第39話 詐欺師の末路2
数時間後。
蜂の巣を突き刺したように町が揺れていた。
死亡処理されたユーザーがログアウトして君臨者側に連絡をしたようなのか、慌てて飛び出した君臨者のユーザーが銃を持ってあちこちを検問し始めた。
「おい!そこ! ちょっとこっち来て!」
「あの、私ですか?なんでですか?」
「もういいから、とりあえず来てみて! 早く!」
通りすがりの人々はあえて自分たちの方を通るのではなくても脅迫を交えながら半強制的に身辺照会をしていた。
すでにかなり前からプロフェッサーと悪縁を持ったクランらしく、彼をどうすれば防ぐことができるのか、長い間工夫してきたようだった。
プロフェッサーのチームはひとまず共用駐車場内に他の車と混ざって駐車されているキスの車に再集結した後だった。
「シャドーはまだ待機中か。」
「そうだろうね。私も予備弾倉を持って準備すればいいんだよね?”
「そう、必要なら奴らがリスポンする旅館を丸ごと燃やしてもいい。」
「へへ…いつもこんな仕事ばっかりしたいかも…!」
「まあ…たびたび入ってくる部類のことだ。頑張れ。」
「私はこれから何をすればいいですか?」
キスを見てしばらく悩んだプロフェッサーは首を横に振った。
「キスはとりあえず待機。 君臨者の奴らの対処を見ると、見るまでもなくうちのチーム全員の人相着衣を大体は把握しているに違いない。
「はい。」
他の人員は知らなくてもウィスキスは本来戦闘関連スキルも不足し、何よりもチームの移動手段の責任を負うポジションだったので、無駄に出て危険負担を抱え込む必要がなかった。
「プロフェッサーは何をするつもり?」
「俺は働く時、なるべく路上には行かない。 知ってると思うんだけど?」
常に建物の屋上を飛び越えるプロフェッサーにとって地上道路検問は意味がなかった。
*
フオ商会の人員のリスポン時刻が近づくと、車から降りたプロフェッサーとグレイブが各自の場所に移動し始めた。
最優先打撃目標である幹部級の旅館はすでにシャドウがいて、プロフェッサーがバックアップを入れる予定だった。
残りの一般商会ユーザーたちが泊まる低価格型旅館にはグレーブを送って旅館ごと吹き飛ばすという作戦だった。
プロフェッサーは幹部級たちが復活する旅館の窓がよく見える、向かいの建物の屋上に到着した。
「ふぅ…」
席で銃を組み立てて屋上の手すりにかけ、ヘルメットの耳の部分に触れて信号を送った。
[トントン…]
シャドウから分かったという信号が来ると、すぐに各自引き受けることにしたところに向かって視線を固定した。
プロフェッサーは最上階の最高位幹部4人と商会団長の部屋にスコープで目を通し、いつでも撃てるように準備した。
緊張した瞬間、遠くから大きな爆発音が聞こえてきた。
「…グレーブが先に始めたのか。」
見るまでもなく1階に飛び降りて状況を打開しようとした末端から復活するはずだったので、当然ながら状況を確認するために旅館から飛び出てすぐグレーブにばったりしたことが明らかになった。
ふと最上階の一番右側の窓際から光の群れが見えたら、すぐに銃身をそちらに向けた。
「一番目はあなたか。」
復活して自分の体の調子をあちこち見回す幹部の後頭部に向かって、そのまま引き金をそっと引いた。
ピーユー!
消音器に押さえつけられて節制された銃声が鳴り響き、窓に穴が開いて血が飛んだ。
「ふふっ…簡単なことだ。」
そのように次の獲物がいつ復活するのか気にしていた頃、
「…こっち!こっちから音がしたみたいだけど?」
「おい!今すぐ俺について来い! 屋上を確認しないと!”
「……!」
さすが君臨者。
これまで数多くのプロフェッサーにやられただけに、対処方法を研究したことが確実になった。
「ちぇっ、面倒になったな。」
すぐに銃を背負って立ち上がったプロフェッサーが慌てて席を整理し始めた。
そのままでいては、必ずパトロール中の君臨者ユーザーたちに発覚するはずだ。
問題が生じたという信号を耳を3回軽く叩くと伝えた彼が、すぐ隣の建物に向かって軽く跳び越えた。
「…!見つけた!ここだ!」 ここにプロフェッサーがいる!」
「同胞の仇!死ねえっ!」
屋上の出入り口を開けて走ってきた2人のユーザーが、彼を見るやいなや直ちに突撃小銃を撃ち始めた。
銃声が鳴ると、近くでパトロールしていた君臨者側のユーザーたちが笛を吹きながら集まり始めた。
「あちらの商店街だ! 屋上に上がって包囲する! 早く!」
「絶対に見逃すな! 奴は屋上にいる!」
待っていたかのように体系的に走り回る君臨者のユーザーたちを見ながら、プロフェッサーは内心感嘆した。
他のクランのユーザーたちは、プロフェッサーの存在自体を畏敬の念を抱き、生半可に対抗しようとしないのが普通だった。
彼は別に仕事の邪魔にならないなら、周辺の被害を最小限に抑える方向で仕事を処理する方なので、下手に立ち向かったらかえって被害が大きくなるためだった。
しかし、君臨者はどうか。
被害が出ることを知りながら飛びついていた。
「今日は必ずきっさまを捕まえて懸賞金をもらう! 覚悟しろ、プロフェッサー!」
「ふん、愚か者。」
「はっ?!」
