第44話 モブ顔って、俺のことかな?
『咲良、何の騒ぎだ?』
骨伝導マイクとイヤホンで、咲良と通話を試みる。
『あ〜、友子がコイツに絡まれたのよ。』
視線で対象者を指し示して、僕にニヤリと笑いかける咲良。
『介入しようか?』
『あなたは目立たない方が良さそうね。』
『ソイツが友子に好意を持ってるとかかな?』
『そうみたい。』
騒ぎの中心に近づくにつれて、ヒステリックな叫びが聞こえてくる。
「…………………………なんであんなモブ顔な奴と親しそうにしてるんだよっ!」
…………………………モブ顔って、俺のことかな?悪かったね。アンタに言われたくないぞ?
咲良に来るなとハンドサインされてしまったので、少し下がって距離を取った。
万一に備えて、ギリギリの間合いで。
男が激昂したのか、突然友子を突き飛ばした所で学内の警備員が駆けつけて加害学生をあっという間に制圧して転がしてますます騒ぎが拡大していく。
咲良を見ると、問題なしとハンドサインを送られてしまったので飛び出すのは何とか我慢したけど。
警備員の応援が来た所で抑え込みが緩んだのだろう。
男の右手が後ろに廻されたのが見えた瞬間に駆け出した俺は一気に詰め寄ってソレ目掛けて右足を振り抜いた。
奴の右手首が砕ける鈍い音と、情けない叫び声と、宙を舞う折り畳みナイフ。
あ〜、やっちまったか〜?
咄嗟にだから、仕方ないよね?
咲良に、睨まれてしまった。
暫し後で、地元警察の取調室。
最初に対応した警察官は横柄な態度だったけど、途中交代した階級の高そうな私服は丁寧な対応だった。
まあ、聞かれる内容は変わらないんだけどな。
何度も何度も、同じ事繰り返し聞くなよ!飽きてきたぞ?
「釈放だ、出ろ!」
表が騒がしくなったと思ったら、急に態度が変わった私服に告げられた。
釈放って、何だよ?犯人扱いかよ!
ここまで、3時間強。
水も飲ませて貰えなかったぞ。
それどころか、昼も跨いでるんだぞ!
腹減った。
取調室を出て廊下を見渡すと、咲良と粕谷弁護士が待っていた。
「遅いよ?」
「坊っちゃん、すみません。防犯カメラの角度が悪くて解析に手間取ってました。」
「その様子だと、二人とも昼飯まだだろ?行こうか。あと、坊っちゃんはやめろ!」
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