第4話 道の駅 『昭和』 ③

フードコートで一番早く用意できる豚汁モーニングセットを注文し受け取ったあと、窓際のカウンターで頂き始めた。

豚汁と、パリパリ海苔のおにぎり2つと、付け合せのポテトサラダとお漬物。

今日も、美味しい!

半分程食べ進めて、ひと息ついてお茶を啜りながら外を眺める。


朝一番は、野菜の詰め合わせの特売があるのでそこそこ並んでいるようです。

列の最後尾あたりに先程の彼女が座っているパラソルがあり、まだその位置でスマホを操作していた。

彼女の後ろには、男の僕でも避けたくなるような不潔な雰囲気の青シャツの男が居て、パラソルの近くを一巡りした後に立ち去っていった。


あ〜、そういうことかな〜?と思いながら残りを食べ終えて、関わり合いにならないように立ち去るか〜と思いながら食器を返した。


さあ、行きますか?

車まで戻るには、彼女の後ろを通らなければならない。

遠回りも出来るけど、そこまで気にすることもないしなと思いながら…………


『………グゥ~ッ…………』


通り過ぎようとした、その瞬間、俯いた彼女から、かなり、大きな、派手な、音が、鳴り響いて、一番近くにいた僕は、無視できなくて……………………

吹き出して、笑ってしまった。

それは、彼女の、お腹が、鳴った音だった。


振り向いた彼女に睨まれた僕は、内心溜息をつきつつ、諦めて、彼女に声を掛けた。


「あれ?藤城さんだよね?」


白々しく声を掛けた僕を睨みながら彼女は、


「…………………………っ誰っ?」


「あ〜、悲しいなぁ、これでわかるかな?」


伊達眼鏡をショルダーバッグから取り出して掛けて、先程セットし直した髪をクシャクシャにして正面から見下ろした。


「え?綾本君?」


「そうだよ、わからなかった?」


無言で頷く彼女。


「どうしたの〜、一人?座っていいかな?」


まるでナンパだなと思いながら、お節介を承知で話しかける。

戸惑った様子ながらも頷いてくれたので、正面に座ってみた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る