第15話 露天風呂へ

外売店でコーヒーを2つ買って、一緒に買ったポテトと唐揚げをかじりながら、ご機嫌な助手席の藤城さんを横目に見つつ、溜息が出そうになるのを我慢しながら車を走らせる。


「…………………ご機嫌だね?」


「そうね、ちょっと嬉しかったかな?」


「具体的に、どんな事が嬉しかったのかな?」


「ん〜、内緒で!」


まさか、ポテトと唐揚げとコーヒーが嬉しかったなんて事は無いよね?


道の駅から走らせること暫し、山道を抜けると温泉街が見えてくる。

平家の落人伝説が有る里を横目に、脇道に入り少し下った先に目的のお宿がある。


少し開けた谷沿いにあるその宿は、観光地として有名になった温泉街とは違った趣があると思う。


駐車場に車を止めて、藤城さんと僕の鞄を手に玄関をくぐった。


「おそ〜いっ、なんで今日は………………」


やっぱり、そうなるよね?

予想通り、絶句する『彼女』。

藤城さんを睨みつける『彼女』に、


「今日は『呼ばれた』んじゃぁ無いからね?『お客様』だからね。」


無言の彼女に荷物を渡し、


「先に提携露天風呂行ってくるから、部屋へ運んでおいてね?」


不満そうな彼女を無視して、あらかじめ用意しておいた『露天風呂セット』を手に玄関前の階段を降り始めた。


僕の後に続く藤城さんが、


「さっきの彼女は、何か訳ありかな?」


「うん、お察しの通り君を『ライバル』だと思ってるよ?」


「へぇ〜、そう見られるのはちょっと嬉しいかも。」


「それよりも、これから行く露天風呂は貸し切りだからね?」


「……………ふぇえっ?」

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