第33話 キャプテン·スカトゥス2
スカトゥスの顔がゆがんだ.
「なるほど…実力にそれなりに自信はあるってことか?」
「……」
「ところで、何が妙だと?」
「ありふれた汚泥と称する群れの一つに過ぎない俺をわざと注視しなければならないほど警戒する必要があるかという意味だ。」
プロフェッサーの指摘にスカトゥスは大笑いした後、プロフェッサーのヘルメットをにらんだ。
「確かに!きっさまはそのたいしたことないヒトリガの群れの中で少し突出した一人に過ぎない。 しかし…貴様が吹き飛ばした研究所に送った部下たち…あいつらは俺様の直属の部下だったんだ!」
プロフェッサーは歯ぎしりをした。
これは予想外の事態だった。
まさかスカトゥスが堂々とプロフェッサー自身に敵意を表わすとは…
「それは…残念だと言っておこう。」
「は!好きにしろ! 他のやつはともかく貴様だけは…この俺様の手で直接とどめを刺してやる。」
プロフェッサーは首を横に振った。
「それもまた残念だ。」
「何を言ってる、 自分の死を直感でもしたというのか?」
「…あんたは俺を見る事ができない。」
「あーん?」
「標的が狙撃手を見られる瞬間は…眉間に銃弾が刺さる時だけだから。」
2人の存在はほぼ同時にくすくす笑った後、互いに拳銃を向けて対峙した。
「開戦時間は知っているだろう? カブト虫め。」
「…プロフェッサーだ。 もちろん知っているし、準備もしておいた。 どうせならその紫色の髪、黒に染めておくのがおすすめする。 目に付いたら簡単に撃てしまうから。」
「きっさま…!」
「フッ…」
自分の髪をいじっていた彼が先に銃を持って退いた。
プロフェッサーは彼の後ろ姿を見て,ゆっくりと銃を下ろして振り向いた.
「プロフェッサー?」
「面倒になった。」
「…何?」
「…標的が俺を標的にしたようだ。」
「え。」
一行が呆れた表情で眺めると、
「この前の研究所爆破の時に殺した奴らがスカトゥスの直属の部下だったようだ。 堂々と俺を狙っている。」
「……!」
「それは…面白くなったね。」
堂々と興味を持っているグレーブを見ながら首を横に振った。
「いや、相手は『覚醒者』と呼ばれる予測不可能なフィジカルを持つ怪物だ。 全然面白くない。」
「へへ、どうせ後ろに隠れて狙撃するあなたが捕まる可能性はほとんどないじゃない?」
「…それはそうだが…」
プロフェッサーは言葉を濁しながらシャドウを見た。
ゲーム内に珍しい、条件付きではあるが視野が届く約300メートルまでの距離なら一瞬移動可能な急襲機を持った彼女がいる以上、油断は禁物だろう。
他に似たスキルを持っている誰かがあってもおかしくないんだから。
「とにかく作戦をもう一度チェックする。」
「全く…小心者なんだから。」
「まあいいじゃないですか、フランチャイズのためにはこういう細かさも必要ですからね。」
再度ポジションを再確認し、突発状況時の対処について話し合い、一行は開戦日に備えた。
*
開戦日
ユーザー部隊はWACの軌道防御用自走砲の前に陣取って、徐々に進軍し始めた。
行列には主力戦車と自走砲、対空戦車が間に配置されており、空中にはホバリングをする攻撃機が武器を展開し待機中だった。
反対側には自走砲を阻止するためのコスモ·スポンの軍隊が降下して防御陣を構築していた。
盾とブレードを持った剣闘兵から、ジェットパックをはめて飛び回る兵士、先日から大量に投入された重歩兵にその他に普通に銃器を持った一般兵士まで。
ユーザー陣営は前面に君臨者に加え、フランス出身ユーザーが集まった自由軍団が追加された。
いずれも盾使いに長けた部隊で構成されている彼らは、それぞれの盾をしっかりと突き合わせてじっくりと前進していた。
息詰まる緊張が両陣営を締め付けたのもつかの間…
商店街の屋上から姿を現したスカトゥスが、自分のエネルギーブレードを取り出して歓声を上げた。
