾丸に当たらなかった。
「ふん!こんな攻勢、いつも経験することだよ!」
帽子をつかんで走り回るデュアル・キング。
弾幕の間をまるで夕立を避けて走り回るカウボーイのように走り回りながら小銃を胸の中に隠した後、腰踊りのホルスターにかかっていたリボルバー拳銃に手を運んだ。
「くそー!なんで当たらないんだー!」
「おい、おい!避けて! こちらに対空射撃が飛んでくるぞ!」
「え?!」
グレイブと他のユーザーたちの対空射撃に押されて停滞したその刹那の瞬間、マグナム弾の豪快な銃声が4発も相次いで響いた。
「ああっー!?」
「え、どうやって!?」
デュアル·キング。
もう一つの別名は0.26秒のガンマン。
ホルスターから銃を抜いて撃発するまで0.26秒しかかからないという速射の達人。
「あいつら、このくらいで驚いたらこっちの方ががっかりするそう…少しは根性を見せろってんだ。」
おぼろげな笑みを切り取ったまま残った二発を全部撃った後、再装填をするかのようにその場でシリンダーを触ると、兵士たちの目に火の粉が飛んだ。
「い、今だ! あいつはリボルバーを使っている! 6発撃ったから再装填をしなければならないだろう!」
「撃て!絶対に再装填させるな! 奴に地獄を味合わせろ!」
直ちに弾幕が広がるとデュエル·キングの微笑がより一層深まった。
弾幕を避けてサイド・スタッフを踏んだ彼が、再びリボルバーを上に持ち上げてさらに2発撃発した!
「あああっー!?」
「くぅ!何、何?! リボルバーが…6発じゃない…?」
デュエル·キングが笑いながらシリンダーを横に取り出し、弾血を落とすが、なんと8つの弾血がぽつぽつと落ちた。
「ああー、言い忘れた…ミーのリボルバーは…一般的な6発シリンダーや5発シリンダーではない。」
必死に降下し、エナジー・ブレードを振り回す兵士の腕を叩き出した後、すぐに再装填しようとしたシリンダーを再び跳ね返し、兵士の頭に当てた。
「ぬ、何の…!? 弾丸はもうないはず…!」
「だから…これはただのリボルバーではなく…『レマート·リボルバー』だ。 もっと勉強する方がいいね、君たち」
プアンー!
散弾の撃発音とともに頭が後ろに折れ、床に投げ込まれる兵士を見た他の兵士たちの顔が固まった。
レマート·リボルバー。
現実でも米国の南北戦争時代頃に使われた、欧州で製作された騎兵用リボルバーの一種。
一般的なシリンダーと違って8発を装弾し、非常用に中央に散弾1発まで装填する独特な構造だった。
デュアル·キングが持っているのは厳密に言えばそれの発展型で、マグナム弾としては非常に平均的な357口径マグナム弾を8発、中央に20ゲージ散弾を1発入れる仕様だった。
「これはもう…本当にがっかりだね。 ユーザーならここまで愚かではないから…」
興が冷めたように話しながら軽くシリンダーを再び取り出した後、スピードローダーでパシャッと装填を終え、再び手首を振って銃身にシリンダーを戻す。
その光景を見た兵士たちは、乾いた唾を飲み込み、ゆっくりと彼と距離を広げ始めた。
普通の実力者ではないことを見抜いて相手にすることを避けようとするのだろう。
「ちくしょ…!とりあえずあいつは保留だ! 他の用兵どもなら…!」
「うっ!」
「あっ!」
もう一方も容易ではなかった。
車両の間に隠れてプロフェッサーが空中を飛び回る兵士たちを鬼のように狙撃して落としており、絢爛たる空中機動で避けようとしてもユーザーたちの対空射撃のおかげで勝手に飛び回ることもできなかった。
半分以上の兵士が床に墜落すると、兵士たちが後退を叫びながら輸送船に逃げ出した。
「くそ用兵ども! 覚えてろ!私たちの重歩兵隊がでめらをつぶすから…!」
「早く!後退する!」
ちょうど輸送船に後退していた彼らは、ふと車両行列の中間程度に大きな布で包まれていた貨物車両の布をユーザーたちが取り除く光景を見た。
「ちょっと待って…何あれ?」
「どうした?早く帰還しよう!」
「いや、ちょっと待ってみろって。ほら!あいつらが何かを乗せてきた…」
貨物室に積んであったものにユーザーが搭乗するのかと思ったら、胴体に折れていた反重力ファンが展開されスムーズに上昇してきた。
メリカ·フロンティアがその圧倒的な資金力を武器に反重力戦闘ヘリまで持ち込んできたようだった。
「あ、あれは…?」
「うわぁー?!退却! 早く!逃げろー!」
直ちに胴体両側のカバーが展開されると登場したのは2丁のミニガンだった。
ブウウウウウー!
