第5話 道の駅 『昭和』 ④

「ホント、偶然だね。どうしたの〜?一人だよね?僕も一人でサイクリングコースをひとっ走りしてきたとこなんだ〜。」


普段と違い、化粧っ気の薄い、眠たげな、一目で訳アリとわかりそうなくたびれた装いの彼女。


「……………………綾本君、学校と雰囲気が全然違うね?」


答え辛いのだろう事だからか、全く関係のない問いが返ってきた。


「う〜ん、どちらかというと、コッチが本当の自分かな?」


敢えて突っ込まずに応えた僕の返事に被せるように、再び彼女のお腹が鳴る音が響く。

恥ずかしそうな、藤城さん。


「行こっか、奢るよ?」


お節介かなと思いながら僕は立ち上がり、彼女の左側に進み右手を差し出した。


無言で固まったままの藤城さん。

構わずに、強引に彼女の左手を取って立たせて、半ば無理矢理フードコートまで引きずって行く。

あっ、手を握るとセクハラになるかな?不味かったかな?

藤城さんは特に抵抗することもなく、手を振りほどこうとするような事もなく、されるがままに僕に手を握られて歩いて、テーブルに着いてくれた。


「食べられない物、ある?無ければ豚汁モーニングセットがお勧めだよ?温まるよ!」


無言で頷いてくれたので、券売機でチケットを買って注文カウンターへ。

僕は、当然、お腹いっぱいなのでホットコーヒーだけね。


彼女の目の前に、美味しそうな湯気をたてるトレーを置いて、


「さあ、どうぞ遠慮なく!」


藤城さんは、トレーを見つめてしばらくためらった後に、食べ始めてくれた。


食べ終わるまで、コーヒーを飲みながら、ソッポを向きながら、待った。


「………ごちそうさまでした。ありがとう。」


「どういたしまして。落ち着いた?」


「はい。」


「お腹が空くと、碌なこと考えないからね。」


「…………………………どういう事?」


「ごめんね、見るつもりはなかったんだけどね……………………」


「え?何を………………………………」


「僕、視力良すぎてさ、さっきすれ違った時に見えちゃったんだよね、『ゆう子ハタチです!』って画面が。藤城友子ふじしろともこさん?」


「…………………………………………」


明らかに、何かやらかしたときのように、動揺する藤城さん。


「良かったら、話、聞くよ?その様子じゃ、訳ありでしょ?お節介かもしれないけどね。」

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