陽の宝石

「ふっしょ...!」

一人の女性が険しめな山を登っていた...

銀の髪にパステルピンクの瞳、

その瞳孔は猫の様に細く、強い光を防ぐ...

彼女の名はシュネー...旅人だ。

「よっ.....!」

のっし...と慎重に力を込めて登る...

身体能力お化けとかそんなんであっても、

結局の所はヒトはヒト...。

高い所から落ちれば死ぬかもしれない。

"かも"なのは試した事無いからだ...

さて、何故こんな所に居るのか。

ちょうど1時間前だ......


入国して直後、こんな噂を聞いた。


『この山の上に宝石がある』


というもので、その宝石を見に行く事とした。

貰えるものだったら貰いに行きたい...

そうして山登りをする事となった。


 序盤はゆっくりと登る雰囲気ムード...

中盤から頂上にかけて一気に急になる山だ。

山登りする事が度々あるシュネーは、

意外とゆったりとした山より、

崖っぽい山の方が楽だと感じていた...

だからと言ってここでペースを上げるのは、

危険である事に変わりは無いので、

先述の通りゆっくり慎重に登っている。

ちなみに同じ考えの人には会った事がない。

「しゃおらっ!」

ぐいっと登り切り頂上へ...

祠が建てられている...多分これの事だろう。

ここで気付く...宝石...と言っていたが....

恐る恐る覗くと.....抉られたような穴が!

「あちゃぁ」

この穴にはめ込まれていたのだろうか、

祠を残すのみである...。

ガックシと肩を落とし...

気を取り直すと紐を付けた画材を取り出す。

30分程で軽く記録に残すと、

「うし....!」

下山を開始した...。

日が落ちるまでかなり有るので、

此方も例によってスロウな下山である。

岩と岩をしっかり目視...

足場に適していそうなものを選んで確実に...

これを繰り返して無事に緩やか区間まで到着。

ダッシュで降りるのも良いが...

つま先を痛めそうなのでやめた。

たす、たす、たす、たす...

宿まで帰って来た......。

部屋に荷物を置いて、珍しい露天風呂へ。

貸切状態にラッキーと思いつつ、

ざぶぅうんとダイブ...

山での警戒とは正反対に危ない。

頭をぶつけても知らないぞ!

深めの湯の泉から顔を出し一言...

「夕陽が綺麗だ....!」

本心の"宝石見たかった"を惑わす為に、

彼女はそう叫ぶのであった。

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