綻んだ雷

 つかつかつかつかつか....

がっ!

「うわぁ!?っと危ない....」

岩に足を引っ掛け、倒れそうになった女性...。

邪魔だからと後ろで纏めたはずの銀の髪は、

前屈みになった事で視界の中で主張する。

反動を付けて頭を上げ、

その銀の束は元の位置に収まる...

そんな彼女の名はシュネー...旅人である。

一呼吸すると、何も無かったかのように、

再び真っ直ぐ歩き出した....


ブロロロロ...


 シュネーは音を聴くと、

フードを上げ、サングラスを取り出し装着

そうして振り向くと...

二〜三台の大型トラック。

このモデルは模倣品レプリカで間違いない...

別にそのたぐいに詳しいわけでは無かった。

解った理由は単純に見た事があったから、

何を隠そうか、アレはGUILDギルドの車輌だ。

故に顔を隠した...。

今更感は否めないが...

トラックは通り過ぎると...すぐ目の先の

城門へと消えて行ったのだった。

めんどくさくなりそうダナ....

...と心の中で穏やかに独り言ちる。


 入国後、適当な店で食事をしていると...

『大昔の兵器が見つかったんだって...』

『あらヤダーこわーい。』

と耳にする...。

カウンター席に移動し、店主を呼ぶ。

「質問いいかな?旅の者だ...あとシチュードティー御代わり」

店主はコク...と頷き、

暫くして優しく紅茶を置くと、口を開く...

『その兵器とやら...ですね?』

「そうだネ...ギルドの連中が多いもんでさ」

『山に古代異装こだいいそうを掘りに行った輩が居るんですがね...どうも何か見つけてしまったみたいで...』

「で?どんな?」

ワタクシも詳しくは知りませんが、付属の資料を翻訳すると...大規模を破壊出来る恐るべき兵器のようだったそうです...』

「なるほど...有難う」

カップを飲み干しコト...と置き、

美味しかったよ...と添えて出て行った。


 さて、宿だが...人目に付かない、

街の外れの宿に泊まることとした...。

少しばかり神経質な気もするが油断出来ない。

迎撃は楽勝だろうが、その兵器を起動し、

街を守る為に投降せよ...なんて言われたら...

私は従うはずも無いからこの国はおじゃんだ。

上手ーく凌ごう....。

変身魔法とか出来れば楽なのだが、

そんな器用な事、私には難しい。

そうしてそのパステルピンクの瞳を、

まぶたの裏に閉じ入れると...

スー....と気を失った。


 翌日....特に何の変哲もない朝を過ごし、

昼間に街へと出る....とそれは意外...

GUILDが綺麗さっぱり居なくなっていたのだ。

例の兵器を持ち帰ったのだろうか...

それは兎も角好都合。

これで街中堂々と聞き込みが出来る...

聞き込み...って言うと、

何かのジャーナリストみたいだが...。

まぁ似たようなものか。

「こんにちは、いい天気ですね」

『そうですね...何か?』

「察しが良いですネ...旅の者なんですけど、なんでGUILDがいなくなったんでしょうか?」

『あ〜....それはですね...』

「それは?」

『兵器...知ってるでしょう?あれ、書いてあった説明とは打って変わって、本物はただの鉄ゴミだったようですよ?』

「へぇ」

『まったく...お騒がせですよね。古代人..?いたのかわからないですけどね....そんなもの作ろうとして何が楽しいんですかね?ちょっと頭可笑しいですよね』

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