草臥れた花

 とある国、とある宿。

一人の旅人が居た。

銀の髪にパステルピンクの瞳、

そして猫のように細い瞳孔を持つ。

彼女の名はシュネー。

今日も今日とて絶賛睡眠中だ。

ばさっ...

「おはよう」

今起きました。

バスバスに暴れた銀の髪を後ろで纏め...

「よいしょ...」

リュックに物を詰めて宿を出る。


 宿を出て少し進むと...

『あの...!貴女もしかして!』

急に話しかけられ思わず身構えてしまう...。

完全に緩んでいたな....と少し反省

警戒レベルを少し下げ、

その突如現れた白いワンピースを着た、

青黒い髪の少女に聞き返す。

「どうしたんだい?」

『貴女って竜人でしょ!そうでしょ!』


 竜人...ヒト、獣人に続く、

第三の二足歩行の知的生命体...。

秀でている点で言えば龍脈に通じている事だ。

龍脈はこの世界を隅々にまで流れる

神秘的概念の命のエネルギー...。

機械への応用は未だ叶わず、

ギルドが古代異装に次いで苦戦する分野だ。

龍脈は命のエネルギー故に、

竜人自体の寿命はかなり長く...

100歳経ってもヒトで言う

14歳レベルの若さ、美貌を保つ事ができる。

....が、世代交代の頻度が少ない為に

繁殖力は高くは無く、絶対数も少ない。

食事も龍脈のエネルギーを利用するので、

あまり食べない...。

そもそも食事すら必要無く何年も過ごせる。

龍人族では無く竜人族だ、ここが紛らわしい。

多少龍脈を使う事もできるため、

空を飛ぶ事も出来る....飛ぶと言っても、

羽ばたいて飛ぶ訳ではなく、

龍脈を回転させ、重力を無視する等だ。

喧嘩を売ったら最後、龍脈で殴られたり、

最悪、龍脈を流されまくって爆発する....

外見的特徴としては個体によって様々で、

翼があったり、角や尾が生えていたり...

どちらも無いにせよ、瞳孔が猫の様に細い、

耳が尖っている...等、本当の本当に十人十色。

高嶺の花なので基本ヒトやら獣人やらが、

無闇矢鱈に求婚しても成功難易度は、

一筋の流星を箸で掴むくらいには難しい。

....さてこの辺にしようか。


 竜人でしょう?と、

半ば断定的に言われたが、

彼女、シュネーの返す言葉と言えば...

「いや?違うよ...私は紛れも無いニンゲンだよ」

シュネーの顔をまじまじと見つめると...

コクっと首を傾げる。

「......ほらどう見てもニンゲンだろ?」

少女は頭を抱えだした....。

「げっ....大丈夫か?」

あんたやで原因。

「私が竜人だとして....どうしたかったんだい?」

少女は顔を上げると....

『お花を元気にして欲しかったの...凄い綺麗で美しい花なのです!でも...』

「お花....」

実に可愛らしい願いだ。

龍脈を流し込んで破壊された細胞を、

一つ一つ組み直していけば可能ではあろう...。

だがこのシュネー魔法総量ですら0に近く、

龍脈なんて知識にあるだけだ。

小さな彼女の願いを叶えてやりたいものだが

解決法が米粒程にも思いつかない。

「じゃあ見るだけ見せてくれないかい?できる事、あるかもしれないからね」

『はいっ.....!』

そうしてシュネーと少女は、

メインストリートへと歩み出した。


EXT


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