対話の国

 話し合い。

私は苦手だ...

脊椎で話してくる奴はもっと苦手だ

一方的にのし負けてしまうよ...

暴力より平和的で、

それでいてヒトの魂を抉りとる。

あー怖い


「対話の国ねぇ...」

その国は軍を持たず、

ただ対話だけで国防、そして地位的にも

上位に君臨し続けていると言う。

平和な国に見えるが...

何かカラクリがありそうで...

そんな事を思う、銀の髪を後ろに纏めた、

パステルピンクの瞳に

猫のように細い瞳孔を持つ女性。

彼女の名はシュネー。

旅人だ。

いよいよ城門が現れる。


『ようこそ!我が国へ!旅人さんでいいですね?』

あぁ、と頷く。

『ではこちらへ...』

いつも通り待合室で読めるものを読む。

今回は観光、補給ついでに

この国の秘密を暴いてやろうってのがある。

というのも、この国に来る前に、

立ち寄った隣国から依頼を受けた。

{弱みの秘密を何か掴んで欲しい}と

前金貰っちゃったしやるしか無い。

お金はやはりヒトを動かす....。

私ったら情けねぇ...!

『どうぞ〜良い観光を!』


 今回は指定の宿となった。

24時間、紅茶とコーヒーと果実飲料が無料、

ついでにお菓子も食べ放題と来た。

たらふく頂こう

シャワーを浴びて、明日向かう道筋を立てる。

結局内側的にはスパイ行為になる。

そんでこの国にはスパイ禁止法がある。

これは....

「めんどくせぇ〜」

受けなきゃ良かった....。


 日が昇る。

サングラスをかけて宿を出る。

そういえばこの国は薬学が強いらしい。

簡単なキズぐすりでも買っておこう

行政機関の隣にある王立薬局に行ってみる。

なるほど沢山の薬がある。

かぜ薬から痒み止め、

自白剤や惚れ薬もある。

値は張ったが普通に便利な奴から

面白そうなやつまで買ってきた。

そしてシュネーは真隣の行政機関を伺う。

と言っても入れる訳ではない。

じゃあどうするか...

どうしよう.....もーやだ。

近場の公園から眺めていると、

「おや?」

行政機関と薬局が何か通路の様に

繋がっているのが分かる。

そのまま観察していると、

他の国から外交官達がやってくる。

因みにシュネーは今、

公園でだらける世捨て旅人を演じているが、

バレないようにである。

かれこれかなり長い間待っている。

あんぱんと牛乳を飲みながら、

レンタルのパラソルの元で寝そべっていると

外交官達が再び出て来た。

『◎⊿□×☆〜!』『♡♤〇⊿☆ッ!!』

何を言っているのか分からない

そういう言語か...?

いや、入る時はまともの喋っていた。

『良い交渉d@8*_~b〜』『そうだっt(hgo!』

呂律が回っていない....。

「だいたい分かった....」

対話に強い理由....

それは何とも簡単な理由だった。

何も口論レスバトルの強い人間がいる訳では無い、

いや居るのかも知れないが...。

勝てないのなら相手を弱くする...

手っ取り早く、その上効率的だ。

きっと後遺症もゼロなのだろう、

検査も何も引っかからない。

この国は薬学の国だ。

頭が回らなくする薬なんて容易だろう。

自白剤だって存在していた。

だが、言い換えれば...

得意分野を活かして戦っているとも取れるか。


 シュネーは次の日に軽く補給を、

更にその次の日に国を出た。

ある程度進んでから引き返し、

目に入らないように、

依頼された国を訪れる。

『やぁ、旅人くん』

「あぁどうも。ずっとここに?」

『まぁそうだね...さて本題だ』

「はいはい」

『何故に、かの国は対話が強い?』

 それは...

「恐らく...相当口の回りが良い人が居るのでしょうね...。お宅の国も頑張った方がいい」

『そうか....分かった、協力感謝する。前金はそのままでいい』

「そのつもりで」


 旅人たる者、

国々の生活に介入してはならない....

そういうものだ...。

自身で解決せねばなんの意味もない.....

シュネーは立ち去った。


「あぁ、そうだ...これ、自白剤です」

『自白剤...?』

「私みたいな汚い旅人からじゃ無くて...本人から聞いた方がいいかもですよ?」






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る