第40話 詐欺師の末路3

クァアン!


ドアノブに専用爆弾をかけて爆発させて進入した屋上のユーザーたちが直ちに小銃を持って慎重に階段を降りた。


階下では盾と拳銃を持ったユーザーが包囲網を狭めていた。


そのように一階ずつ狭めていった末には、必ずプロフェッサーがいるはずだった。


「…え?」

「うん?」


奇妙なことに、2人のユーザーが出会ったにもかかわらず、間には何もなかった。

予想外の事態にびくびくしたユーザーたちが直ちに周辺に何か手がかりがないか調べ始めた。


「くそ!この野郎どこに消えた?!”

「探せ!まだ建物の中に隠れているはずだ!」

「ここは隠れるところもないって?!”


彼らの言うとおり隠れるところは全くない、平凡な商店街の建物の階段。

しかし、観察力の良いあるユーザーが目を各階の商店街に位置した商店に向かった。


「…!」

「おぉ!」


彼の瞳を見て気づいた他のユーザーたちもにやりと笑いながら、各階の商店の出入り口の前に位置した。

この商店街の建物の出入り口と言っても階段通路1ヵ所だけ。


もしプロフェッサーがこの3つの商店のうち1ヵ所に隠れたとすれば、必ず箱の中に入ったネズミのようになったわけだ。


ドーンという音と共に荒々しくドアを蹴って入った君臨者のユーザーたちが銃を突きつけて捜索を始めた。


「君臨者だ!ここに怪しい奴が来たという情報が入ってきた! 反抗する者は制圧する!」

「おい!そこ!顔をこっちに回せ! ちゃんと見えるように!」


1階の化粧品店にはほとんどが女性ユーザーやNPCだけだった。

これにしばらく目を通していた1階の君臨者ユーザーたちは、歯ぎしりしながら頭だけ少し下げて了解を得た後、飛び出した。


「ち、ちくしょう!1階じゃない!」

「ちぇっ!」


2階は戦闘服以外の、非戦闘目的で着る様々な衣装のある衣料品店だった。

ここなら万が一と思って入ったユーザーたちが目に火をつけて調べ始めた。


「おい!顔を上げて!」

「ヒイ!」

「うーん、違うね。いいからあっちに集まっているように。」


一人が店内を見回して客を一方に追い込み、もう一人が店主に銃を振りながら追及した。


「ここ怪しいやつ来てないの? 例えば…ヘルメットをかぶった真っ黒な男だとか。」

「え?」

「ヘルメットをかぶった、真っ黒なやつ!」

「…あの、そんなお客さんは見かけませんでした、本当ですよ。」


首を横に振りながら手を振っている店主NPCを注意深く見ていた彼は、嘘ではないことに気づき、舌打ちをしながら同僚に頭を下げた。


「くそたれ!どこに行った!」

「3階だ、3階のやつらが何か探し出すから上がろう!」


待望の3階。

ヘアショップ。


2人の君臨者ユーザーが銃を持って入ってくると、店の店員NPCが驚いて片方に退いた。


「おい!店主!」

「はい、はい!」

「もしかしてここ怪しいやつ来てないのか?」

「あ、怪しいやつですか?」

「そう、ヘルメットをかぶって、真っ黒な服を着た男性、身長は大体…これくらいで。」


プロフェッサーの印象着衣を大まかに伝えると、しばらく記憶をたどっていた店主が首を横に振る。


「すみません、そんなお客さんは今日来たことが…」

「バカな、今屋上から逃げてきたんだ! 今来たお客さんはどこにいる!?」

「そ、それが…」

「案内しろう、今すぐ!」


店主がもじしながら案内したところは、カットなどの手入れを終えた客の髪を洗ってくれるシャンプー室だった。


「こちら…この方です。 5分前にいらっしゃいました。」

「ほうほう…!」


こいつだ。

と思いながら、奴の首に巻かれたタオルをこっそりとあてて服の色を確認した。


「うん…?」


なめらかな白いスーツと青いネクタイ。

タオルで覆われた顔のあごの線もそのまま表れていた。


「おい!立ってみろ!」

「あの、あの…」


横で途方に暮れている店主の態度に怒ったユーザーが銃を持って威嚇して見えたら、


「申し訳ございませんが、このお客様はまだシャンプーをしている最中なので…」

「何だって?」


こっそり髪の毛の方を確認してみると、まだシャンプーをしているようにくせ毛の黒髪に白い泡立ちがついていた。

このまま頭を上げれば目が痛くなるのは明らかだった。


「くぅ…」


緊急事態だから無理に起こしてもいいが、もしとんでもない人なら後で面倒になるかもしれない。


「おい!今すぐ終わらせろ!」


店主を怒鳴りつけて、早くシャンプーを洗い流せと頭をもたげた。


しばらくしてシャンプーを全部洗い流せば、銃口を彼に突きつけて頭を上げるよう再度要求した。


「つたく、どういうことなのにせっかくデートに行こうとする人をこんなに迫害するんですか?」


タオルを歩いて現れた顔は目鼻立ちがはっきりしている、右側の瞳が緑色で左側は黒色のオードアイが目立つ黒髪くせ毛のイケメンだった。


濃い眉毛をゆがめてタオルがはがれた突然の照明に苦しんでいた。


「お前、何してるやつだ? 今すぐ身辺を明らかにせよ」

