第31話 えっ、社長って?

「今日もお客様連れてきたよ〜っ!」


えっ?なにっ?どういう事なのよっ!!

専門店街にある、高級ランジェリーショップに躊躇いもなく入っていくのを呆然と眺めながら入口に佇むと……………


「……………社長!用が有っても来ないでくださいとあれほど言ったじゃないですか!

他のお客様が入り辛くなるんですから!!」


「花室さん?『用が有っても』来れなければ、僕はいつ来れば良いんだよ!」


「二度とお店には来ないでください!」


「僕が連れてきたお客様は、皆常連様に成ってるじゃないか!」


「それでも!御新規様が入りづらくなるんです!!」


「花室さん!声が大きいから!!」


「社長のせいでしょうが!」


「……………藤城さん、ごめんね?一人で選んでくれるかな?あ〜、今日は店長がいる日なんだ。運が悪かったな〜。」


意味がわからない!

社長って?

しかも、花室さんが店長?


「あれ?もしかして、藤城さん?」


「そう。あの〜、花室さん?私、状況がよくわからないんですけど?」


何で同期の花室さんがここに居て、しかも店長?

いや、それよりも、綾本君がランジェリーショップの社長って……………


「藤城さん、お客様って事で良いのよね?」


「……………はい、訳ありで着る物全部無くしてしまって……………」


「花室さん、藤城さんにとりあえず一週間分の下……………」


「社長はあっち行って!藤城さんに聞くから!!」


野良犬でも追い払うように、追い出されてしまった。


「……………この上のフロアーのフードコートで待ってるから……………

花室さん、支払いは後で……………

これ預かってくれるかな?

僕が一人で持ってると『怪しい』から?」


綾本君は両手に持った紙袋を入口のカウンターに置くと、寂しそうに出て行ってしまった。

私、この後、どうすれば良いのかな?

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