「攻撃せよ-!」
「おおおおおお!」
呼応するようにコスモ·スポンの兵士たちが射撃を開始した。
これに負けまいと、ユーザー側も動き出した。
「躍進歩行!推し進め! 空間を作るのだ!」
「耐えろ!絶対に盾を逃すな!」
盾を前面に出して射撃を耐えながら空間を作れば、すぐ後ろからついてきていたガイア·リージョンのユーザーたちが盾の隙間から銃を突きつけて射撃を始めた。
「うわぁぁ!」
「ち、ちくしょう! 盾に対ビームコーティングまでしておいたじゃないか?!」
「怖がるな! 火力はこちらが優位だ! 押してしまえ!」
リージョンユーザーたちが使用するZK製銃器の破壊力に止まった歩兵だったが、すぐに泣き叫ぶように歓声を上げながら手榴弾を投げて抵抗し始めた。
「くぅ!奴らが手榴弾を投げているぞ! 盾兵は足に気をつけろ!」
「くそ!とんでもなく撃ているな! 後ろは何してるんだ!」
「知ってる! 催促するなって!」
リージョンのユーザーたちがあたふたと取り出したのは他でもない対空射撃をする時にも使う、大口径の機関砲だった。
それを何機も持ってきて三脚を置いて設置していたのだ。
「今だ!全員かがんで!」
「くそたれ!かがんで!今すぐ!」
直ちに盾陣が盾を斜めに寝かせて最大限下げると、盾兵によって隠されていたリージョンユーザーたちの機関砲がその威容を表わした。
「な、何だと?!」
「き、機関砲!機関砲だ! 全員厳廃!頭を下げろー!」
「ひー、ひーっ?!」
慌てて重歩兵が乗り出して阻止してみたが、ユーザーたちはすでに準備をしておいた。
パンパンという重い大口径機関砲の砲声とともに、重歩兵たちが数少ないうちに穴が開いたまま倒れ始めた。
「く、くそたれ!天空炸裂弾だ! あの傭兵たち、いくらお金を打ってきた?!」
「だ、ダメ!重歩兵後退させろ! 今すぐ!」
「うわぁー!」
機関砲にまで天空炸裂弾を飲ませて水のように撃つユーザー連合の攻勢に怯えたコスモ・スポーン部隊が後退しようとしたその瞬間、
ブアアッー
長く伸びたエネルギー鞭の茎が飛んできて、ユーザー側の機関砲の銃身を切ってしまった。
「な、何だ?!」
「くそー!どんな奴だ…!」
驚いたユーザーたちが周辺を調べれば、商店街屋上で見守っていたスカトゥスが鞭を長く伸ばして攻撃したことが確認できた。
「なかなかお金を使う傭兵たちだな…こんな惑星がそんなに守る価値があるということか?」
「お前たちが何と言おうと、俺たちはWACを守るぞ! おとなしく後退したらどうだ?」
「…ふっ、今まで通りにはいかないからな。」
さっと降りてきて、ユーザーたちの前に立ったスカトゥス。
ユーザーたちは今回のクエストの最終ボスであることを知っているので、目に火をつけて彼をにらんだ。
「あいつを殺せば…!」
「補償…特別補償…!」
「撃て!先にやった者勝ちだ!」
すぐに起きた盾ユーザーたちと機関砲を失ったリージョンユーザーたちまで銃器をむやみに撃ったが…
「ふん!愚者共が!」
すぐにエネルギー鞭をぶんぶん回し始めると、鞭にかかった弾丸が細かく切られて力なく床を転がった。
「な、何んだあれは?!」
「ちくしょう!あのくそ鞭からどうにかしないといけないそだけど?!」
「あれどうやって切る?! 知ってる人いるか?!」
ユーザーたちが慌てた。
重歩兵にも効く天空炸裂弾が力なくバラバラになって床を転がっていた。
あの鞭を何とかしなければならないのに、今まで実弾兵器や実体剣であれを切ったユーザーがいなかった。
いや、切ろうと飛びかかって、そのユーザーの実体剣がきれいに切断されただけだった。
「どうにかしろ!」
「…包囲する!あの鞭回し、正面じゃないと全部防げない!」
「よし!」
すぐに包囲を試みるために左右に散らばるのを見たスカトゥスは苦笑いし、バックパックについていたビームキャノンを肩の上に展開した。
「そうしておくと思うか!」
ブアッ!
