第24話 諦めてないんだからね

朝食は、食事処で。

藤城さんは、結局部屋へは戻って来なかった。

朝食は一緒にって言ったのに、今頃何をしているんだろうか?


7時半、指定された席について周りを見渡す。

昨日見た外国人客の可愛い天使たちも、おとなしく椅子に座っている。

初めて見るであろう和食の朝食膳に、目を輝かせて配膳を見守っていた。


配膳しているのは、呆れた事に藤城さんだった。

更には、天使達に一品ずつ説明までしていた。


「……………あれ、フランス語だし?」


僕も少しはわかるけど、和食の説明までは無理だから。


僕以外の配膳が終わって由美香と何やら話していた藤城さんは、調理場へ戻っていった。


「おまたせ〜!友子は着替えたらすぐ戻って来るから、それから用意させてもらうね。」


由美香が僕のテーブル正面に掛けて、明るく話しかけてきた。


「もう『友子』呼びなんだ。何があったのか、教えてくれるかな?」


「長くなるから、また今度ね。あと、私はまだ彰人君を諦めてないんだからね。」


「ん〜、わかったけど藤城さんと仲良くしてくれるんだ?」


「それは、これから決めるから。彼女にも、諦めてないことは言ってあるからね。じゃ、またね。」


入れ替わるように藤城さんが浴衣に着替えて戻って来たので、


「おかえり〜?って言うのも何か変だけど。」


「んっ、ただいま〜?」


「楽しそうだね?後で詳しく聞かせてもらうからね。由美香は『また今度ね』って教えてくれなかったから。」


「そっか〜、じゃぁ私も教えられないな〜、女同士のナイショ話もあったからね。」


「そっか〜、わかった。仲良くなってくれただけでも嬉しいし。」


「仲良くなんかないわよ。むしろ、敵であることがはっきりしたからね?」


「敵?」


「そう、『敵』よ。彼女、『あの事』知ってたわよ。戸籍上では貴方と結婚しても問題ない事もね。」


「……………『敵』って思うってことは、藤城さんは僕と結婚しても良いと思ってくれてるんだ。」


失敗したという表情をした彼女の後ろから、


「お待たせしました〜」


由美香がニコニコしながら僕達のテーブルに配膳を始めたのだった。


お前、絶対に、今の話を聞いていただろう。

この後、僕はどんな態度をとればいいのかな?

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