亜ぐ刻旅日:叙

 銀の髪をタオルに包んだ...

そんな彼女の名はシュネー...旅人である。

美味しそうな匂いが解れた身体に刺さる...。

ふわふわ、とまではいかないけども....

手馴れた雰囲気の所謂いわゆる、オムライス。

久々にほかのヒトと食べる食事は...

やっぱり絶品に感じる....。

そういう考えなのは私だけかもしれない...が

目の前の少女は幸せそうに見えた。

特に喋る....

というほどの事が、互いに無いらしく、

静かな晩餐とはなったが....

それでも、その幸せそうな少女の表情に、

シュネーはゆるり惹き込まれた。

この暖かみが続いてくれればいい....が.....。


 日が昇る、そしてふと思った....

このまま一人で旅を続けて良いのだろうか。

そう思った...

一人の方が取り回しも良いし、

気を使わなくても済む....、

ただ本当にそう頭にぎっただけだが、

だが、神かなにかに...

そう言われている気がして........。

昨夜感じた暖かみをもう少しでもいいから、

もう少し触れ続けてみたい....という、

告白じみた表現は当然付けられず、

ただシンプルに言ってしまった。

「一緒に旅に出てみないか」

その少女は驚いたような表情を見せると、

そこからしばし考えていた。

そして、

「...,,,,,いきます....でも....。」


 昼間は今宵の為の作戦会議で終わった...

何故、作戦会議を開かねばならないか...

この国...どうやら住民は出れないらしい。

手続きとかで出る事も出来ない上、

無断出国したのなら追われ続けるとの事。

確かに、あのブラックな労働感ある企業を、

他国に知られれば...特に魔法協会など、

GUILDギルド嫌いの組織に知られてしまえば....

タダで黙ってはいないだろう....

好奇と見なして色々ぶつけて来るだろう...。

連鎖的に企業は融資先であるGUILDに、

あっという間に見限られてしまうだろう...。

なので...今宵へと決まったのだ....。

そのときが来るまでに作戦プランを組む。

....ん?あれは....

「なー、これ使えないかな?」

ほろを被ったそれを捲って見る...。

「そ、それはッ!!」

ばさ...

「いいじゃん.....これ...」

ちょっと沈黙。

「そういえばなんでこれを売ってくれなかったのかな?」

「売り物じゃ....ないですもの。」

そこにあるのは

曇った翠の光沢を放つ古代異装こだいいそう

売ればもちろん高く売れるだろう...

旅人は笑う。

「じゃあ」

時には旅人らしく貪欲に行こうか.....


 山道が一瞬照らされると共に

旅人の訪れた家は、

人殺しと書かれた店は、薄く燃え始めた。

黒い空までもが赤くなる。

それと同時、山を降りる1台の車があった。

すれ違うように馬に乗った

自警団、救護隊、特殊消防隊が山へ突入する。

消防隊は水魔法を用い

速やかに消火に取り掛かる.....

しかし、そのゴミは屋敷はその水を拒んだ。

全くと言っていいほど火は消えない

そして、

消防士達の鼻に肉の焼ける、

焦げた匂いが刺さる。


 関門にて

手荷物の検査が行われている...

「あの山、こりゃ激しく燃えてますねぇ」

『中々消えないようですよ...そういえば貴女、この四輪の古代異装は何処で?』

「あぁ、それか.....濁さず云うと、殺して奪った。まぁ、気にする事はない...君達、御社おんしゃと魔法協会のスペシャルコラボってところだ。そろそろカリカリに焼けてるだろうよ」

『ははは....そりゃ大層な事で、』

「ここは監視カメラは無いのかな?」

『カメラ?貴方は余程マニアックな旅人ですね、この国に来る人なんかカメラより銃の方が大変売れが良いものだから、カメラが何する為の道具か知ってる人など、この国にすら少ないがね....ていうか掘り出して売ってる国がなんでそこまで無知なのか....』

「そうかそうか.....じゃそろそろいいかな?いや、只で通される事は無い。ほら、これ美味しい奴だ、やるよ、有効に使えよ?」

後ろの荷物置きから

目を合わせずに重箱を渡す...

関門守は蓋を少し開けて確認するなり...

『へぇ...ま、特に怪しいモノ、何もないですね"通過賃まんじゅう"頂きましたどうぞ、美味しく頂きますよ』


 まもなく、カリカリに焼けた肉の塊が...

その家から引き出された。

『これでこの山も崩しだな...』

『上層がやったのか?』

『どうだろうな、だが燃えたのも事実、崩したがってたのも事実、どっちにしろ、団地がまた増えるだけだな』


 たたたたったた....

旅人が立ち去ってから....

一枚の金貨をピィンと弾いて...キャッチ。

『まぁ、"おまんじゅう"は幾ら貰っても困らないからね....』

関門守は1人呟く


 赤い光が消えるほどの地平の彼方...

1台の鉄の馬が走っていた。

それは翠色にくすんだ光沢を放つ

不意に歩みを細め、やがて停まった。

「もういいですか...。」

「あぁ...いいよほら、良い宇宙そらだよ?」

煌めく星々...祝福なのか怒号なのか...

取り敢えず今は祝福だと捉えておこう。

「さて...名前は?」

「僕は、ルア.....ルアです!」

「私はシュネー...今後とも。そしてと、師匠って呼んでよ?」

「え?あ、は、はい!」

「あと...お嬢さん、君には銃は早い...撃つなら...これを」

それを、奇妙な箱型の物体を渡すと、

その目に雫が走るのが見て取れた...

そして笑って、

「ありがとう...ございます」と...。

あ、それと....

「お嬢さん、じゃないです。」


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