第26話 楽しい
藤城さんともう一度身体を合わせて楽しく過ごして、時間ギリギリに部屋を出て、一度荷物を車に積んでから女将に挨拶を。
「母さん、また来週ね。」
「ええ、また『母さん』と呼んでくれるなんて嬉しいわ。友子さんも来週から宜しくね?」
「はい、宜しくお願いします。」
「じゃ、由美香にも宜しく!」
「あの子ったら、顔も出さないなんて。」
「忙しいのかな?じゃ!」
車を出して、ほっと溜息を一つ。
「どうしたのかな?溜息なんて?由美香さんになんか思うところでも出来たのかな?」
「藤城さんのせいでもあるよ?ゴミ箱片付けさせてくれなかったから。」
「あら、お泊りなんだからそれくらい当たり前でしょ?」
「片付けるのは由美香しかいないんだから、あからさま過ぎでしょ。」
「まあ、あれを見て悔しいと思ってくれればな〜と?」
「どうゆう意味かな?」
ゴミ箱の使用済みのコンドームを見て『悔しい』?
「あれを見て何とも思わなければ、私の『敵』ではないって事。」
「思うところが有ったら?」
「素直に私の『ライバル』だと認めるかな?」
「……………女の子の考えることは、よくわからないな。怖いね?」
「わからないほうが、良いわよ?そうよ、女の子は怖いのよ。」
「……………ところで、お土産買うから寄り道するからね。美味しいお煎餅屋さんがあるんだ。」
「へぇ〜、誰にお土産かな?」
「今回の件でお世話になる弁護士事務と僕のマンションのコンシェルジュと『お隣さん』と自分に。」
バイパス道路を走らせて、有名な温泉街の駅前を抜けてしばらく走ると、観光客向けのお土産屋が連なる旧街道に出る。
そこを抜けて更に走ると新し目のお店が連なる一角にお目当てのお店がある。
製造直売の出来立て米菓が売りのこの店は、提携の有名洋菓子店の日持ちする菓子も買えるのでいつも賑わっていた。
備え付けの籠二つにいっぱいに積んでレジに並ぶと、
「えっ、こんなに買うんだ?」
「これでも今日は少ないほうだよ?」
会計しながら返事をすると、奥にある出来立ておかきを指さしながら、
「あれ、買って来てもいいかな?」
「どうぞ〜、昨日渡したポシェットの分で足りるよね?」
「うん、行ってくるね!」
嬉しそうに駆け出す彼女を見ながら、お子様かよと思いながら、あ〜、こんな楽しいデートは初めてかもと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます