果報は寝て待ち、そのまま寝込む

 たっ....たっ....たっ....

ゆらーりゆらりと

湖畔の近くの森を、進む者が居た。

森だけでなんも無い....。

ただただでかい湖が横たわるだけ。

ギンギラギンに艷めく髪を、

ボサボサに適当にそれはもう適当に纏め、

パステルピンクの瞳で前を見据える。

その瞳孔は猫のように細く、

木陰と陽の下で、

ちょっとだけ開いたり閉じたり....。

彼女の名はシュネー....旅人だ。


 こう、湖畔というものは通常、

清々しい気持ちになる...

涼し気なareaの筈なのだが...。

どうやらこの地域だと湿気ベトベトな

ジャングルチックなものらしい。

虫が多そう。

というのもここ一帯が絶妙に暑い。

この湖畔も加熱されてぬるま湯なのだ。

寒い冬にこの温かさなら金払えるレベルだ。

願っても仕方ない事もある...。

と、なんとなーく湖畔の方を見ると...

「あれは.......いて」

木に激突、不注意炸裂...

勿論、誰のせいでもない。

衝突箇所をさすりながら...再び湖畔を見る。

人影がある

シュネーは寄ってみる事にした...


「すみません....お話良いでしょうか?」

『.......。』

回り込んで顔を覗くと...。

「寝てるぞ....」

ていうかさっきまでの暑さはどこへやら...

なんというか、涼しい。

このままでは先程の説明が

ウソっぱちになってしまいそうだ...。

というか快適だ....少しここに居よう。

そうして少し経ち....睡魔に襲われる....

『......おや....』

「危ないっ!」

『な、何がでしょう...』

「快適だったもんで......あ、そうだ....あなたは一体何をしてるんです?」

『見ての通り、寝ていたんだ...それ以上でも以下でも...特にでかい理由なんてのは無い...』

「へぇ...じゃあ少しお話ししましょうか」

『いいですよ?でも記事に起こすとかしても特になんの得もありませんし、多分時間を無駄にしてしまう恐るべきお話しですが...』

「構いません、旅人は暇を潰すために忙しい人種ですからね」

『さいですか...では、』

コホンと少し咳払い。

『僕はね、待っていたんだ...でも何を待っていたのかは分からないんだ...分からないと言うより忘れてしまった訳だが...。なんというかモヤモヤして気持ちが悪い...眠れば治ると、寝ていた訳だが...』

「一体何を待ってたんでしょう」


『そうだね...まるで思い出せないや。若しかしたら、君のような美人な旅人さんに出会う為にこんなにダラダラ待っていたのかもしれないね...で、以上だよ...。あと、君...も少しだけ歩けば村がある筈だよ...今歩き出せば日が沈む1,2時間前には着くと思うよ。今更だが旅人さん....クマが凄いね、旅館は小さいのが一個だけだけどもベッドは最高レベルにフカフカだよ...ゆっくり休んだ方が良い』

思わず目の下をぷにぷに押すが...

クマなんて分からない。

あ、でも少し固いかも....。

「では...私はもう行きますが...貴方は大丈夫です?」

『大丈夫だよ、僕はこの辺に住んでるからね、すぐ家に帰れるさ』

「へぇ...じゃあ...この辺でさようならだね」

『良い旅を』

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