まるでおならの音のような猛烈な激発音と共に、まだ輸送船に逃げられなかった兵士たちが蜂の巣になったり真っ二つになって墜落し、急いで空間跳躍をしようとした輸送船にまで掻くと爆発を起こし、2台が墜落してしまった。
ユーザーたちはその光景を見て歓声を上げ、勝利を確信することができた。
*
集結地点に到着した車両行列は、各クランユーザーたちが集まっているところにそれぞれ散らばって普及品を置いて負傷で戦闘が難しくなったユーザーたちを乗せ始めた。
「ヨアー!プロフェッサー! また来たのか?」
あちこちに包帯を巻いても相変わらず元気そうなベアード·チェはプロフェッサーを発見して近づいてきた。
「まあ、今度は依頼の件で来たんだ。」
「依頼?ああー。」
周辺で普及品を持ち運ぶ姿を見て、すぐ直感したベアード·チェがニヤニヤ笑って話題を変えた。
「さっきデュアル・キングが通り過ぎたけど、大丈夫だったか?」
「……」
プロフェッサーは質問を無視してベアード·チェの手に彼のために用意された補給品をさっと渡した。
「何、何よ?」
「弾薬だ。」
「え?俺たち弾薬はまだかなり残っているけど?」
「…重歩兵を殺せる特殊弾だから大事に使うよう。」
「……!」
ベアード·チェの表情が固まった。
ただでさえ黒虎連盟のユーザーたちも、あの重歩兵が大量に出てきて、かなり痛い被害を受けた状況だった。
「それ、本当か?」
「もちろん。この前俺がもしもの時に備えて持ってきたのと同じ弾種だから十分通用するだろう。」
「……!」
プロフェッサーが使った物なら言うまでもないだろう。
直ぐに包装を開けて種類を確認するベアード·チェだった。
「天空炸裂弾…!」
「そう、重歩兵どもにはそれが特効薬だ。」
天空炸裂弾。
弾頭に4つか6つの螺旋形を成す溝を掘り、内部に炸裂神官を付けてぶ厚い装甲を突き抜けて入り、弾頭が爆発し破片で被害を与える特殊弾丸。
比較的高価なくせにユーザーたちが一般的に使用するシールドは、これでなくてもシールド重火弾で対処できるため、実用性が低いと一部のマニアだけが使用する高級弾丸だった。
「こんなに高いのが突破口だったとは…」
「…今度のことで価格がもう少し上がった。」
「何で?」
「…メリカの友達がすごく買い占めていた。」
「くぬぬ、まったく…」
フロンティアは先発隊の戦闘状況を確認し、真っ先に高価な天空炸裂弾をありったげ買い占めて、今回の補給に運んだ状況だった。
幸い、クラン間連合が行われたシナリオ・クエストであるだけに、他のクランのユーザーたちにも配ってはいた。
「とにかく、いい狩りになることを祈る。」
「何?帰るの?」
「今回の依頼は補給品の運送警護だった。」
「そういう事だったか。」
そのようにベアード·チェと話を終えて復帰準備をしていると、メリカ·フロンティア側のユーザーたちと話を終えたデュエル·キングがプロフェッサー・チームの方に歩いてきているのが見えた。
「…早く行かなければ。」
「ヘイー!ミスター・プロフェッサー!」
「…キース、今すぐ出発しよう。」
車のエンジン音が聞こえると、焦ったデュアル・キングが駆けつけて車の前を塞いだ。
「ヘイ!相変わらず社交性の悪い友達だね! ミスター・プロフェッサー!」
「…貴方とは深く関わりたくないんだ。」
「そうしないでちょっと話をしようぜ。」
デュアル・キングが取り出したのは銃ではなくコーヒー缶だった。
ため息をついたプロフェッサーはチーム員にしばらく待機するように言った後、車から降りて彼と歩いた。
都市が一望できる半壊した商店街の屋上に並んで立った二人の男は、それぞれコーヒー缶を握って並んで都市の夕焼けを眺めていた。
「…プロフェッサー、まだその仕事は続けているんだろうね?」
「……」
缶を開けようとしたばかりのプロフェッサーの手が止まった。
デュアル・キング、彼はゲーム内で本当に数少ない… プロフェッサーの秘密をある程度知っている人の一人だった。
「…俺が止まると思うか。」
「それは…残念だ。」
「意外だな。俺を公安に通報さえすれば、その全てを止めることができるのに。」
プロフェッサーの発言にデュエル·キングはくすくす笑って首を横に振った。
「それは困る、 ミスター・プロフェッサー…」
「……?」
「…貴方がいなくなったら、ミーは一体誰を目指して狩りをすればいい?」
「……!」
強烈な好勝心が込められた目つきに出会ったプロフェッサーが、ちぇっと舌を蹴りながら頭を向けた。
「…貴方のその点が本当に頭に痛いと思う。」
「それはミーにとって最高の賛辞だ、プロフェッサー。」
「それで…俺のフランチャイズを攻略するまでは公安にも通報しないという事か。」
デュエル·キングは再び首を横に振った。
「それは…その時になって考えようとしている。」
「…プロなら方針はしっかりしろ。」
「ハハハー!それはミスター·プロフェッサーのポリッシュ、ミーのポリッシュはもっとアバウトだからね?」
楽しそうに笑って濡れる彼を横目で凝視していたプロフェッサーが慎重にヘルメットのあごの部分だけを展開して口を出し、缶コーヒーを一気に飲んだ。
飲み干した缶を力いっぱい握りつぶした後、あの下に投げ捨て、静かに囁いた。
「…平凡な人生を送りたいなら、このゲームをやめた方がいい。」
「ワッ…?」
「…チャンスは今だけだ、ミスター・デュエル・キング。」
「……!」
-つつく-
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