亜ぐ刻旅日:叙

のつなよ.exe

再開発の国

 一人の旅人が歩いていた。

銀の髪を後ろで纏め、

目は透き通ったパステルピンク

猫の様に細い瞳孔、

凛とした顔付きの女。

彼女は割と平坦な道をゆっくり進んで行く。

一体どれだけの密度に

なっているのか分からないその

リュックサックを背負って

ゆっくりと進んで行く。

今回行く国は事あれば再開発事業を

切り出す不思議な国だと言う。


城門が見えた。


『こんにちは、おいでくださりありがとうございます。旅人さんですね?』

彼女は頷くと、

『ではサインを...。あと、多少の法をまとめた本です、手続きが終わるまでこれを....。』

おおよそ何処の国でも渡される、

その暇つぶし用の本を読みながら待った。

『手続き完了致しました。こちらからどうぞ。良い観光を...! 』

パタン!と本を閉じ返却すると、

遂に入国した。

指定された宿に向かう。

指定された場合のほとんどは、

宿が無料か、何かサービスがあるかだが、

今回はシンプルに無料な宿だ。

シャワーに身体を温め、

観光プランを立てると今日は寝た。

「おやすみ....」


 日が昇る。

散らかった布団類を

軽く畳んで宿を出た。

今気付いた事だが、城壁が奥の方では

色が変わっている。

「何かありそう....?」

日も立たずプランを変更。

城壁の継ぎ目まで行った後に

寄り道しながら帰る方向性となった。

店が建ち並ぶが、

楽しみとして今は我慢した。

そうして継ぎ目に辿り着く。

壁には何人かのヒトがぶら下がっていた。

別に、闇を感じる様なものでは無い。

工事中のようだ。

昼休みのタイミングで

降りてきた処を捕まえた。

「何してるんですかー?」

『ん...? 旅人さんかい? ようこそ...今やっている事を知りたいのかい? 城壁を新しくしているんだ』

「ほう、劣化で...?」

『劣化と言えばそうなんだが...』

掘り下げてみる。

「だが....?」

『あんま大きな声で言えないが、この国は戦いに弱くてね....。コロコロ上の国が変わるからその趣味に合わせて、その度その度変えてるんだよ』

「はえぇ....」

『まぁそういう感じだよ、そろそろ飯食ってもいいかな?』

「あ、すみません。最後に何回変わったか知ってます?」

『何回だったかな....。この時間くらいに食い終わるからもう一回来てくれ。聞いてみるよ』

「ありがとうございます」

それまでにご飯を屋台で買う。

切れ込みを入れた円筒状のパンに

スライスした野菜とドレッシング、

ローストした肉を挟んだサンドイッチ。

美味い。

『おーいまだいるか?』

「ここにー!」

『今まで壁を変えた数だね? 』

「そうです」

『塗り替え40回、建て替え16回、復元からのデザイン変10回....合計64回この壁は変わっている....』

「言いづらいけど、負けすぎですねぇ」

冗談とわかるように

身振りをしながら感想を垂らした。

そこに風で飛んできた号外を見て、

『あと....。今から壁の記録更新たてかえだ。』

「...頑張ってくださいね」



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