壊滅的な国

我が国は壊滅的被害を受けている!

このままでは壊滅的過ぎて国家存続も危ういので有ります!

壊滅的な我が国を救う為

この私に清きいっぴょウ」.....。


て言う国営ラジオが

持ってきたラジカセから聴こえてくる。

リクエスト曲を聴いていたら急に流れて来たので、適当な所で切ってやった。

心地いい朝を返せ!

と公園でキレているのは

銀の髪を荒々しく後ろで結び、

パステルピンクの瞳に

猫のように細い瞳孔を持った女性。

彼女の名はシュネー。

旅人だ。

さて、静かになったラジカセと

発電機を格納魔法が刷り込まれた

付属のスイッチを押して仕舞い、

国の観光を始める。

ラジカセ本体は古代異装である為、

格納魔法が使えない。


そうだ...。

ここらで古代異装の話をしておこうか...

古代異装とは、この世界の各地に散らばる、

太古の遺産だ。

掘り出された殆どは、

完全状態な上に、稼働状態で発掘される。

そして、何故か....

これはギルドも総力を上げた上で

一切研究の進んでいないコトだが

古代異装のほとんど、特に完全状態の物は

魔力をほぐす特殊な能力を持ち、

魔力のビームをぶつけても溶ける事無く

なんなら、受け止め切った上で

何もなかった様に存在してしまう。

この"魔力の無効化"は、ギルドからすれば

仲の悪い魔法協会に対抗する

唯一無二の手段であり、

魔法協会から見れば、畏怖そのものなのだ。

絶対数や、状態、見た目、様々な面から、

コレクションとしてのジャンルを見出され、

闇市を高額で廻り続けている。

レプリカ品を作り売る事を生業とする

変態共も存在する。

結果本来の古代異装は

オリジナルと呼ばれる様になった。

このラジカセもオリジナルである故に

魔力が分散してしまう格納魔法は使えない。

という訳で持ち運びにこまるわけだ。

かなり長くなってしまった...。


未だ日が昇って間も無いというのに

朝から叫びがコダマしている。

「クソッ!壊滅的すぎる!!小麦の輸入量が0.01%減ってしまったッ!このままではパンの1つも買えなくなってしまう!食料氷河期だぁあああ!!!」

買う事ぐらいはできよう!

オーバーすぎる発言に思わず

突っ込みたくなってしまうが押える。

何故かこの国、

何もかもオーバーに捉えてしまう結界が

自然的に張られてしまっているらしく、

どいつもこいつもこの調子なのだ。


「イヤァッ!何でなのッ!この国も終わりよっ! なんでこんなにもカラスが居るのよ!!2匹で徒党を組んで、生ゴミをぶちまけないでちょうだい!」

「あぁ!!世界も終わってしまう!小銭落としたァァァァ!!」

「ぐあああギザ銅貨見つけたァ───ッ!明日事故るよこれぇぇぇぇ!!」

「お前ッ俺のだよぉおお!」

「かえすううう!!救われたァ!!!」

結局、ラジオを切っても、

この国は静かにならなかった。

心地よい朝が、

壊滅的だッ!

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