第20話 お客様だからね?

女将と事務室に入ると、若女将が待っていた。

あ〜、いないでくれた方が良かったのにと本気で思った。

若女将は僕たちを睨み付けた後、そっぽを向いてから下を向いた。


「さて、何から話しましょうかね?」


ソファーに掛けた僕たちを見回したあとに女将が呟く。


「僕からは、『お客様』としての対応をお願いするだけですね。今日はプライベートで来ていますので。」


「……………彰人君?私とゆうものがありながら、何よ!その子はどうゆうことなの!?」


「由美香、もう終わった話なんだからね?」


不貞腐れながら、藤城さんを睨み続ける。


女将が溜息をつきながら、


「もう謝る気は無さそうね。藤城さんには、私がお詫び申し上げます。ごめんなさいね?」


「いえ、気にしてませんから。お風呂も食事も良かったですよ。若女将は最低でしたけど!」


「藤城さん、少しキツイよ?」


「あら、これくらいで終わらせるなら優しいのではないでしょうか、ねえ女将さん?」


「……………そうね、お二人には改めてお詫びの機会を作ります。」


「また来ても良いんですか?大丈夫ですか?」


「ええ、大歓迎よ。この辺は若い子が少なくて由美香とも仲良くしてくれればと思うんだけど。」


「お母さん!無理だから!!」


「貴方は謝る気が無いのなら黙ってなさい。彰人君も、今日の所はこれで収めてくれるかな?」


「藤城さんが良ければ終わらせるつもりでしたから、良いですよ。」


「ありがとうね、二人ともゆっくりとしていってね。」


「じゃ、藤城さん、行こうか。」


手を繋いでから二人で事務室を出て、部屋へ戻ってからお風呂へ行く準備を。


「綾本君、上がったら色々聞きますからね?」


「僕も、色々聞くからね!」


「そう、楽しみにしてるわ。さあ、行きましょうか。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る