独占された国

 あぁ....舗装路なんて久々だ!

舗装路最高!舗装路最高!.....

かつてないほど舗装路に喜ぶ、銀の髪の女。

パステルピンクのその瞳に、

猫のように細い瞳孔を持つ......。

彼女の名はシュネー....旅人だ。

遠くに浮かぶ城壁が、

ちらり山から覗かせる....。

「おうし!」

気合を入れておんなじペースで歩み続けた。


『いらっしゃい....旅人さんだね?名前を.....』

「はい.....これで」

堂々と偽名書いて....無事に入国。

聞いた話によると、

この国は古代異装が

たらふく採れる土地柄らしく.....

いや、たらふく採れる土地柄てなんだよ....

とか思いつつ.....まぁそういう国だそうだ。

......でだ、

この国...例にもよって、近づきたくもない

GUILDギルドの息がかかっている。

調べてみたところ、かかっているのは、

この国で幅を利かせるとある企業だが....

ところで、宿が見つからない....

さてさて、どうしたものか.......。

と言ってもね?

まだまだ夜まで時間があるわけです。

今日は観光してから再トライを仕掛けよう

で、観光に走る前に....

まずこの国の地理情報を追加で一つまみ。

この国には三つの

大まかなエリア分けがなされている様で、

私が入国した門があり、

明るい雰囲気の観光エリア....

そして切り崩されつつある低い山と、

そこら一帯を埋め尽くす団地群のある、

ダーク味を感じる労働エリア....。

こういう布陣にはちょっと響くモノを、

感じて来た後なので....ちょ~っと心配、

......だが、引きずり続けるのも愚の骨頂...

今回は普段の自分らしく、

意地でもアタックしようと思う。

そして最後の一つのエリアは、

単純な発掘エリアだ。

もしかしたら何か拾えるかもしれない。

今回ここに来た理由は幾つか....

まず、ものを積める荷台のようなものを、

適当に購入しようというもの....

いくら収納術を鍛えたところで、

モノはモノ、限界はきてしまう....

そうなる前に何とかせねばならぬ。

気分は爆買いしに来た異国の民.....

思い切って買ってやろうという意志だ。

あとカメラを探す....。

今まで絵を描いて、

記録に残そうと頑張っていたが....

画材の寿命も尽きてしまったので、

買い替えようと思う....そこでだ....。

でもどうせなら違った事をやりたい...と

老後のシュミ探しみたいな感覚が、

頭をよぎってしまった訳だ。

じゃあ何がいいか?カメラだ。

買った元が取れる分までは、

是が非でも遊び倒してやろう.....

こういう考えに限って、

ドはまりしちゃうのだろうか....?


 道は進んで観光エリア....

美味しそうなパン屋もあるが、

今回目指すのは古代異装掘り出し物屋。

「あの、カメラあります?」

『カメラ.......ねぇ.....わしは売ってるものが何だか調べてないから分かんないだがね....』

こんな店で大丈夫なのだろうか?

答えはYESなのである。

古代異装は、手に入れて直ぐ、

触れるだけで脳に直接使い方が.....

というのは存在しないのである。

良く分からない美術商が、

良く分からない埋まっていた美術品を、

良く分からないけど売るように.....。

金になればなんとでも......。

そういうもんなのだ。

まぁ見る限り....ここはただのガラクタ屋。

買うモノも無い....と、

『ま、待ってくれ!すまない!何か買ってくれ!生活が懸かっとるんじゃ!!』

「?」

『わしらが悪いんじゃ...だけども!企業から課せられたノルマを達成しないと....その内どんな仕打ちをされるかも!!』

「.....スマナイ....その分の金は.....持ち合わせてないんだ......ここでは買えない.....本当にスマナイ......」

『うぐ.....そうじゃの......煙たいかもしれんの........』

シュネーは宣言通り何も買わずに外に、

今回入った店は数十軒ある店の一つ。

まだまだあるが....一つ人気店がある......

ヒトの出入りが激しい店が.....。

覗いてみれば、値札の値が、

さっきの店の何倍も何倍も安かった......

そう、この店は例の企業の直轄店。

他の店にノルマを強いているクセして、

こちらは他店がそりゃ売れなくなるような...

恐ろしいほどの安値で売っていたのだった。

そこにはカメラもあった....

だが、この店に金を入れれば.....

ナイフを突き刺した様な...そんな罪悪感が、

自分自身に襲い掛かるのは、

火を見るよりも明らかだった、明白だった。

こうもトラウマになっていては、

旅人としてどうかとは思うが.....

ここは立ち去る事だけを考えた.......。


 EXT

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