電気の国

 数千里歩けば国に着くと言う頃。

道端にて、巨大な蟲型モンスターに

襲われる商人を認めた。


「よ」

マッチを投げつけ撃退した。

「大丈夫です?」

商人を助けたこの旅人、

銀の髪を後ろで纏め、

目は綺麗なパステルピンク。

羽織は純白を放っている。

彼女の名はシュネー


『ありがとうございます...。お礼と言ってはなんですが....』

「いいのいいの。血はあまり見たくないだけだから!」

『助けて貰ってそのままっていうのも気がすみませんよ...コレを....。』

渡されたのはなんとも微妙なサイズの箱、

それはもう例えようが無いくらい微妙。

ケーブルが伸びている。

恐らく古代異装だ。

「ラジカセですか....。でもこれじゃあ動かない。」

『よく気づきましたね、でも気にしないでくださいな、こちらの装置と使えば動かせるんです』

もうひとつ取り出したのは、また四角い箱。

それから伸びた紐を勢いよく引っ張ると....。

 ぐおん、ぐるぐるるるるる....!

『古代異装の発電機。そのレプリカです。分解して、それを元に見て作ったのです。古代異装の研究は楽しいですよ』

「へぇ....。ところで模造品作れるなら、何か武器とかも作って置けば余裕で迎撃できたのでは無いです?」

『過去に、レイルガンと言う古代の武器の再現をしましたが....。どうやら神は私に他を傷つけて欲しくないらしい、上手く行きませんでしたね...バラバラにしてその素材で改めて発電機にして国に売りつけましたよ。それに』

「それに?」

『現にこうして私を知って貰えた!旅人さんは遠くへ行きますし、それを見て気になる人も現れるはず。』

「策士だねぇ、こりゃ一本取られた!広まるといいですな」

『広めるのは貴女あなたですヨ』

二人で笑いあった。

『まぁ今頃、あの国では電気革命が起きている事だろう。魔法便りの時代は終わりですよ。』


そうして、ラジカセを持って

シュネーは歩みを進めた。


 国の門が見える。

『こんにちは!旅人さんですね?』

頷く。

『こちらにサインを....』

サインを書く。

『では待合室でお待ちください!』

いつも通りに、法律の本と

観光ガイドを読んで待つ。

「ラジカセとか、いつぶりに見たかな」

早速取り出して見つめる。

『旅人さんどうぞ!良い観光を!』

「はーい、ありがとう」

カバンに仕舞って入国する。

まずは宿探しから。

この国は指定も

サービスも無かったが....

本来これが普通だ。

指定とサービスがある国は

旅人を影で監視する為に、

この形を取っている事が多い。

信用ゼロの人間が

急に家に客として訪れたら

できる限り目を付けて置きたい。

そんなモンだ....。

異議は認める。


 この国に中枢には科学者が遺した

発電機があり、

国は火ではなく、電気で照らされている。

このようなものがある国はかなりレアだ。

しかし他国には伝えられていなかった。

何故か?


正直なところ分からない。

優位性重視で情報を流さないか?

古文書に記された環境の破壊か?

ただの面倒臭がりなのか?

はたまた他国には再現不能の超技術か?


 さて、宿を見つけたシュネーは

早速シャワーを浴びる。

この湯も電気で温めたものだろう。

備え付けのバスローブに着替え、

髪をバスタオルでつつみ揚げた姿で、

貰った観光ガイドを眺める。


「発電機見学くらいか?」

取り敢えず発電所と

美味しいもの食べて補給。

プランをそれに決めて寝た。

起き上がった。

頭のタオルを戻して、

布団にぼすっとダイブして寝た。


 日が昇る。

発電所に向かい、見学を始める。

入場料は高く、

今日のお昼は携帯食料に決まった。

ごうんごうんごうんごうん....。

円筒状の何かが

ごうんごうん言っている。

どう見てもこれが発電機だろう。

近くの職員に少し質問する事にした。

「これって、どう動いているのですか?」

『いかにもマシンって感じだろう?内緒だけどね、電気を発生させているのは別なんだ。』

「へぇではこれは?」

『これはなんか回る奴だよ。電気を送ると、こう音を立てて回るんだ。』

「では発生させているのは?」

『しょうもないけど、ただのとても大きな電気系の魔鉱石だよ。ちなみにだけどこの装置は開発者が行方不明でね...。でも一緒に付いてきたノートには発電機って書いてあるんだ。金属延ばしたり広げたりしてを組み合わせただけでそんな魔法現象ができるなんて意味が分からないね。魔力を使わずに電気を作れる!なんて...、仮にこれが発電機だとしたところでその魔鉱石の方が便利だもんな』

「ではその石は?」

『こっちだけど別料金だよ』

「うゅ....。やめときます』

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