あっという間に爆音と共に盾を持ったユーザーたちが人形のように空中に飛んでいったが、投げ出された。
「うわぁ!?」
「カハッ!こ、こんなのありかよ?!」
「ちくしょうが…!」
陣形が瓦解してしまったユーザーたちに一歩ずつ近づき、腰の後ろにつけていたプラズマ小銃を取り出して倒れたユーザーたちに狙った。
「…死ね、愚かな傭兵ども…!」
「や、やばい!」
その瞬間、
スカトゥスは陰湿な殺気を察知し、すぐにそちらにむちを向けた。
しかし…
短槍の大きさの弾丸がものすごいスピードで飛んできて鞭に引っかかると爆発した!
爆発に押されたスカトゥスがよろめきながら数歩後退すると、彼の耳に装着した装備から決して聞きたくない音が聞こえてきた。
「……!」
それは、ガイガー計数器の放射能数値が上がる音だった。
つまり、さっきの爆発は…!
「核弾丸だと…?! どんな奴が…!」
弾丸が飛んできた側を調べたが、彼の視力でも捉えられなかった。
左右に目を通しても飛んできた方向にあるものは….
「…奴だな…!」
少なくとも8ブロックは離れている60階くらいのビルが弾丸が飛び込んだ方向に建っていた。
今になってプロフェッサーの挑発が理解できた彼が残忍な笑みを浮かべて喜んだ。
「そうか…そういう意味だったんだ。 とても面白くなったよ…!」
ユーザー連合のユーザーたちが押し寄せて包囲をしようとすると、圧倒的な角力で道路にひびが入るほど蹴って飛び上がった彼が、プロフェッサーがいるビルの方に建物の屋上を乗り越えながら走り始めた。
「他のやつならともかく、きっさまだけは…!」
商店街の屋上に着地したばかりで、また飛び上がろうとした瞬間、
ピューピュー!
見慣れたプラズマ弾丸の発射音と共に側面からプラズマの塊がむやみに飛んできた。
「うん?!」
ぎょっとした彼が慌てて体を転がして避けた後、そちらをにらむと、
「ヨー。あなたがあのスカトゥス?」
シスター・グレイブはプラズマ機関銃を両手に持って彼と対峙していた。
「…何者だ。」
「シスター·グレイブ、あなたを蜂の巣にしに来た。」
「…俺様は今殺さなければならない奴がいる、その次に相手にしてあげる。」
「あーあ、もしかしてプロフェッサーの事?」
「……!」
「悪いけど、あまり気に入らないけどあいつ、俺のチーム員だからさ、殺させておくわけにはいかない。」
チーム員という言葉に目つきが変わったスカトゥスがゆっくりと鞭を取って銃を抜いた。
「いいだろう…そんなに死にたければ…貴方を殺した後、首を持ってプロフェッサーに挨拶をしに行くとしよう。」
「全く, いくらなんでも女にそんなこと言うのは失礼だぞ?」
銃を撃って殺到しようとした瞬間、背後から感じられる気配にむちを後ろに叩きつけるスカトゥス。
「きゃあ!」
「あんたはまだ何者だ! 女!」
「ちぇっ…やっぱり簡単にはいかないんですか。」
「何だと聞いた!」
スカトゥスの神経質な質問にミスト·シャドウはゴーグルの下に意地悪な笑みを浮かべた。
「ミスト·シャドー、シスター·グレイヴと共にプロフェッサーのチームの一員です。 どうぞ。」
「……!」
「まあ、すぐ別れることになりますけどね。」
「生意気な…!」
-つつく-
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