アイデンティティ
ヒトは普遍を求め、
ヒトは独創を求める。
一人の女性が砂浜を歩いてゐた。
所々ボサついた銀の髪を後ろで纏め、
瞳の色は綺麗なパステルピンク、
そして猫の様に細い瞳孔.....。
彼女の名はシュネー、旅人だ。
砂浜はゴミの集まりだ。
死骸や屑が波に揉まれて丸くなり、
白く艶やかに散らばる。
どんなカスでも磨けば光る...のだろうか。
光るだろう...。
だが気づかねば磨けども磨けども
そこに進歩なんて無い。
結果が全ての世界ならば、
磨く工程は評価されず...
しかし無駄だと思われれば、
一瞬のうちに否定され、
それはただの足枷となる。
もしその行為が進化への近道だったとしても
他人の価値に合わねばやはりゴミだ....。
シュネーは積み重ねの上で生きている。
確かに少しは恵まれた部分もあるだろうが...
自身と自身の好みが合わない中途半端に...
少しだけシュネーはやるせなさを感じた。
不意にふらーっと砂浜から離れた...
今までこんなこと無かったのに....。
長い時間を過ごし疲れて来たのかもしれない。
しかしやる事も思いつかないので、
適当にお昼ご飯を食べる事にした。
それは食事中での話だ。
『あんたはなんでそんなんなんだ!?』
『でも』
『でもじゃない!!そんなにぼーっと...絵ばっか描きやがって....少しは店の手伝いをしろ!!』
『はい....』
怒鳴られているのを見るのはやっぱ嫌だ...。
聞くのも勿論嫌だ。
誰が嬉しくて聞くんだそんな事....。
まぁもしかしたら好きな人もいるかもしれん。
てか、客にはお構い無しか?
ふぅ...と少しため息...。
と....
ぱりいんっ!
『このやろう....あーもう...いい...他所行きなさい』
『やれっていったのは...』
『あぁっ!?』
『なんでもない』
画材とキャンパスを格納魔法でしまい込むと
逃げるように去っていった。
シュネーは見届けると、
残りのテーブルロールを口に放り入れ、
会計を済ませた上で店を出た。
さて....店から少し進んでからのことだ。
橋の上で先程の少年がキャンパスを置いて
何か絵を描いているではないか。
ほんのちょっぴりの興味に、
少し話しかけて見る事にした....
「ここで絵を描いているのかい?」
『だめかy...ですか』
「それは私には分からない、旅人だからネ」
『旅人....暇人?僕は何もないよ?』
「惹かれたから話しかけたんだ、何か問題が?」
『.......。』
「何も無いって言ったが...具体的に?」
『そりゃあ.....えーと...全部さ.....のろいし....友達に直ぐバカにされる。えと....こんな感じに喋ろうとしても頭回んないし』
「へぇ...」
『.......。』
「.....ごめん、私も思いつかない」
『変なの』
「結構結構...で、絵を描いているのは?」
『好きだからだよ...描きたいだけ.....描こうと思って描き始めて9年くらい? すっかり楽しいんだ』
「9年かぁ....いいね、続ける人は好きだよ。何事でもね」
『.......。』
「まぁいいんだよ、ヒトってのは他人と比べちゃう生き物だからさ....そんな周りの事は気にしない〜...とか我が道こそ進むべき道〜...だとか....そういうのが頭に漂ってるのは...なんかおかしいんだよ....。私は好きだけどねそういうの....ちょっぴり憧れるから」
『......。』
「
『その...旅人さん自身が思ってるのならそうなんじゃないですか....?』
「ふふ...じゃあそういうことだね....。私はここらで....楽しく生きろよ?じゃあ」
『.......。』
近づいた時に見えた少年の絵は、
とても美しいという物でも無かった...
少なくとも私には綺麗には見えなかった。
絵は心を表すと言うが.......
ちょっと信じて見たくないと思った。
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