第9話 絶対的な解決策2

「次の広告だ。」


映像をめくると雄大な行進音楽が流れ、背景が赤く染まった。


[宇宙の人民たちよ! 彼らが来ている!]

[我々の大切な権利を抑圧され奴隷になるのか?!]

[それとも君の手に握られた正義の道具で彼らを懲らしめるのか!?]

[もしあなたが報復を叫ぶ勇敢な者なら、あなたの手には『ZK』のエンブレムが刻まれた高火力銃器が一緒にあるだろう!]

[鉄拳戦線!人民の土のついた手を抑圧する者たちを 破壊する為の鋼鉄の手で作ってくれる皆さんの同志!]


「…ロシアですね。」

「そう。意外と多くのユーザーたちが愛用するメーカーだ。」

「え?本当ですか?」

「そう、高火力で、安くて、扱いやすいんだ。」

「……!」


一瞬、厳しい目つきをした彼女を眺めていたプロフェッサーは咳払いをした。


「代わりに、精度が低いから狙ったどころに当たらないし、反動も強いから扱うには力が必要だ。」

「うっ。」

「次。」


[『UEA』は愛国者の方々の友達です。]

[スーツを着た紳士、戦場の軍人、美しい貴婦人まで…]

[審美眼があったり、実用性がどれほど重要かを 知っている専門家の方々はよく知っています。]

[…『UEA』の装備こそ生存の近道だということを…]


「えっと…どっちですか?」


多彩なデザインの銃器映像を眺めていたシャドウが質問すると、


「…ヨーロッパ系だ。 傘下に複数の系列会社があるので、細部のコンセプトが千差万別だが、占射機能を中心に精度の高い銃を作るんだ。」

「へえー。」


広告映像が途切れると、シャドウはこれ以上考えることもないように口を開いた。


「『UEA』の方がいいと思います。」

「…….」


すでに彼女の返事を予想していたプロフェッサーは、すでに取り出した4丁のうち機関銃1丁を彼女の手に握らせた。


「これですか?」

「そう。特殊専用に消音器が一体化した機関短銃だ。」


プロフェッサーは彼女の目の前で動作方法を2回見せると、最初は迷っていた彼女が徐々に使い始めた。


「本当に思ったより簡単ですね。」

「そう、もともと銃とは弓と石弓が扱いにくいという理由で補給された武器だから。」


しばらく射撃練習をしていたシャドウを見守っていたプロフェッサーは、彼女の肩に軽く触れた。


「これからはシールドの番だ。」

「あ、はい!」


再びテーブルにいくつかのシールドが置かれた。


「シールドには大きくパッシブとアクティブがある。」

「えっと…」

「簡単に言えば、パッシブは常にオンになっているシールドで、アクティブはユーザーが操作してオンまたはオフにする種類だ。」

「あ!」


プロフェッサーが使っていたシールドがアクティブであることに気づいた彼女はうなずいた。


「二つの方式は一長一短がある。 まずパッシブは奇襲の脅威を少なく受けるが、シールド性能そのものだけを見ればアクティブより劣る。」

「そういうことだったんですね。」

「アクティブは奇襲に脆弱になる代わりにシールド性能が高い。」

「ほうほう。」


キューティクルと共にパッシブとアクティブ・シールドを直接使って試演した後、プロフェッサーは意地悪な笑いを流した。


「もちろん、シールド自体にも難点がある。」

「え?体を守ればいいんじゃないですか?」


プロフェッサーは指を動かしながら、


「その代わり、シールド駅長は敵の探知機に探知されやすくなる。 あなたのように潜入が命のユーザーたちにはパッシブ・シールドは最悪だ。」

「ううっ、やっぱりシールドは使いません。」

「ばれた時に保険がないから、 オンしなければただの鉄片だから、アクティブ・シールドくらいは使った方がいい。」


しばらく考えていたプロフェッサーは、すぐにキューティクルに手招きした。


「キューティクル、彼女に俺のシールドのスペアを出してもらうように。」

「うん?本当にそれでいいの?」

「まあいいじゃないか、彼女のプレースタイルは俺に似ている部分があるから、よく合うだろう。」


プロフェッサーの言葉にキューティクルが胸の中に隠していた、漆黒の地に紫色のパネルラインが印象的な高級なデザインのシールド・モジュールを取り出して彼女に渡した。


「これが…?」

「俺が使うシールド・モジュールだ」

「…うそ。」


思わず受け取ったシールド・モジュールから、アイテム・ランクの中で上から2番目の『宝物』ランクを意味する黄金色の輝きが上がっていた!


