第47話 帰って、いいんですよね?

「…………………………帰って、いいんですよね?」


「いや、もう少し、付き合っていただきます。」


粕谷さんが連れてきた、いかにも立場が偉そうな男性が、取調官の代わりに答えて。


「…………………………それって、容疑者としてでしょうか?」


「いえ、参考人として、お答えいただきたきことがありまして。」


「弁護士を呼ぶように要請しましたが、無視されたので拒否します。テロリスト呼ばわりされましたしね。最初に録画録音するように要請したのも無視されてますし。」


「すぐに済みますので、ご協力願います。」


「何と言われようとも、拒否は変わりません。先の取り調べから、食事はおろか水分補給の要求も無視されましたからね。トイレにも一度も行かせてもらえてませんでしたから…………」


拒否回答している最中に、何人かのドタバタとやかましい足音が聞こえてきたと思ったら、ソイツよりも偉そうな制服警官が飛び込んできて、


「おいっ、コイツを黙らせろっ!」


コイツとは何だ、コイツって?

まあ、最初から音声を録音だけでなく同時配信してたからな。

やっと誰かが気が付いたんだろう。


「とにかく、身柄拘束の根拠を示していただきましょうか。返答によっては、それなりの対応をさせていただきますから。」


粕谷さんが尋ねてもまともな答えが返ってこなかったので帰ろうと思うんだけど、入口はおろか僕の掛けている椅子まわりまで駆けつけた警官に囲まれてしまったから無理に出ようとすると身体が触れただけで不当逮捕されかねないから、どうしようかな?


「この警察署はどうなっているのですか?ここからは録画させてもらいます。よろしいですね、そこをどいてもらえますか?」


僕のズボンの裾の内側の隠しポケットから小型端末を態とらしく取り出して警官達に見せつけたら、やっと道を空けてくれて出られそうになったけどこれからどうしてくれようか。

画面の通知件数がとんでもない数字を示していたのでタップすると、音声のみの同時配信にも関わらずとんでもない閲覧件数になっていた。

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