「だから、いきなりこれはどういうことかから説明していただきたいのですが。」

「うるさい、すぐに身辺を明らかにしろ! さもないと撃つぞ!」


焦った君臨者ユーザーの怒鳴り声に手を上げて降伏表示をした彼が、自分のIDカードを取り出して見せた。

それを奪うように持って行って確認してみると、


「…黒虎連盟…?」


黒虎連盟のチェペシュ·キムというニックネームを使うユーザーであることが書かれていた。

まだ疑いの余地がない彼は、カードを返してチェペシュを追及し始めた。


「黒虎連盟のユーザーがここになぜ来た?」

「彼女が君臨者ユーザーだからですが…」

「え?本当に?」


まさか自分たちのクランユーザーと付き合うユーザーだとは。

もし幹部側の女性ユーザーと付き合う作者だったら大変だった。


「彼女の名前は?」

「そ、それはちょっと…名前を口にして間違えたら困ると言って…」

「くぅ…!」


確かだ。

かなりの高位幹部か、せめてその幹部の親戚と付き合っているやつであることは確かだった。

これ以上脅したら、後で自分が火に当たるはずだ。


「これは、すまない事になったね。」

「いいえ、ただ…いきなりこれが何の大騒ぎなのか説明してください。」

「それが、今私たちが面倒を見ているプオ商会をプロフェッサーという傭兵が襲撃した。」

「この都市でですか?」

「そう、それに奴は数年前、我が軍林者に莫大な被害を与えた長年の仇だ。 今度こそ捕まえて奴を完全にぶっつぶしてやるべきだ。」

「まさかあの『オープン・シーズン』の…」

「そう、奴だ。」

「…応援します。」

「ありがとう。」


店主に手招きしてあの男に優しくしてくれと耳打ちした後、他の客に頭を下げて礼を言った後、慌ててヘアショップを離れた。


「どちくしょう!一体どこに隠れている?」

「ちぇっ…おい!下の階はどうだ!?」


下の階にもなかったことを確認した君臨者のユーザーたちが歯ぎしり始めた。

きっと逃げ場はこの階段の通路だけなのに、いったいどこに隠れているのだろうか。


ふと何かに気付いたある君臨者のユーザーが、素早く屋上の方に駆け上がった。


「くそ!まさか…! そんなはずはない! そんなはずが…!」


駆けつけた彼が向かったところはドアノブが破れて開いたままぶらぶらする屋上出入り口だった。


「ふぅ…!」


直ちに慎重に銃を突きつけたまま出入り口を横に片付けてドアの後ろを見ると…


「…なんてち、ちくしょう!」

「何?どうした?」

「くそやろが屋上に飛んだ!」

「え?!どうしてそれができるの?」

「あのくそたれが屋上の出入り口の後ろに隠れていたんだ!」

「?!」

「こいつの小銃の弾血が転がっているんだ!」

「…! くそっ! おい!お前たちもすぐ上がってこい! 追うぞ!」


奴がドアの後ろに隠れていたが、自分たちが商店を捜索する隙を狙って屋上に逃げたことを確信した君臨者ユーザーたちが素早く屋上出入口を通じて飛び出した。


5分後。

ヘアセットを終えて出てきたチェペシュは、耳元に小さく差し込まれているイヤホンを指先で2回、軽く叩いた。

それでは、


[トントン…]

「くぅ…」


満面の笑みを浮かべた彼は、平然と階段を下りて街に出た。


依頼は成功だった。

プロフェッサーは商店街の建物から姿を消し、一歩遅れて他のチーム員に集中したが、その時はすでに富雄商会の人員を無残に連続で殺した彼らがウィス-キスの装甲車に乗って逃走した後だった。


君臨者はこのことでプロフェッサーにさらに敵意を燃やし、懸賞金を追加でかけた。


*


「やっぱり見事な仕事ぶりです。」


応接室のスクリーンにビデオ通話を浮かべたシルピアがプロフェッサーに挨拶をしていた。


「いつもの事だ。 今度も必要でしたら呼んでほしい。」

[もちろんです、依頼金は今日の昼食中に入金されます。]

「ああ。」


頭を下げて再度感謝の意を表した彼女との通話が終わり、スクリーンが再びニュース・チャンネルに戻った。


「プロフェッサー。」


こっそりとプロフェッサーの隣の席に着席したシャドウがきらきらとした瞳に向かった。

プロフェッサーは負担を感じているように首を横に向けた。


「今、君臨者のユーザーが探している黒虎連盟のユーザーがいるそうだが…」

「……」

「名前が確かに…」

「それは俺と関係ない。」

「……!」


最初に切って入ってくるプロフェッサーの態度に彼女は確信した。

変装なのか何なのか分からないが、プロフェッサーが偽装身分を使って君臨者たちから逃げたことを。

満足げな笑みを浮かべた彼女が、『分かった』と言って席を避けた。


もちろん、彼女の手に用心深く聞こえたデバイスには、例のチェペシュ·キムの印象着衣と、彼を君臨者側から血眼になって探しているというウェブ新聞記事が大きく載っていた。


-つつく-

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