プロフェッサーを追いかけて建物を燃え上がろうとしたユーザーがびくっと立ち止まった。
プロフェッサーが逃げている商店街の建物の屋上の欄干に、微妙だが赤い光が見えたためだった。
「ま、まさか…!」
「ほう、気づいたのか。 なかなか見覚えがある。」
その短い時間に屋上の欄干によく見えない角度でクレモア地雷を一つ設置しておいたのだ。
「ちくしょう!ずる臭い奴め!」
歯ぎしりしながら突撃小銃を発射すると、プロフェッサーはさっと屋上の水タンクに寄りかかって隠れてしまった。
「くぬぬ!こっち来い、プロフェッサー! 私とデュエルをしよう!」
「…断る。」
プロフェッサーは、あのユーザーのデュアル要求が純粋にトリックであることを知っていた。
デュエルを受け入れると前に出ると、隣にいる他のユーザーがデュエル・システムが開始される直前にプロフェッサーを撃ってしまうという作戦。
すでにPK専門家の間では広まっているトリックだった。
「くぬぬぬぅ…!」
憤慨したユーザーが手榴弾を投げてクレモア地雷を一緒に爆破させるという過激な方法を動員してきた。
「…奴、ネームドか。」
ハハハハ!今日こそ、今日こそ君臨者の宿願を晴らす! 覚悟しろ、プロフェッサー!」
1メートルくらいの屋上と屋上の間を力強く跳躍し、彼が満足している中、プロフェッサーが水タンクの後ろから歩いてきた。
「ふん!今さら出ても無駄だ! おい!」
「はいはい!」
「…その前に自分の事を心配したらどうだ。」
「何?!」
プロフェッサーがいる屋上の手すりに着地していた彼の足首を、走ってきたプロフェッサーがそのまま蹴飛ばしてしまった!
「くうぅ?」
「床までは約15メートル…足の片方くらいは…ちょっと痛いだろう。」
「この、この…狡猾なやろが…!」
なんとか足の力で踏ん張りながら両足を着地することに成功した彼が突撃小銃のストクを振り回そうとすると、プロフェッサーはすぐに足首を蹴った足をそのまま押し上げて急所を蹴飛ばす!
「くぅ、くおおお?!」
「おとなしく行け、煩わしくしないで。」
建物の間の路地に向かって墜落する彼に向かって拳銃を数発撃った後、自分に向かって突撃小銃を撃つ他のユーザーを避けて再び水タンクの後ろに転がり込んだ。
「ちぇっ、面倒くさい。」
プロフェッサーがいる屋上周辺の建物の屋上出入口が開く音が聞こえてきた。
プロフェッサーを屋上に孤立させるために包囲してきている模様。
案の定、あるユーザーが拡声器を取り出してプロフェッサーを圧迫してきた。
[ーーあ、あ、マイクテスト!]
「全く…人質劇でもないのに…」
[聞こえるかな? プロフェッサー! きっさまは完全に包囲された! おとなしく武器を捨てて投降せよ!]
プロフェッサーの答えを待つかのようにしばらく静かになった間、プロフェッサーはゆっくりと狙撃銃を再び装填した。
こうなった以上、予定にはなかったことだが戦うしかなかった。
[もう一度だけ言う…!]
タアン!
消音器さえ外してしまった狙撃小銃が火を噴き出し、拡声器を持って叫んでいたユーザーが胸から血を噴き出しながら屋上の欄干の下に墜落した。
「あ、あのやろが?!」
「撃て!慈悲を施すな!」
すぐに四方から銃撃が降り始めた。
プロフェッサーは慌ててベルトに装着されたシールド・モジュールをつけて体を転がした。
見るまでもなく、下の方にも君臨者のユーザーたちが陣取っているはずだ。
それなら彼が取れる方法は…!
シールドに弾丸が跳ねる音を聞きながら慌てて屋上出入り口に向かって身を飛ばした。
すぐに出入口の前で閃光弾を一つ取り出してピンを抜き、そのままそっと開いたドアの隙間から投げ入れた。
ポンという音とともに悪口が聞こえると、拳銃を取り出してドアを蹴って入り、前で待機していた君臨者ユーザー2人を射殺した。
「あ、あいつが建物の中に入った! 降りるつもりかもしれない! おい!そこの下の出入り口の封鎖をしっかりしておいて!」
ドア越しから聞こえる音を聞きながら、平然と出入り口を閉め、ロックまでかけておいたプロフェッサーはゆったりとした歩き方で階段を下り始めた。
建物の中にいる以上、奴らはプロフェッサーが正確にどの辺にあるのか分からない。
だからといってグレーブのようにむやみに砲撃して建物を崩すこともできなかった。
ここは彼らの都市であり、過度に破壊されれば都市の治安や色々な数値が下がりながら徴収する税金の量も急落するためだった。
見たところ、この商店街はビューティー専門商店街だったのか、最上階にヘアショップの看板が見えた。
階段の下の方を注視すると…
「気をつけ!盾をしっかり持っ! 奴は射撃の名手だ。 油断すると頭が突き刺さるぞ!」
「くそたれ…! 必ず捕まえてそのヘルメットを潰してやる!」
君臨者が建物の中を捜索するためにユーザーたちを投入した模様。
プロフェッサーはくすくす笑って,ゆっくりとヘルメットに手を運んだ.
プロフェッサーには彼らさえも知らない秘蔵の一手が残っていたのだ。
-つつく-
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