「あ、あなた一体…一体装備にどれくらいぶち込んだの?”

「…プロである以上、装備は常に最高にこだわるだけだ。」

「だ、だからといってシールド・モジュールが『宝物』等級だなんて…!」


驚愕している彼女のそばでキューティクルが追加打を食わせる。


「…プロフェッサーの装備、ほとんど『宝物』か『最高級』レベルですが?」

「……!」

「もちろん、あなたも近いうちにキューティクルと独占契約をして似たようなレベルの装備を供給されることになるだろう。 驚く必要はない。」

「で、で、でもお金が…!」


装備を整えるのにかかる費用にびっくりして戸惑うシャドウを眺めながら、プロフェッサーは無味乾燥な口調で、


「あなたはこの邸宅の請負業者だ。 当然、俺が規定した独自相場を共有することになる。 また、一緒に依頼に出たとしても、依頼費は各自独自の相場に合わせて受け取ることになる。」

「……!」


彼女が望んだ通り、プロフェッサーの相場によってお金を稼ぐことができれば、装備を整えるまでどうやって持ちこたえれば、それ以降は大金になるはずだった。


「その代わり、この邸宅のフランチャイズを必ず厳守すること。」

「成功率100%…!」

「そう、それさえ守ればどうでもいい。 でも、もし失敗したり諦めたりしたら、依頼金は全額払い戻しだということも念頭に置いておくように。」

「うっ…!」


まさかそんなペナルティまで抱え込むことになるとは…

ちょっと待って、それならプロフェッサーも…?


