湖と泉とコインの国
ちゃぽん....しゅううううううう.....。
...と一枚の金貨をその泉は喰った。
シュネーという旅人がゐた。
纏めた銀髪はキラッキラで、
めっちゃめちゃに美人で、
パステルピンクの瞳は100カラットの
そんな彼女が、
特に何も無い平凡な平原を平然と歩いていた。
とは言っても次の国の片鱗が見えてきた。
粘土質な建物が見える。
少しだけ歩度を速めた。
この国は軽く柵がある程度で、
入国手続き用の門も無い。
有るには有るがただのアーチだ。
こういう場合、堂々と侵入すれば問題無い。
ドーナツ状のメインストリートに店が並び、
そこから脇道で平屋が建ち並ぶ。
そのドーナツが抱えるのは一つの湖。
少し低くなった地形に
かなり濃い紅柿色をした湖。
見るからに危なそうな臭いがプンプンする。
近づいてみると物理的にもプンプンする。
確実に触れてはいけないだろう...
というか柵が建てられており、
ヒトは入れない様になっている。
...と、おや......。
湖と同じような禍々しい紅柿の泉があり、
目を凝らして見ると、何かのコインがある。
金属だと思う、恐らく....。
湖のすぐ隣に作られた人工的な泉に、
そっと少しだけ溜まっている。
そこに行くための階段は、
兵士が見守りに付いている。
一応あれが何か聞いてみようと思う...
....が、それはまた明日だ。
今日は取り敢えず宿を探そう。
飲食店と雑貨屋が並び定期的に宿屋があり、
いい感じな宿を探しにぐるりと一周。
安いし設備良さげな一軒を見つけ投宿す....。
「つめっ....」
シャワーは温かくはならないらしい。
「こんちきそー...」
我慢して無事乗り切った。
やはりバスローブだけじゃ寒かったもので、
羽織をしっかり装備し上から毛布達磨に...。
人が居そうな場所...に見当を付けて
明日ゆっくり向かおう。
そんでもーって話を聞こう...。
ゆっくり後ろに倒れてそのまま寝た。
日が昇り湖が柿色を取り戻す。
プールの様な匂いが街中に漂う、
この世界には無いが....。
そういえばこの国の人は口元を隠している...
やはりこのガスは割と危ないかもしれない。
一応同じように布を巻いて防護する。
店主に聞いてみようか...
「こんにちは、旅の者です。この湖について何か面白いこと知りません?」
『これはこれはこんにちは...湖についてかい?この湖はね"竜の血の泉"と呼ばれててね、はるか昔100年前に突如湧き出したんだよね。』
「へぇ...」
『それで一夜で街は湖に沈んだんだよね。そう、その水に触れると骨でも金であろうと...ほぼ全ての金属類は融けて無くなっちまうからイケねー...。』
「...でもコインが入った泉が中にありましたよ?」
『あぁ!あれはね王の泉だよ...!あの中のコイン...というか貨幣なんだがね?観光客が貨幣を投げ込むんだが、その貨幣の持ち主が選ばれし者ならば...融けない!ってものだ!旅人の姉貴もどうだい?柵の上から放り入れるんだ。』
「ふーむ...やってみるか?」
『実はね...必勝法あるんだけどね...面白みが減っちゃうもんでね...教えn』
「大丈夫大丈夫...知ってるよ?あれ..."王水"だろう?銀貨を入れれば融けない。」
『おっと...知ってたかぁ...そう、あれは"王水"...。この国は無限に"王水"が湧き出る不思議な国....そしてあの"王の泉"はこの国特有の効率的な貯金箱さ....。あ、他の人には言わないヨウニネ?』
「誰が言いますかい...で...貯金箱って?それは分からン」
『いいですよ?あと、今から言うのは独り言ですから忘れてくださいね?金が融けた王水を国王直属の役人が掬って集めるんです。それにちょっとした錬金術を使うとあら不思議、金に還元されるのです。それも純金にね....。この国の王はそれを売ってこの国の軽いインフラを整備....。だから私たち国民、税払わなくて良いんですね...。王立の病院は国民タダなんで嬉しいですね。』
「なんでそんな知ってんの?」
『独り言って言ったでしょー。ま、私が考えたからね。ほら行った行ったですよ。』
「はーい...どうもありがとう...腹いせに金貨ぶち込んでおくわ...とこれ良いかい?」
『おおきに〜。』
そうしてシュネーは1つ、
丸いドーナツを買って立ち去った。
宣言通り、残り1枚の金貨を泉に放り入れて....
ちゃぽん....しゅううううううう.....。
「フフッ....下手な出費になったなぁ....」
まだ日は真上だ。
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