変わった国、変わらない国

箱が喋っている....恐らく金属性の箱が......。

少し戸惑い、少しウキウキしているのは、

銀の髪にパステルピンクの瞳の女性。

名はシュネー...泳いで島に渡る旅人だ。

ところで、普通に聞き取れる言語だ...。

高さ50cmくらいの、

その箱のひとつに話しかける。

「どうも...おはなしできます?」

無礼なめているのかね、おはなしぐらいできらい!』

「すみませんほんと...で、この国...でいいのかな?色々聞きたいんで...」

『聞きたいのか?そうか...この国の文明は100年前から止まっている...それだけさ....。それ以外なんにも無いよ』

「なんにもか?」

『そう、なんにも....そこから働かなくてもいいし、お金に困ることも無い...楽しみは話す事だけ』

「へぇ....てことはパンは無いのか?」

『パン?あるけど次元が違うんで君は食べられない...』

「あー....了解了解.......」

『外の国は今頃恐ろしい技術を蓄えているだろう...いつ襲われるか....襲われて勝てるのか....100年経っても心配だよ....眠れないって事は無いがな...』

「....100歳なんだ...」

『そうだな...生きるだけ生きたら好きな時にポックリ逝ってもいいんだがね....。』

この島は確かに時が止まっていた....

文明が太古....その太古から、

とんでもない技術力を持っていた.....

何故こうも交友が無いのか....。

「直ぐ近くの海岸に町がありますけど...あれとの関係って分かるのかい?」

『もちろんもちろん....あれは僕が20....丁度ハタチだったころで、未曾有の大災害がこの国を襲った...その時に大陸が欠けて島になった....偉い政治家があれは方舟はこぶねだ!と騒ぎ立てて、何人か....ワタシもだが従ってついていった....だが、その政治家を嫌ったもう一人はあれは危険だ!と.....まぁ普通に考えれば...これを方舟だって考えるのは可笑しいかもしれんがね。そう行って分裂したんだ....。その偉い二人が互いに互いを罵り合ううちに大陸と島の仲もボロボロ、それから交わりは一切無くなってしまった訳さ.....』

「へぇ....分かりました....ありがとうございました....長生き....してくださいよ?」

『いうに及ばず......あと二百年は生きるよ!....大陸の方に好きな人がいるから....そのぐらいになったら会いに行くよ!』

そうしてシュネーは島を後にした。

行きっと同じペースで戻ってくると、

真っすぐ宿でシャワーを浴びた....

そういえばあの島に上陸してから

ずっとビショビショだったな......。

彼女はそんな事を考えて寝た。

荷物は当然しっかり無事だった。


 そうして翌日、起きて早々図書館へ向かう。

調べるのはこの国の歴史....

だが最も古い情報の本を開いても...

100年前の記録なぞ残されてはいなかった。

遠くても50年前....。

本来の大陸の国を知っている者すら、

今ではあのキューブ達だけなのだ。

だが、どこか寂れてはいたし、

確かに箱以外何もなかった.....

こちら側の印象というものも、

あながち間違いではなかったのだろう。

奥底のイメージというものだけは....

何故やら変わらなかった...

しかし、あちら側のイメージは、

大きく的外れに変わっていた....。

完成したところで満足し、

進もう...と変わる意思がなければ、

弱くても変わろうとする者に何か劣る。

逆もまた然り、

変わろうとしても....

質があって変わらない礎が無いのなら、

大成する事無く崩れ去るだろう。

あの変わらない島と、

この変わってしまった海岸が、

再びいがみ合ってでも繋がる時が来るのか...

いや、来まいと...聞いたことは胸に閉まった。

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