「プロフェッサー…」

「ちなみに、俺は払い戻しの経験がない。」

「……!」

「フランチャイズが見栄ではないと言ったはずだ。」


何を考えているのか分かるように、くすくす笑うプロフェッサー。

以前だったらその笑いが憎らしいと思っただろうが、今は違った。

背筋がひんやりする感じ。


この男の自信は1の見栄も張らない、本当のプロとしての自信だった。


*


3日が過ぎた。

依頼が来ないと、プロフェッサーはシャドウに射撃練習を続けておくよう助言した。

射撃スキルレベルも上げておかないと実戦でまともに活躍するのが大変だって。


今日もシャドウは練習のために地下射撃場に閉じこもっていて、プロフェッサーは応接室でニュースを見ていた。

呼び鈴の音が鳴ってキューティクルがドアを開けると、そこには見慣れた顔があった。


「いらっしゃいませ-。」

「あ、ありがとう。」


マリア·チャイルドの中堅幹部。

とても困った顔をしてプロフェッサーのある応接室に歩いてきた。


「プロフェッサー。元気だったかな?」

「…まあね。」

「…….」


ぐずぐずしている彼を座らせた後、キューティクルにお茶を出せと頭をもたげた。

「何をそんなに難しいんですか。 俺のフランチャイズをまだ信用していないのですか?」

「そ、それは違うよ。 ただ…君にこんな話をしてもいいのかちょっと…」

「…話を聞くのならいくらでもできます。」


プロフェッサーの確答にぐずぐずしていた幹部は、すぐにティーテーブルに額を当てて、


「お願い!シスター・グレイブを君の指揮の下に雇ってくれないか?」

「……!?」


プロフェッサーでさえ、このような依頼は予想外だったのか戸惑った。

これは一体どういう状況なのか。


「…説明をお願いしよう。」

「そ、それが…無事に転向したまでは良かったのですが…」


幹部の話はこうだった。

一旦転向させたところまでは良かったが、直後ファーザー・マスカレードがクリムゾン・フードを動員して圧迫し始めた。


もし次の公式戦シーズンにシスターがマリア・チャイルド所属で参戦する場合、クリムゾン・フードと全面戦を辞さない覚悟をしろという脅しをかけたのだ。


いくらマリア・チャイルドが善行と宗教家を中心に支持されているクランだとしても、相手は他の大型クランと戦っても押されない屈指の巨大クラン。


全面戦争が起きるとマリア・チャイルドは壊滅的な被害を受けることになるだろう。


「それで何度も交渉をしてみたが…」

「…シスター·グレイヴをマリア·チャイルドから除名させて無所属にするか、公式戦への参加を禁止するか…ですか。」

「ううっ…」


シスター・グレイブを抜いた時からそういう気配はあったが、まさか一介ネームド・ユーザーにこれだけ食い下がるのはなぜだろうか。


「妙ですね。クリムゾン・フードくらいのクランが、ただのネームド・ユーザーにそれほどしがみつくなんて。」

「それが、君も知っているだろうが、彼らは面付を大切に思っているからね。」

「……」


プロフェッサーはふと気づき、うなずいた。


「…裏切り者は許さず最後まで追って処断する。」

「それだよ。」


マリア·チャイルドとしては厄介なことになってしまった。

苦労して得たネームド・ユーザーをあきらめなければならない状況。


頭を絞り出した末、フリーランサー請負業者の中でも最も安全性が高く実績のあるプロフェッサーに彼女を預けに来たのだった。


「それは俺としても困ることですね。」

「頼む!クリムゾン·フードの奴ら、きっと彼女がフリーになった瞬間に自分たちが連れて行こうとするか、断ったら攻め続けてレベルを初期化させてしまうつもりだ!」

「…私とは関係ないことです。」

「そ、そこを何とか…!」


プロフェッサーは落ち着いて首を横に振った。

事情は気の毒だが、こんな依頼は受けられなかった。

この仕事を受け入れていたら、プロフェッサーの原則の一つである機械的中立にひびが入るはずだ。


「俺は機械的中立に基づいて仕事をするフリーランス請負業者です。」

「ううっ…!」

「ですから、もしシスター・グレーブがここに雇われるとしたら、彼女もここのルールを守らなければならないでしょう。」


プロフェッサーは幹部に指を向け、


「依頼を受けるなら、あなたたちにも銃口を向けなければならないんだ。」

「……!」

「シスター・グレイブにその条件でも働く覚悟ができていれば…受け入れることを考慮してみましょう。」


だらだらとした幹部の後ろ姿を眺めながら、プロフェッサーはため息をついた。


「今年は魔が挟まったのか、なぜこんなに頭の痛いことが次々と起きるのか…」


一人で働くという原則が破られただけでは足りず、待っていたかのようにこんなに人がこじれるなんて。


首を横に振りながら改めて念を押した.

シャドウ以外にこれ以上請負業者を増やさないことに。

プロフェッサーは、このような自分の頑固さがすぐに壊れることを知らなかった。


*


また一週間が過ぎた。

プロフェッサーとシャドウはそれぞれ別の依頼を受けて出入りしていた。

シャドウは機関短銃が手に当ったのか、練習を続けた末に両手に機関短銃を1丁ずつ持って使うスキルまで学んで使っていた。


轟龍会の幹部たちから彼女を再び行かせてほしいという要請が来たが、プロフェッサーは彼女が個人資格で来たのだから彼女自身の医師に出るのでなければどうするつもりはないという言葉で振り切った。


別に彼女が気に入ったからではなく、それがプロフェッサーの原則だったから。


ふと聞こえてきた呼び鈴の音に首を回して出入り口側を眺めると、キューティクルが玄関のドアを開けてくれるのが見えた。


「いらっしゃいませ…え?!」


ドアが開くと同時に崩れるように倒れる人はあちこちに銃傷を負っていた。

プロフェッサーはその人が着た服を見て、それが誰なのかすぐに気づいた。


「シスター、グレイブ…!」


- つつく-

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