第45話 加害者

「ところで、友子は?」


「車で待ってるわよ。突き飛ばされた時に左手を捻ってね。全治二週間ですって。」


「………………………………………やっぱり、介入した方が良かったな。あの暴行魔はどうなった?」


「うん、私の判断ミスね。アイツは暴行と銃刀法違反の現行犯で連れてかれたわ。連れの奴らもナイフと怪しい錠剤と『はっぱ』を持ってたから一緒に連れてかれたわ。詳しくは粕谷さんからね。」


「長くなりますので、車の中でお話ししますね。」


「うん、わかった。僕のスマホとバッグ押収されてるから取り返してきてくれるかな?話の前に、先に食事にしようか。咲良、個室取れるところ予約しといて。」


「ええ、わかっ…………………………」


階段を降りきり、通路を歩きもう一度階段を登りきったところに生活安全課が有り、ここから先は一般人も入れる場所に変わる寸前に、若い女が何かを手に駆け寄ってきて、


「おいおい、何で獲物を手にしてここまで来れるんだよ?」


粕谷さんにだけ聞こえるように小声で呟いてから、わざと大声で叫ぶ。


「咲良っ、録画開始っ!おいっ、お前、何を持っているっ!」


さすが、警察署内の最前線。女を取り押さえるべく動き出した何人かを確認したが間に合いそうにないな。

女が獲物を手に振りかぶった瞬間に駆け寄って足を引っ掛けて転ばせてから飛び退いて距離を取ってみる。

彼女が手にしていたのはガラス瓶で、中の液体はまあ想像通りの物だろう。

そして、その中身は勢いよく彼女の頭から首にかけて降り掛かった。


少し間をおいて、状況を確認すべく遠巻きに囲んだ警官たちが様子見するのに任せて少し下がったところで、女の情けない悲鳴からの絶叫が鳴り響いた。


「………………………………ホントに、情けないヤツだな。他人に害を成そうとするからには、同じ目に合う覚悟くらい無いのかよ?」


「………………………………無いんでしょうね。」


「………………………………そうね、無さそうよね。」


まあ、そんな覚悟は、無いんだろうな。


情けない悲鳴と叫び声からの啜り泣き。

お〜い、そこの警官達!早く処置してやらないとその子は二度と見られないような化け物顔になってしまうぞ?

断っとくが、俺達のせいじゃないからな!

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