第23話 中居見習い

朝目覚めると、隣に寝ていたはずの藤城さんがいなかった。

まだ6時前、表は薄暗い。

早起きして朝風呂行ったのかな?と思いながら僕も行くか〜と用意して手拭いを持ち廊下を歩いていると、若女将である由美香と一緒に見慣れぬ仲居さんが掃除をしていた。


「おはよ〜?ってあれ!なんで!!」


「おはようございます、綾本君。」


「……………ソノカッコウハ、ドウイウコトカナ?藤城サン?」


「訳あって、手伝ってま〜す。」


「……………イミガワカラナインデスケド?」


「若女将がおもてなししてくれないから、私が自分でやろうかな〜と?」


嬉しそうに話す藤城さん。

ますます意味がわからないんですけど!


「……………由美香サン?コレ、ドウナッテイルノカナ?」


「……………私にも良くわからないのよ?

いつの間にかこうなってしまって?」


苦笑いの由美香。


「……………いつの間にかって?なんで?藤城さんは?」


「面白そうだし、由美香さんと仲良くなりたかったし。」


面白いのかなぁ?まあ、僕も楽しく働いていたけど。


「……………わかったから、朝御飯は一緒に食べようね?僕は朝風呂済ませてくるからね。」


「「行ってらっしゃいませ!!」」


なんで声が揃ってるんだろう?

あんなに仲が悪かったのに。

不思議でしょうがないんですけど!

女将がいたので、


「母さん、由美香と藤城さんが…………」


「ええ、面白そうだから許可したのよね?

慌てなくても大丈夫だから。

でも、『母さん』なんて久しぶりに言われたわね?嬉しいわよ。」


「面白そうだから?何でまた……………」


「来週から週末は通ってくれるそうよ?交通費は出すけど特急運賃は出せないし、給金はこちらの最低賃金の時給しか出せないと伝えたんだけどね?」


「いや、それなら僕が一緒に来るけど……って最初からそのつもりですか?」


「あ〜、わかっちゃうわよね〜、お願いね?

彼女、早速役立ってるわよ。経験者では無さそうだけど勘が良いとゆうか、飲み込みも早いし即戦力かもね。」


「……………何時から働かせてるんですか?」


「人聞きの悪い。4時前から私達と一緒によ。」


「………………程々にお願いしますね?」


「それはどうかしらね。藤城さんのやる気次第だわね。

それよりも、昨夜は彼女と『頑張った』みたいだけど、やっと由美香の事は吹っ切れたみたいね?」


「っ、彼女が話したんですか?恥ずかしくなる様な事、言わないで下さい!」


「ええ、聞いたわよ。いいじゃないですか?

私はあなたの『母さん』ですからね?あなたは息子同然ですから。

若いって、良いわね。」


「母さんだって、まだまだ若いでしょう?

『父さん』が隠れてコッソリ来てるの、知ってますよ?」


「あら、やだ、知ってたの?困っちゃうわね。」


「……………やっぱり恥ずかしいから、この話はやめましょう。」

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